表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/89

第9杯 ③ 

「大変なんだね、ふたりとも」


 あたしの言葉に、洋輔が誰よりも先に反応した。


「まぁな、どっかの誰かとは違って、俺も慎一も大変なの」

「へ~。それはそれは、どっかの誰かとは、誰の事なんだろうね?」

「さぁ~俺の口からは言えないねぇ」

「あっそ。あたしもどっかの住人に迷惑かけられて、大変なんだよね」


 あたしの態度に、どうやらこれ以上は話さないほうがいいと悟った洋輔は、口をつぐんだ。

 洋輔があたしにしてくれた事を思えば、今は黙っといた方が賢明。でも、少しいじめすぎたかな、と感じる自分もいた。あたしはちょっぴし大人気なかったと、少しだけ反省するのだった。


 相変わらずなあたしたちふたりの会話には参加せず、藤井くんは会話が終わったのを見計らってから、話し掛けてくれる。

 

「そう言えば、険悪になる前のふたりは何を話し、してたわけ?」


 藤井くんに痛い所を突かれたあたしも洋輔も、お互いの顔をチラッと見ては、様子をうかがうのだった。

 少しの間を置いてから、洋輔が先に口を開く。


「……安心しろ。俺たちほんの5分前は、ちゃんと会話できてたぜ」

「それは、よかった。もっと皮肉のオンパレードで、会話にならない会話してたのかと、思ったよ」


 藤井くんにしては珍しく毒づいた。その後、彼があたしたちに視線を送ると意味あり気に、あたしと洋輔を見入るのだった。

 あたしはそれで藤井くんが何を言いたいのか、なんとなくわかった。彼の期待に応えるべく、声を出す。


「言いたい事はわかったよ――――藤井くん」

「じゃ、僕が来る前の仲良く会話してた事を、教えてくれるかい?」


 そう言って皮肉る藤井くんは、あたしたちへ微笑んだ。

 そして、優しい笑みを浮かべた藤井くんが、今度はあたしだけを見つめる。


「ええ、喜んで」


 あたしは藤井くんの何とも言えない眼差しに観念して、苦笑してから、マス姉の為の計画を打ち明けた。

 あたしが話し終えると藤井くんは賛同してくれるのだった。


「それいいんじゃないかな、気分転換になるだろうしね」

「だろ、慎一」


 洋輔があたしの代わりに、ご満悦な顔をして答えた。

 藤井くんの賛成で、あたしは勇気を出し、もう一つの話も切り出す。


「それでよかったら、時間ある時にでも、お手伝いしてもらうと、ありがたいかな」

「ああ、いいけど。何かする事あるのかい?」


 藤井くんの疑問にあたしが答える間もなく、洋輔が便乗する。


「そう言えば、まだ、なんも決まってなくね?」

「うん、それを今から考えないと」

「場所と、コンセプトの夜桜が決まってるって事は――――――」

 

 洋輔の言葉が途切れる。そして、少しの間考えてから、何かひらめいた様子。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ