第6杯 ②
Cafeに入ってきても会話が止まる事もなく、こちらに来るようだ。
「もう少し寝かしてくれりゃいいのに」
「あのな、お前いい加減にしろよ」
「んな、怒んなくてもいいじゃなくね?」
「普通は怒るだろ」
寝癖のついた頭をボリボリかく洋輔に、呆れた様子の藤井くん。
「とりあえず、宮野さんだったかな、謝るんだぞ」
「ヘイヘイ、謝りますよっと、その前に」
こちらに向かっていたのを急に進路を変えて、洋輔はカウンターのそばへ。
「コーヒーブラックでお願いします」
「いらっしゃい、洋輔くん、慎一くん。コーヒーブラックだね」
「同じので、俺もお願いします」
「はい、かしこまりました」
用が済んだのか、ふたりはまたこちらに向かってくる。
洋輔はバツの悪そうにあたしへ話しかけてきた。
「――――董子」
「っん?」
「なんだ、その――――待たせて悪かったな」
「ホントぉ~にそう思ってるの?」
「ああ、まぁな」
「一応、洋輔も反省してるから、許してやって」
「まぁ、いいけど。とりあえずふたりとも席に座って」
あたしがそう言うと、ふたりは席に腰掛ける。あたしの隣には洋輔、彼の前には藤井くんと言った形に。ふたりがそれぞれ、鞄から筆記道具を出していると、男性の声。
「ハイ」
その声にあたしたちが振り向くと大家さんじゃなく、ガテン系の服が似合いそうな雰囲気の男性がいた。一見いかつそうな感じ。坊主よりかは少し髪が長めで、さっぱりとした髪型の30代前後の男性がカップをテーブルに置くのだった。
「哲太さん、ありがとう」
藤井くんが声を掛けたのに対して、短髪の男性は小さくうなずいた。次に洋輔の前にもカップを置く。
「サンキュー哲太さん」
また、小さく笑っただけで、何も言わずにカウンターに戻って行く男性。彼が戻ったのを確認してから、あたしは口を開いた。
「あの人ってアルバイトさんですか?」
「ううん、大家さんの息子さんだよ」
「あれっ、董子は初めてだっけ」
「うん、見かけたのは今が初めてかな」
チラっと、哲太さんと呼ばれた男性を見るあたし。大家さんの息子さんと聞いて、あたしはどんな人物なのか興味が湧くのだった。
藤井くんはそんな様子に気が付いたのか、簡単に哲太さんの事を教えてくれる。