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剣の神と火の女神

虚空を切り裂く音と共に、結生の右手に青く、冷たく輝く刀身が現れた。

その背後で、ファラフナーズは炎の鳥を手中に吸収して言った。


(アータル)よ!」


導火線を伝わるかの様にして、彼女の両手から燃える火が流れて伝わり、非物質の刀身に着火する。

燃える炎の剣を掲げて、結生はルシーアに対峙する。


「!」


前進しかけ、立ち止まった。

血に塗れた手で光る剣を握り締め、ひたすら目の前の光景をただただ眺める。


ばりばり…ばりばり…


ルシーアが、その鱗に覆われた自分の身体を掻きむしっている。

パラパラと青い色をした鱗が掻き落とされた。

鱗が落ちたあとの皮膚には、薄いピンク色の瘢痕が残った。


「ユキちゃん。止まっちゃ駄目。やるのよ。」


悲痛な声でファラフナーズは結生に訴える。


「彼女が“神”から人間に戻る事は無いわ。一旦神に“喰われた”者が、帰って来た試しは無いの。」


「…むろん、敵に情けをかける気はない。」


しわがれた深い声が、結生の口から出た。

驚愕して少し踏み出し、結生の横顔を覗き込む。


「……!」


ファラフナーズは見た。

傷つき、血を流し、今にもポッキリ折れそうな程細い少女のシルエット。

その傍らに立つ神の影。

二人とも真っ直ぐに敵を見据え、武器を握り締めていた。

神と共に歩みし影は一歩を踏み出す。

青く輝く刀身を頭上に高々と掲げ、そして振り下ろした。


「ヤッ!!」


「!」


ルシーアは瞬時に飛び退る。

勢いを外した火の斬撃はしかし、豪奢な絨毯が敷かれた床そのものに叩きつけられ、そして大炎上する。


「ハァッ!」


結生は刀を横に払った。

燃え盛る火と煙の中、視界を覆われて往生するルシーアに、爆炎の斬撃が的中する。

爆音と共に火と煙が噴き出し、同時に液体が瞬時に沸騰してボコボコと泡立ち、蒸発する音が聞こえた…


「…………。」


結生はがっくりと肩を落としながらも垣間見る。

膝を折ったままの姿勢で、焼け焦げて煙を上げながら空気に晒される、少女の首の断面を。

その場にいた誰もが、世界の終末が訪れたかの様に沈黙している。

ファラフナーズは結生に近づき、その肩を抱こうと手を伸ばして…


「わぁっ!」


少女の悲鳴が響いた。

弾丸の様な素早さで飛び込んできた、マリーア・ミゲル・デ・ミニョーラが姉に駆け寄る。

首と胴に分かれ、ぶすぶすと煙を上げるそれらを見て、半狂乱のまま絶叫した。


「わあああああああああああああっ」

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