第1杯 ②
第1杯③ 1月16日予約投稿。
後日、ハイツに来て、ここで初めてこの鉄柵を見た時は、少し驚いたけど、今はこれがあるおかげで防犯の事を心配する様な事もなく、とても助かっている。
あたしは鉄柵を開けて鍵を閉めてから、下の階に下りる。
2階も造りが同じで階段から廊下へ出る手前に鉄柵がある。逆に2階は男性の住人しか住んでなく、女性住人は2階に入れない。
建物にまだ見慣れていないあたしは色々観察しながら、やっと最上階の部屋から目的の最下層に到着。
あたしの目の前には大家さんが趣味で経営するあの素敵なCafeがある。外に出なくとも階段から数歩進めば、Cafeの入り口が。
センサーが感知したのか、自動で目の前のガラスのドアがあく。
店内は通りからも中の様子が見えるコの字型のガラス壁。その壁にテーブルなどが数個置いてある。一般の方は営業時間のみで利用するようになっているが、住人は営業時間以外24時間入れるようしてある。
「いらっしゃい、トウコちゃん」
白髪混じりのキレイに切りそろえられた短髪。整った髪が好印象の年配男性がコーヒーコップを片付けてから、こちらをみて、やさしく微笑んだ。
「こんばんわ、大家さん」
あたしもその微笑に答えるように微笑む。
「どうかしたのかい?」
「う~んと、なんとなくコーヒーが飲みたくなって」
そう答えながら目の前の椅子へ進み、あたしはいつも座るカウンター席に腰掛ける。
人恋しくなると、ここへ降りてコーヒーを貰い、大家さんと世間話。
コーヒーはその時の体調や気分に合わせてドリップしてくれる。しかも、ここの住人はタダで飲めるシステムで、とっても重宝している。
Cafeのコーヒーが大好き。大家さんの暖かい人柄とここがすっかりお気に入り、いつも癒してくれる。
今日もいつもの場所にそれぞれ人がいるみたい。
カウンター席では奥に女性が一番端にいる。いつもの席でコーヒーを飲みながら、誰かと携帯で話している様子。もう一人は道路が見えるコの字型ガラス壁に沿って置いてあるふたり掛けのテーブルに、くたびれ感じのサラリーマンの姿。
女性の髪は肩よりも長く今流行のゆる巻きパーマ。少し茶色がかった痛んだ毛。歳はあたしより少なくみて2歳ぐらい離れているといった感じ。
男性はセットしていた髪の毛が少し乱れて、服はスーツにしわがついている。自分の身なりに気を使う事もできないくらい疲れている模様。
コーヒーを待つ間、Cafeの様子をごく自然な態度で観察する。
あたしがカウンターに振り向いた瞬間、しばらく携帯で話をしていた女性と目が合う。以前も閉店後ココに居る時にもこちらを気にかけている様子だったけど、住人とわかっていてもお互い話しかける事までは、なかなかできない物。