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第17杯 それぞれの思惑

 片づけも終わり、カウンターから出た所、マス姉に声を掛けられた。マス姉の視線はあたしではなくもうひとりの女性を見つめている。


「彼女、誰?」


 マス姉が指差したのは、あたしの後ろで哲太さんと楽しそうに会話する藤江弥生。


「あたしの友人で、同じ学部の子です、どうかしました?」

「いや、別に。やけに人懐っこい子だし、まぁ誰なんだろうって思っただけだよ」

「ああ、それだけが彼女の取り柄ですからね」


 あたしはそう言って軽く笑うのだった。

 マス姉はふたりを妙に気にしている感じが、あたしにもわかった。しつこく、ふたりの話題からはなれない。


「珍しっ――――――哲太があんなに女と会話が弾んでるのは」

「そうですよねぇ、珍しいですね」

「相当話上手だね、彼女」

「――――かな? まぁ調子を誰にでも合わせられる八方美人なだけ――――とも言えますけどね」

「ふ~ん、でも、まぁ……ああいうタイプの子が哲太には合うのかもしれないな」


 その言葉にあたしは、ヤバイなんか勘違いしてるマス姉……って言うか、見当違いもいいところだよっと心の中で突っ込むのだった。


「そうかな……哲太さんにはもっとこう――――お調子者みたいな子じゃない方が、いい気がするなぁ」

「何っ董子ちゃん今日は毒吐くねぇ」

「いや、そんな事は」

「哲太にはあの子じゃ、ダメなのか?」

「ダメっていうか、ほらっこういう事は本人たちの気持ちが大事かなっと――――――」

「いい感じに見えるけどな」


 そう言ったマス姉が哲太さんと弥生へとまた視線を向ける。

 あたしもそんな彼女につられてふたりを見てみた。まぁ確かに見えなくもないけど……と、内心思ったが、それでも、哲太さんの為にもあたしがふたりの事を否定しないと話がもつれそうな予感がした。


「そうかな……」

 

 あたしが軽く首を傾げると、ジッとあたしの顔を見たマス姉が答える。


「なんか、やけに食い下がるな――――――董子ちゃん。まさか――――」

「まさかって、なんですか?」

「――――――いや……なんでもない」


 そう言ったマス姉の顔は躊躇ちゅうちょすると、何かを考えている様子。

 

「いや、いいのいいの。なんでもないから、気にするな」


 その言い方がなんだかなぁ……とてつもなく気になるんですけど――――――っと、あたしは思いながらも苦笑いでマス姉に応えるのだった。


「なんでもないなら、いいんだけど――――――な……」


 マス姉にそれしか言える言葉が見つからなかったあたしは、この時、あまり深く考えないようにした――――――彼女の言った言葉の意味を。


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