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第11杯 ②

「どう? 楽しんでる?」


 瑞奈ちゃんはとても楽しそうな顔で、あたしに応えてくれる。


「うん。超楽しいよ。BBQなんて、すごく久しぶりだし」

「それは、良かったじゃない」


 瑞奈ちゃんの肩をポンポンと軽く叩いてから、あたしは彼女に笑って答えた。


「洋ちゃんにホント――――マジ感謝だね」


 洋輔への感謝の気持ちを込めてそう言った瑞奈ちゃんは、すぐそばの彼氏へ微笑みかける。

 そんな瑞奈ちゃんの思いとは裏腹に、洋輔は苦笑いでひとこと補足するのだった。


「感謝は嬉しいけど、どうしても連れて来いって、うるさ過ぎて仕方なかったぜ」

「だってさ、洋ちゃんだけ楽しむなんてずるいじゃん」

「それはいいけど。そろそろ帰んねーと怒られるんじゃなくね、親父さんたちに?」


 恨めしそうな目で、瑞奈ちゃんは洋輔をひと睨み。そこへ彼をフォローする為か、藤井くんが口を開いた。


「洋輔の言うとおり、今日はもうおひらきだよ。瑞奈ちゃん、大人しく帰った方がいい」

「はぁ~い、慎ちゃんに言われたんじゃ、仕方ない――――帰るよ」

「んじゃ、こいつ送ってくるから。また後で」

「ああ、後で」


 洋輔たちふたりは、あたしたちに手を振って、土手の方へ上がって行くのだった。


「さてと、マス姉もいないようだね」

「――――――え」


 あたしが驚きながら、ふたりがいるはずの場所をみる。すると、振り向いた先にはマス姉も哲太さんもいない。

 ビックリしているあたしに、藤井くんがご丁寧にもふたりの事を説明してくれる。


「泥酔したマス姉を哲太さんがおぶって、今さっき、土手を上がってたよ」

「そっか。あぁ……ふたりだけで……片付けでも、する?」

「いや、今日の主役にそんな事はさせれないよ」


 藤井くんの言葉が少しくすぐったくて、あたしは彼を見ないようにひとりで小さく笑ってから、彼に感謝を伝えるのだった。


「そうだね――――ありがと」


 黙って微笑む藤井くんは、急に何かを思い出したのか、口を開いた。


「あっそうだ。俺、今から片付けの車取りに行かないと。それでここを頼めるかな?」

「うん。戻って来るまで、じゃあ、ここで荷物をみてるよ」

「ありがとう。それじゃあ、車取りに行ってくるよ」


 藤井くんはそう言ってから、あたしに手を振って土手を上がって行くのだった。

 誰もいなくなった川沿いの方へ行くとあたしはそこに敷いてあるシートに寝転んで、夜桜を見上げた。

 桜の花びらがライトに照らされて、美しく輝く満開の色鮮やかな桜に見惚れたあたしは、そのままだんだん意識が薄れていくのだった。

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