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第21杯 ②

 電話を切った哲太さんが、あたしのいるこちらに向き直る。


「洋輔、今シャワー浴びたとこらしいから。少ししたら降りるってさ」

「色々ありがとう、哲太さん。このコーヒー、ハチミツが入ってて、すんごくおいしい」


 あたしはそう言ってから、湯気のたつステンレス素材のコップを哲太さんに見せた。


「ああ、それね。そのコーヒー砂糖じゃなくハチミツだから、風味もいいだろ」

「うん、すごく。ブラックなのに全然嫌な苦さもなく、ほどよく甘くて、ブラックが苦手なあたしでも飲みやすい」

「気にってもらえて、それはなによりだよ」


 哲太さんがそう言って満足げな表情で笑うと、あたしの飲み干したステンレスコップを、カウンターから下げた。そこへ、風呂上がりの洋輔が、ヘアーのセットもなしに、なんともリラックスした状態で、あたし達の目の前に現れる。


「お前、今日はツイてなくね?」

「うるさいよ、たまたまだよ。そう思うなら早く風邪ひく前に、お風呂貸して」

「ああ、話は聞いてるから。今からシャワー使うだろ?」

「うん、一旦部屋にお風呂セット取りに行くから」

「俺の使えばいいじゃん」

「男物なんていいよ。自分のがいいの。だから、洋輔は階段踊り場で待ってて」

 

 そう言ったあたしは哲太さんに挨拶をしてから、自分の部屋へと向かった。


 階段の踊り場で待機していた洋輔に、そこにある鍵を開けてもらって、彼の部屋に入れてもらったあたし。

 部屋はあたしのと間取りが一緒で、なにがどこにあるかが自然とわかった。

 唯一違うのは、男の子の部屋って感じで、自分とは違う独特の匂いとかがする。それに部屋には余計な家具がなく、結構さっぱりしていた。


「意外と綺麗にしてんじゃん」

「まぁな……」


 洋輔が部屋に入るといつもの調子がなく、急に口数が減るのだった。


「なんか、急にあんた無愛想だね」

「そうかぁ~そうでもないだろ?」

「気のせいなら、いいけど」

「それより、さっさと風呂入れよ」

「はいはい。入りますよ、言われなくても」


 あたしはそう言って、迷わずお風呂場の洗面所へ移動する。

 洗面所はドアがなく、暖簾がないとそこにいる人は丸見え状態。でも、そこはちゃんと暖簾があるので、暖簾をカーテンのように引っ張って入口を閉じた。それから、あたしは暖簾の隙間から顔を出して部屋にいる洋輔へ大声で叫んだ。


「一応言っとくけど、洋輔っお風呂覗かないでよ」

「覗くかっそんな悪趣味じゃね~よ」

「悪かったわね、悪趣味のたぐいで」


 最後にそれだけ言うとあたしは浴場に入った。

 そこはムッと湿気がこもっている。おそらくさっきまで洋輔が使っていたからだ、と思うと、あたしは目の前にある蛇口をひねる。シャワーがあたしへと降り注いだ。

 それを頭から浴びると、雨で汚れた身体がゆっくりと綺麗になっていくのを感じるあたし。

 暖かいお湯が冷たい肌にあたるとすごく心地よかった。

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