第2杯 ②
人影はふたつ共男の人のよう、入口から少し遠めのあたしにも聞えた声でわかった。
会話をしながらCafeに入って来る。何やら少しもめている様子。
「じゃあ、こっちの問題もちょっと見てくれよ」
「んっこれはココが間違ってるんだよ。これはこの数式じゃない。別の――――」
私服を着た男性の説明が中断される。
声をかけたのは入口側に座っていた岡島さん。
「あんたら、うるさいよっ!」
「よっマス姉じゃん。ばんわっ」
軽い口調で制服を身にまとう男の子は岡島さんに気づいたのか挨拶した。
「ばんわじゃない、何をもめてんの?」
岡島さんの問い掛けに答えたのが、もう一人いた男の人。落ち着いた口調と雰囲気で、説明してくれる。
「いや、洋輔が数学の問題なんで間違ってるのか尋ねてくるから、説明したのに……どうも――理解してくれないんですよね」
苦笑して首を傾げている男の人。
「も~う少し慎一が分かり易く、説明しろよ」
「あのな、お前がもっと基礎をしっかり身につけてから訊いてくれよな」
「仕方ないじゃん。自慢じゃねえけどさ、最近なんだぜ――まともに勉強し始めたの」
「――それは確かに自慢じゃないな」
呆れてなのか、岡島さんがため息をつきながら、ふたりの会話に割り込んだ。
「まぁ――ほらっなんだ……勉強し始めたのはいい事な訳だから、もう少し基礎をしっかりとすればいいんじゃないかな」
「そんなに基礎基礎って、言うからには慎一教えてくれんだろうな?」
「おっ俺が?」
「そうだよね、あんたが教えてあげりゃいいんじゃない?」
「俺ですか?」
「そそ、あんたさ頭いいんだから」
男の人は頭をかきながら、少し戸惑っている様。
「いや、人に教えるとなると……難しいんですよね」
「じゃあ、後は――――」
岡島さんがそう言いながら、こちらに向きなおし、なぜかあたしを見て来た。
完全に油断してたあたしと彼女の目と目が合う。
「っえ、ああたしっ?」
「そうだ、董子ちゃんが教えてあげればいいんじゃない?」
突然の流れで驚きを隠しきれないあたし。皆がこっちに注目している。その答えになんて返答してよいのかわからなくて動揺していると、誰かが手を軽く叩いた。
それは岡島さんで何か思いついたのか、あたしの答えをきかない内にまた話出した。
「そういえば、3人は初顔合わせだった?」
「だな。マス姉――誰だよ?」
「ああ、宮野董子ちゃん」
「えっと、今月302号室に引っ越したばかりですがよろしくお願いします」
あたしが言い終わったのを見計らってか、今度は視線をふたりに移す岡島さん。私服の男の人を見ながら、あたしに紹介してくれる。