第2杯 ③
前回の主人公の間違っていた苗字訂正しました。
「男前な方が藤井慎一くん――」
こっちを向いてから私服の男性が、あたしに頭だけで軽く会釈してくれた。
「俺は203号室の住人。こちらこそこれからよろしく」
次は制服の男の子を指さすと、さっきより雑な感じで岡島さんがあたしに紹介してくれる。
「このいかにもあほ面なのが、本田洋輔」
「って、なんで俺だけそんな紹介なんだよっ」
「っん? 特に意味はない」
「んっだよ、それ」
納得できない感じの顔が不満そうな様子。かと思えば、今度は皆に向けて自信たっぷりな口振りで言う。
「ってか、俺の方が男前じゃなくねっ」
「あんた……それ自分で言ってたら世話ないね」
本田くんは自分の事を一蹴した岡島さんを恨めしそうな顔でみている。
そこへ頷きながら藤井くんがとどめを刺す一言。
「確かに――」
3人の掛け合いにあたしはクスクスと小さく笑う。そんな本田くんは納得できないのか、まだまだ食い下がる模様。
「ってかふたり共、目が腐ってんじゃね?」
岡島さんは顔を横に振りながら、否定。
「腐ってない、腐ってない」
「ちょっ――即答って、マス姉ひどくね」
「――はいはい、それより自己紹介なんだから言う事あるだろ?」
「ああ、そっか。改めて202号室の本田洋輔。高3、よろしく」
「よろしくね、あたしの1つ下なんだ」
あたしの話から藤井くんが歳を計算したようで、ポツリと口を開く。
「じゃあ、宮野さんは大学1年って事か。俺の1つ下か」
「そそ。だから3人共歳近いから話合うんじゃない?」
「――――かな」
ポツリとまた答える藤井くん。
「で、結局何の話してたんだっけ?」
「誰が洋輔に勉強を教えるかって、話ですね」
「ああ、そそ。でどうなの、董子ちゃん?」
「――――――うーん」
あたしが答えあぐねて漏れた声に、藤井くんは見兼ねてか、もうひと押しとばかりに一言。
「それなら、俺もバイトがなければ、勉強みるし、ね?」
「――――あたしがわかる範囲でなら……」
「よかったじゃん、洋輔」
「まぁな。これも日頃の行いがいいからだろ」
冷たい視線の岡島さんがシラっと本田くんへ釘をさす。
「日頃の行いがいいから――じゃなく、董子ちゃん達が優しいからだろ」
岡島さんの言葉にタジタジな様子の本田くんは自分の顔を人差し指でかいている。
「まぁ、そうとも言うな」
「じゃあ、俺はそろそろ時間なんで、バイトに行きますね」
「頑張っていって来い、勤労学生君」
「じゃあな、慎一」
「いってらっしゃい、藤井くん」
みんなが見ている中、藤井くんはCafeを出て行った。