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第5杯 董子ちゃんらしい

急な質問からタイトル上記に変更しました。  9/1 18:30 choco

「ごちそうさん」


 食事が終わり、ファミリーレストランから出るあたし達。

 はじめに話し出したのは、ご機嫌なそうな声の洋輔。それに続いて言葉を返すけど、適当な感じのトーンで答えるあたし。


「う、うん」


 お会計が済んだばかりの自分の財布の中を再確認。あたしはすっかり軽くて薄くなったのをヒシヒシと実感するのだった。

 あたしがお財布をみて嘆いている時、ふたりはまたラブラブモードに突入したみたいで。


「洋ちゃん、おいしかったね」

「そうだな、うまかったな」

「今度はふたりだけでココに来ようねっ」

「来月、バイト代でも入ったら、行くか」

「うん、楽しみにしてるね」

「おお」


 送ってもらうつもりで、ふたりのやり取りを早く終わらないかな、と思って聞いていたあたしは、会話が終わるのをひたすら待った。


「んじゃ、俺らココで」

「はぁはいっ?」


 思わずあたしはキョトンとする。洋輔が何を言っているのか、理解できない。

 それを察してなのか、あたしの態度に拍子抜けしたのか、ポリポリと顔を指でかきながら洋輔が言うのだった。


「いや――――俺らさ、バイクで帰るし」

「まさか、あたしをココに置いてくつもりとか?」

「ああ、そのつもり」

「っうぇぇ!」


 声にならない声が、気づくと、あたしから飛び出していた。その声がうざいらしく、不機嫌そうな顏になる洋輔。


「何? 子供じゃあるまいし、独りで帰れんじゃね?」

「まぁ……それはそうだけど、送ってくれたっていいでしょ?」

「なんで? 俺、彼女送んないと」


 呆れたあたしはそれ以上、会話する気にもなれず、彼らを見送る事を選んだ。


「おねぇさん、ごちそうさまでしたぁ」

 

 洋輔のバイクの後ろに、ガッチリと彼の腰に細い腕を回した彼の彼女が、顔だけを少し下げて言った。

 両頬にえくぼをたずさえた彼女に目を向けて、答えを返すあたし。


「どういたしまして。それと歳ひとつしか違わないし、名前かなんかで読んでくれれば」

「ん――――」


 あたしの言葉に何かを思い出そうと彼女が考え込んだ様子。少しの間が経ってから、誰ともなく尋ねる彼女。


「名前って、まだ教えてもらってないよ?」

 

 バイクにまたがっているだけだった洋輔が、あたしと彼女の会話に急に口を出して来るのだった。メットをかぶろうとした手を止めて、素朴な彼女の疑問に彼は答える。


「ミズ、彼女は宮野董子で、俺とハイツが一緒」

「ふーん、同じ住民さん仲間だったの」

「そういう事。何度か会うかもね、あたし達」

「だね。じゃあ、下の名前でトウコちゃんって呼ぶね。ミズはぁ、橘瑞奈って言うのぉ」

「タチバナ ミズナちゃんね、よろしく」

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