第22杯 フリーマーケット
「じゃっ、今日は皆よろしく頼むよ。【優】目指して頑張ってくれたまえ」
あたしが講義を取っている経済学部の講師が、目の前にいるたくさんの女子大生たちに、笑顔でそう言うのだった。
その中にはあたし達のグループも、もちろんいる。今まで大家さんや哲太さんに習った事を役立てる日がとうとうやって来たのだ。
学内の食堂をお借りして、今日はフリーマーケットに来たお客様方にカフェを提供。これがうまくできればあたし達は今日【優】を貰えるんだけど。それにお店の器具や豆類の食材も自分たちで揃えるのは無理だから、それも大家さんから、借りる事になって、何もかもお世話になりっぱなし。
だから、絶対成功させたい、とあたしがそんな事を思いながら、器具類を設置していたところに、藤井くんと洋輔が現れるのだった。
「まだこれだけじゃないから、食材運び入れれる人借りれそうかな?」
そう言った藤井くん達の手には蓋の空いた段ボール箱。
ふたりはそれをテーブルの上に置いた。
「あたしや弥生は器具を扱わないとダメだから、他の人に行ってもらうね」
荷物の中身にはあたし達のCafeに必要な材料が色々詰め込まれている。みた感じでは麻袋に入ったコーヒー豆のようで、他の食材がないのがわかった。
洋輔も藤井くんと同じように荷物を置いてから、こちらを振り返り話しかける。
「じゃあ、適当に声掛けて連れて行くぞ?」
「悪いけど、そうして」
手の空いている数人を連れて、彼らふたりは学食を出て行った。
実は学食だけじゃなく、大学のキャンパスにも露店のような感じで、お店を出してるから、材料が思った以上に必要になってしまっている。
それと、キャンパスのお店の方にはあたしの友人の弥生が仕切ってくれているはず、後で一応チェックしに顏を出しに行く予定だけど、彼女だけじゃちょっぴり不安だから。
あたしが器具のチェックをしている間に、数人の子が食材をそれぞれの適材適所的な置き場所へ、移動してくれている。
そして、その中のひとりがこちらに来るのだった。
「トウコ準備は終わりそう?」
「こっちはオッケイだよ。そっちは?」
「こっちも、残り食材が来れば準備終わると思う」
「じゃあ、一度弥生がいる方のお店、見て来るね」
「わかったわ。準備終わったら、電話するね」
「うん」
あたしがそう言うと、また作業に戻っていく彼女。
あたしも出来る範囲の事は全部終わらさせる、弥生のとこへ様子をみに行くため。
すると、あたしの携帯が鳴り始めた。