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第6杯 勉強とコーヒーと雨

 息が上がった男性は、この前紹介された藤井慎一くん。

 あたしに話しかける為か、息を整えているようだ。


「ちょ――――ちょっと待ってね」


 肩を上下さして言う藤井くんを見て、あたしはウンウンと声を出さないで頷いてみせた。それでも彼はとっても気にしている様子みたいで、身体の前で手を合わせて謝ってくれる。


「ごめんね、遅くなって」

「あっいえ。大丈夫ですよ」


 首を左右に振ってから、あたしは優しく答えた。


「そう。洋輔も中にいるの?」

「ああ、いないです」

「なんでだい? 今日勉強する日だったんじゃ」

「そうなんですが、寝てるっぽくて」

「なんだ、そうなのか」

「……はい」


 藤井くんに応えた後、あたしが悪い訳じゃないんだけど、どうしてか、彼に悪いような気分になった。


「ずっと、洋輔と俺の事待っててくれたの?」


 何も言わずにあたしが頷いたら、改めて藤井くんは汗をぬぐって、申し訳なさそうに言う。


「ホント~に悪かったね、洋輔に連絡とかすればよかったんだけど、携帯忘れて」

「気にしないで下さい。張本人、グースカと寝てますから」

「そうみたいだね」

 

 ホッとしたのか藤井くんがハニカンだ顏で、照れた様子を見せる。

 そんな彼を見てあたしはクスクスと笑った。


「じゃ、洋輔呼びに行ってこようか?」

「はい、お願いします」

「うん」


 藤井くんは目の前を横切って、あたしの前にあるドアを開け、洋輔の部屋に向かう。彼を見送ったあたしはまたCafeに戻る事にする。

 自動ドアが開いたと同時に店内のカウンターにいる大家さんが声を掛けてきた。


「起こせたかい?」

「今そこで藤井くんに会ったので、洋輔の事は彼に頼んじゃいました」


 ぺロっと舌を口から少しだけ出しあたしは、大家さんに笑うと、心なしかホっとしたような表情の大家さん。


「そうかい、それはよかったじゃないかい」

「はい、じゃ空いてる席お借りしますね」

「ああ、どうぞ」


 あたしは元居たカウンターじゃなく、歩道や道路が見える窓際にある4人席のテーブルに座る事にした。

 席についたあたしは勉強セットを取り出し、洋輔たちが来るまで、高校で習ってた事を必死に思い出そうと頑張るのだった。

 自動ドアの方から、かったるそうな男性の声がする。

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