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第10杯 ②

 引っ越して、初めて夜の街を歩く。独りじゃなく、マス姉と一緒に。

 携帯の電話で藤井慎一くんから指示があった通り、Cafeから河原へと続く道に連れてきたのだ。

 歩き慣れていない河原への道を当たり障りのない話をしながら、歩くあたしたち。

 しばらくして、マス姉が、どうやら藤井くんたちを発見した模様。


「あの土手降りたとこにいるの、慎一たちじゃない?」


 芝が生えた土手の下の方にライトで照らされた場所がある。

 それを見たあたしは、とぼける演技を続けたまま答えた。


「っぽいですね」

「手を振ってるのは、ありゃ洋輔だな」


 呆れた感じのマス姉。

 あたしたちの視線の先には、土手を下りた場所に川が流れている。その川沿いに桜の木の大木が植えられているのだった。

 傍には桜を照らす機材などがあった。そこへ行く為、あたしたちは土手に造られた階段を下りる。

 階段はコンクリートで造られ、幅1メートルくらいの階段が数十段。

 下り終わると、3人の人間がこちらに近づいてきた。

 にっこりほほ笑む3人組み。

 内のひとり、藤井くんが少し恥ずかしそうにしゃべり出した。






「ようこそ、Cafeハイツへ。宮野董子の歓迎お花見会――――」

  

 


 次に哲太さんが一文字のみ言葉を発した。 


「と、」





「見事に男をフッたマス姉こと、岡島ますみの激励お花見会を開催します」


 これは洋輔が言うのだった。

 全く話が飲み込めないあたしたちふたりは、棒立ちで声をすぐ出せないでいる。


「……なにそれ」


 と、同時に驚き口走った後、あたしたちふたりはお互いの顔見合わせるのだった。


 

 あたしは彼らの言った事が理解できないでいる。でも、予想外だったのはあたしだけじゃないみたい。マス姉も予想外の事だったらしく、驚いている様子。


「激励って――――何の事だ?」

「ふたりとも説明してくれるよね?」


 あたしも、まさかの展開だったので、説明が聞きたい。今のままじゃあたしたちふたりはさっぱりチンプイカンプイ。

 藤井くんが遠慮がちにあたしたちへこう言うのだった。


「話少し長くなるけど……」


 マス姉が自分もまんまとかつがれた事に、面白くないと言った様子。


「いいから、わかるように説明」

「じゃあ、俺から説明させてもらいます」


 そう言って藤井くんが話始めるのだった。


「――――まず、ふたりが同じくらいの時期に俺たちに、今日の事を頼んできたのが始まりになるのかな。俺にはマス姉、洋輔には宮野さんが」


 藤井くんが洋輔にバトンタッチするように視線を送った。


「だから、トウコの話より前にマス姉の花見の話しを慎一からきいて、俺はマス姉の計画を知ったんだな。その後にトウコと会話中に急いで慎一に携帯でメールして、あの時、慎一から大家さんに花見を進めてもらうメールしてもらったわけ」


 話が終わるとあたしはたまらず口を開く。


「じゃあ、あたしたちふたり以外は皆――――全部知ってたって事?」

「そう言う事になるね」

「だな」


 藤井くんと洋輔が視線を合わせた後、傍にいた哲太さんも黙ってうなずいている。


「やられた……」


 マス姉は一言だけ呟くと笑顔でこう言うのだった。


「すっかり、やられたなふたりとも」

「ホントに」


 あたしも顏から笑みがこぼれた。

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