第11杯 突然の・・・・・・ⅩⅩ
藤井くんがこちらを覗き見ている。BBQのお肉を独り焼いているあたしに、うかがう様な感じで話しかけてきた。
「ずいぶん、話し込んでたね?」
「うん、ちょっとした女同士の話をね」
「それ――――興味あるな」
「えっ……」
「んっ? どうかした?」
網の上で焼いていたお肉を、ひっくり返そうとしたあたしの手が止まる。
藤井くんの意外な答えにあたしは言葉がでない。その反応で何かを察したのか、藤井くんが少し困った表情をする。
「あっ、今の冗談なんだけど」
「な、なんだ。じょ、冗談ね」
あたしはそう言って、止まっていた手を、また動かしてお肉の裏面を焼く。
藤井くんはあたしの手の動きを見て、ホッとしたみたい。
「そうだよ。宮野さんの顔が凄い表情になったから、少し焦ったよ」
それまでお肉を焼くのにBBQの上にのお肉しか見ていなかったあたしは、藤井くんの苦笑する顔を見て答えた。
「藤井くんの冗談聞いたの初めてだよ」
「そう?」
「うん、そうだよ」
BBQから目を外したついでに、近くを見ると、あたしは洋輔たちの姿がない事に気が付いた。
「そう言えば、洋輔たちは?」
「ああ、川の方にいるんじゃないかな?」
「あっホントだ」
ふたりは川のほとりで座っている。そして、相変わらずイチャついているのがここからでもわかるのだった。
「相変わらず、仲いいね。あのふたりは」
「そうだね。恥ずかしくないみたいだね、皆がいる場所でイチャついてても」
「みたいだね」
苦笑すると、藤井くんがふたりから視線を外す。それからあたしの顔を見た後に、参ったなと言う様な素振りを見せるのだった。
藤井くんは鼻の頭をポリポリかいている。
あたしも藤井くんの異変を感じて、彼を意識してしまうのだった。
洋輔たちをあたしは見ていられなくなると、ふたりから藤井くんと同じように視線を逸らした。
そんなあたしに気を使ったのか、彼は洋輔たちの話題から話を変えるのだった。
「あぁ、その――――桜、綺麗だね」
「えっああ。そうだね。あのライトの器具は誰が用意したの?」
「あれはね、哲太さんが用意して、俺たちで取り付けたんだよ」
「大変だったでしょ?」
「まぁまぁ、大変だったかな」
「それはそれは、ご苦労さまでした」
あたしが茶化すような態度で藤井くんにお礼を言ったら、背後から声が聞きえてきた。
振り返ったら、そこには洋輔と橘瑞奈ちゃんがにっこり立っていた。
「こんばんわぁ。トウコちゃん、慎ちゃん」
「こんばんわ」
藤井くんと同時に挨拶を返した後、あたしは、もう一度瑞奈ちゃんに声をかける。