プロローグ ― ロック・ロズウェル
本作『Elmundの物語』は、私が2020年から書き続けているRPGのオリジナル世界観をもとに、友人たちとのTRPGキャンペーンで体験した冒険の数々を物語として再構成したものです。
それらは私にとって強く心に残る思い出であり、きっと読んでくださる方々にも楽しんでいただけるのではないかと思い、筆を執りました。
この物語を読む皆さんが、私たちが当時セッションを遊んでいた時と同じような没入感を味わっていただけたなら、これ以上嬉しいことはありません。
なお、日本語に関しては母語話者ではないため、不自然な表現や誤りがあるかもしれません。
それでも、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
もしお気づきの点やアドバイスがありましたら、ぜひ教えていただけると嬉しいです。
東方の地、ノゾミの国。
その将軍が**鬼**であることを現した時、この国は破滅へと突き落とされた。
そんな絶望の中、七人の介入者が現れた――四人はその地の住人、そして三人は異邦人だった。
その後に起きた戦いは凄惨を極め、歴史には
**『ノゾミの翼』**として刻まれることになる。
舞台となったのは大都市・島原。
そこで民の運命が決まり、解放の物語は始まった。
それまで民衆は、虚偽と隠蔽によって成り立つ鉄の支配に苦しめられていた。
魔法の存在も、人間以外の存在も知らされていなかった。
常識から外れたものは、すべて一括りに「鬼」と呼ばれていたのだ。
さて、異邦人側の当事者だが――
それが、俺たち三人である。
ヴィルジル・リアドン。
ウィッセニアが誇る名高き教授にして、十大魔導士の一人。
シャドウ。
影に生きる幻術の達人であり、ヴィルジルの直弟子。
そして最後に――
言うまでもなく、そして一番重要なのが――俺、ロックだ。
この世界史上、最高のトレジャーハンター。
(見る人によっては、半端なコソ泥だと言うが。)
なお、その地の四人の住人については……まあ、別の機会に語ろう。
断言しておくが、あいつらは一人一章じゃ足りない。
さて、なぜ今になってこんな話をしているのか、不思議に思っているだろう。
理由は簡単だ。
あの出来事から、すでに三十年ほどが経っている。
それなのに俺は、なぜかヴィルジルに荷馬車一台分の借りを作ったままなのだ。
言っておくが、俺は直接関わってない。
(関わってた。)
要するに、不運が重なっただけだ。
俺の判断はどれも至って合理的だったし、状況のほうが完全に理不尽だった。
(皇帝の娘を口説いたり、偽物のアーティファクトに全財産を賭けて負けたり、とか。)
その結果どうなったかというと――
墓を荒らし、希少な遺物を追い、責任という言葉から全力で逃げるという理想の生活を引き剥がされ、
エルムンド北方の極寒地で、地味で平和な教師生活を送る羽目になった。
トレジャーハンターとしての才能の無駄遣いもいいところだ。
(違う。)
世界は明らかに、俺がこの平凡な人生に縛られていることで大きな損失を被っている。
(いや、むしろ世界は感謝してる。)
とはいえ……
ヴィルジル師匠からの直々の依頼となれば、断るのも難しい。
ましてや、あの手紙に滲み出ていた切迫感を思えばなおさらだ。
それにしても、**「オメガの書」**がどれほど重要な代物なのか――
自分の地位を捨ててまで、俺に託すほどなのだから。
彼と最後に会ったのは、その依頼の三か月ほど前だった。
どこか様子がおかしく、悩みを抱えているように見えたと思ったら……この爆弾だ。
今となっては、もう四年以上、顔を合わせていない。
正直、追いかけたい気持ちもある。
だが、学校と、彼が俺に託したすべてを放り出すわけにはいかない。
今は待つしかないだろう。
せめて救いなのは、事態が少し面白くなりそうなことだ。
学院長アビゲイルが、今年の第一クラスに入る**「プロディジー」**たちの後見を、俺に任せたらしい。
シャドウは、例のガキどもの情報と能力の裏取りを担当している。
で、その精度だが――
吹き矢でハエを撃ち落とすレベルだった。
名前は、アデュー、ベヌ、エルドリン。
どうやらアデューは、チェインモン遺跡近くの地下洞窟群に住んでいるらしい。
あそこは昔、俺が探索した場所だ。
都合がいい。
まずは、そこから行くとしよう。
ただ願わくば――
あの三人が、面倒くさい理屈屋で、愚痴だらけのオタク系じゃないことを祈る。
……グルトクよ。
どうか、この旅に祝福を。
ここでは、いくつかの設定について簡単に説明しておきます。
**「Elmund」とは、この物語の舞台となる惑星の名前です。
私たちの住む惑星が「地球」と呼ばれているのと同じように、この世界は「Elmund」と呼ばれています。
そのため、本作のタイトルを『Elmund綺譚』**としました。本作は、この世界で起こる物語の集まりだからです。
グルトクは、魔法を司る主神にあたる存在です。
彼の配下には、補佐役として働く複数の下位の神格(小神)が存在します。
Elmundにおいて、神々は**「セレステ(Celeste)」**と呼ばれていますが、
地域によっては単に「神」と呼ばれることもあります。
これは世界共通の呼び方ではなく、文化や信仰によって異なります。




