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第8杯 指に光るモノ

「なんだよ、それ。全然意味わかんなくね?」


 洋輔がまだ納得できていなくて、あたしはまた困惑する。


「これ以上聞くと、宮野さんが困るから、やめておこう」


 しつこくする洋輔を、藤井くんが制止してくれる。


「様子が変なのは、明らかなのに、か?」

「ああ。様子がおかしいのは明らかだけど、宮野さん、問い詰めても仕方ないだろ?」

「そりゃそうだけど――――――」


 洋輔はポリポリと顔をかくと黙り込んだ。

 誰もそこで口を開かなくなる。

 重ぐるしい沈黙をあたしが破った。 


「――――もし、降りてきたら、いつもの感じでいいと思うの」

「それがいいだろうね。何か悩んでるんなら、本人の口から言うだろうしね」

「……うん」

「まっ他人にあれこれ聞かれるのは俺も嫌だからな。もうなんもきかねぇから」


 あたしたちが相談の真似事をしていると、スーツを着た男性がCafeに入ってくる。


「いらっしゃいませ」


 ハンカチで顔を拭いている男性に、カウンターから、哲太さんが迎えた。

 Cafeをあちらこちら見ては落ち着かない様子の男性。

 大人の男性とは程遠いい行動の末、席を決めたのか、テーブルに座る。


「ご注文は?」

「あっ……その――――――」


 せっかく座ったのに、スーツの男性は、哲太さんのいるカウンターに向かった。

 咳払いで自分を落ち着かせる男性。


「上のハイツの住人の方と話がしたいんだがね?」

「失礼ですが、お客様は?」

「岡島ますみの上司で、忘れ物を届けに来たんだがね」

「では、こちらでお預かり致しましょうか?」

「いや、本人に渡したいんだ」

「わかりました。では少しお待ち下さい」

「ああ」


 男性は来た時とは違って、とても落ち着いた様子。用が済んだのか、自分が選んだ席に腰掛けた。

 ふたりのやり取りが、所々、自分たちにも聞こえたので、みんなお互いを見て目配せする。


「あいつ誰だろ?」

「さぁ、誰だろうね」


 洋輔と藤井くんのヒソヒソ話にあたしは参加せずにいた。

 あたしの背後に哲太さんがいつの間にか立って、何かボソボソと言っている。彼が何をさせたいのかを理解した。


「――――――お願いするよ」


 あたしが無言で、頷くのを見た哲太さんは、カウンターに戻るのだった。


「今の、何だったんだ?」

「どうかしたのかい?」

「なんでもないの――――」


 哲太さんの行動で、ふたりが動揺しているみたいだから、左右に首を軽く振って、冷静にあたしは応えた。


「あっあたし――――」

「急になんだよ?」

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