第9杯 ④
「月並みだけど、花見だから、料理とか出して、皆で盛り上がるのがいいんじゃなくね?」
「お料理はもちろんだけど、重箱か、BBQとかね。どんなのがいいかなって」
「どっちも捨てがたいよな」
「でしょ?」
あたしと洋輔が意気投合する中、藤井くんの反応も知りたくて、彼を見た。
すると、藤井くんが乗り気じゃないような態度のようにもみえた。
「う~ん――――よかったら、料理は俺にまかしてもらえるかい?」
「ええ。料理得意なの、藤井くん?」
「あ~、……心辺りがあるから、その人に作ってもらうよ」
「じゃあ、お願いします」
「洋輔とあたしは、どうしよっか?」
「――――そうだな」
再び悩むあたし達を見て、横から、藤井くんが洋輔を呼ぶ。
「洋輔は料理の材料や色んな物を運ぶ、力仕事を頼むよ」
「了解。んじゃ、トウコはどうするんだ?」
藤井くんが洋輔にあたしの事を指摘されるとあたしの役割を考える。
「そうだな――――――」
「俺らだけじゃ、しんどいって。トウコにも手伝ってもらってもよくね?」
「あたしも、役に立てると思うけど――――――」
「いや、宮野さんにはマス姉以外の人のスケジュールおさえてもらうと助かるよ」
「OK。でも、あたしが言い出したのに、その仕事だけでいいのかな……?」
快くは返事したものの、やっぱり少しふに落ちない気もする。それにふたりに悪い気もした。
「いいよ、宮野さんにはマス姉にはバレないように、連れ出してもらう、重要な仕事が控えてるんだから」
「そっか――――――そうだよね。一番重要だよね、それが」
藤井くんは納得したあたしを見てから、ホッとしたような表情で穏やかに笑ってくれた。
「ああ、そうさ。洋輔も僕も男だからね、しんどい事は任しといてくれよ」
「んじゃ、哲太さんも巻き込んじゃおうぜ」
新たに洋輔が自分の提案を藤井くんへ述べた。彼の提案に真っ先に乗ったのは、このあたしだった。
「だね、きっと飛んで来てくれるよ」
「だろ?」
洋輔もあたしも気持ちがかみ合い、やっと自然と笑顔が、お互いから溢れ出るのだった。
あたしたちふたりの様子を見守る藤井くんはにこやな表情を浮かべる。
「ふたりともわかったよ。じゃあ、そのつもりで夜、哲太さんに声掛けておくよ」
今日はあたしたちのちょっとしたケンカもマス姉の計画も、藤井くんに全て丸く収められた。彼は洋輔と違って、頼りがいがある人だというのがよくわかった日。そして、あたしにとって、藤井くんという人間を知る貴重な一日なったのだった。
今年の更新はこれで終了です。
皆様よいお年を。また来年お会いしましょうね(^^)ノ
新年は1月8日~13日前後に開始できればと思っております。