第13杯 意外な結末
「洋輔ご機嫌ななめって感じで、出て行ったけど?」
何も知らないマス姉は不可解な行動の洋輔の事を、不思議そうな顔であたしにその理由を聞くのだった。
「うん。ちょっと……やりやちゃって」
「なに? またケンカ?」
「――――――まぁ」
またって言われると苦笑いでしかあたしは答えられなかった。そんなあたしへ少し呆れ気味な様子のマス姉がケンカのタネを追究し始めた。
「で、何が原因?」
色々考える為にあたしは間をあけてからマス姉に応える。
「原因は……ここじゃ、話しにくいから、あっちで」
あたしはそう言うと、奥のテーブル席を指差した。
マス姉もあたしが指差した方を見る。
「わかった。じゃ、話は向こうで」
あたしたちはガラス張りの壁にそって置いてあるテーブルで話の続きを話す。
「で、何が原因?」
マス姉は同じ言葉で、すぐさまあたしへ問い詰めるのだった。
あたしにとって、できればここに居る人たちには聞こえてほしくない内容。声のトーンが無意識の内に小さくなるのだった。
「あのさ――――ふたりだけの話にしてほしいから」
「だから、何?」
「絶対誰にも言わないって、マス姉誓ってほしい」
懇願するあたしはマス姉に必死そのもの。とにかく話を進める前にお願いをする。その横をガラスを挟んだ外側の通行人が通って行く度に、あたしの必死な態度をみて、ドン引きしたような様子。
それがマス姉の視界に入ったらしく、考える事無く答えてえてくれるのだった。
「なんか……わからないけど、誓う。だから何?」
マス姉の言葉を聞いてひと安心するあたしは、ため息をつくのだった。気持ちを落ち着かせてから、話し始める。
「実は――――――キスされた」
あたしを見て瞬きを数回繰り返すマス姉。驚いたのを必死に隠そうと冷静に口を開く。
「いつ、誰に?」
「昨日。それが――――――誰かは……わからないのが、問題で……」
あたしの言葉に自分の記憶の引き出しを開けて、昨日の出来事の記憶を探し始めるマス姉。それでも思い出せなかったようで、あたしに聞き返してくるのだった。
「昨日って……そんな事――――――あったっけ?」
「ベロベロに酔ったマス姉が、帰った後に」
「そっか。で、どうして誰かわからないんだ?」
「あたし、みんながいなくなった時に……寝てしまって。起き上がったら、そこに3人が現れて」
「3人って?」
「藤井くんに、哲太さんに、洋輔……」
「なるほどね」
「一度河川からみんないなくなってて。片付けにまた戻って来たらしいんだけど」
「その時、戻って来た中にいるって事か……」
話の飲み込みが早いマス姉の言葉に、あたしは黙って弱々しくうなずいた。