第23杯 彼の部屋
授業の一環の経済学のカフェ大成功。
【優】の評価も貰えて、皆喜んでたな。あたしもこれで成績の心配しなくて済むし。何より大家さんがあたしの作ったコーヒーおいしいって、褒めてくれたのを藤井くん喜んでくれて嬉しかったな。彼の姿を思い出すと顔がニヤける。
ダメだダメだ顏戻さないと、もうすぐハイツだし。それにしても、片付けでクタクタ。これでゆっくりお風呂入れたら最高だったのに、それが残念。そう言えば、お風呂いつ直るのか、早く直るといいけど。
ハイツの入口を入ると、マス姉がちょうどCafeに入る所に出くわした。
「お帰り、董子ちゃん。今日はお疲れさん」
「ただいま。フリマのカフェ大成功したよ」
「聞いた聞いた、ふたりから」
「ああ、藤井くんたちから聞いてたんだ」
「まぁね。そうだ、明日業者が来て修理で、夜は風呂使えるって」
「直るんだ、よかった~」
「ホント、不便だった」
そう言って、マス姉は自分の肩に手を置いて、コキコキと首を鳴らして、
「明日からは遠慮も早く上がらなくていいから、ゆっくりできるぅ~」
と、今度は両手を組んで、あたしの隣で背伸びした。
「よく言うよ~マス姉は超長風呂だって、この前洋輔が不満聞いたけど」
「だったかな。それより、最後は誰に頼むかな」
「……最後は藤井くんがいいな」
あたしがしまった……と思った時には手遅れで、ついポロリと口から本音が出てしまった。その言葉がしっかり耳に入ったらしく、予想通り、マス姉は追究してきた。
「んっ――――――何で最後だと、慎一がいいわけ?」
「そ
そっそのっ洋輔ばっかりに借りるのは――――――悪いし……」
動揺する態度でやっとマス姉は、あたしの気持ちに気が付いた模様。彼女は自分の口に手をあてて驚く仕草をみせた。
「もしかして……勘違いしてたの――――――そっか、董子ちゃん……慎一だったわけか」
どうやらマス姉にも、やっとこさ藤井くんへのあたしの好意が、わかったらしい。
「じゃっ哲太、かわいそうだな。報われないのかぁ……」
「……ぇえ!」
「驚く事こた~ないっしょ? 珍しく哲太が気に入った振る舞いみせてたから、董子ちゃんに気があるって絶対っ!」
「絶対とか……ないと思う……よ――――――――」
哲太さんの気持ちを知ってか知らずか、マス姉はまだ粘るみたいで――――――
「いいのいいの、そこは気にするな。でっ董子ちゃんには少しもその気はない?」
本当にどうしたら、哲太さんへの誤解が解けるのかわからない。