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不滅の太陽

倒れ伏す結生を見下ろし、ルシーア・ミゲル・デ・ミニョーラは佇む。

小さな少女は血溜まりの中、うつ伏せになったまま死んだようにピクリとも動かない。

流血する側頭部をかばう様に頭を両腕の中に沈めている。

ルシーアは嵐が過ぎ去った後を思わせる静寂の中で、ほんの少し手前に視線を移した。


「……。」


えんじ色に染まった絨毯の上。

今しがた、烈風の一撃により切断された結生の右耳が落ちている。

彼女はゆっくりとそれを拾い上げて、見つめる。


「反乱分子よ、貴様の闘いぶりは見事であった。」


耳をつまんで持ち上げつつ、ルシーアは独りごちる。


「尊い犠牲が必要なのだ。いつの時代も。そうして祖国を照らす、明るい太陽であるところの、理想が輝く。」


朗々たる独白が、豪奢に彩られた来賓室に響く。

手に持っている、かつて結生だったモノの一部を持ち上げて彼女は言った。


「血と、心臓の捧げ物によって太陽は再生する。“犠牲”を頂くとしよう。」


そう言って、結生の耳を口に運ぶ。

一口、前歯で噛んで、そのゴムの様に弾力があるそれを、難儀しながら噛み砕き、飲み下していく。


じゃぐり…じゃぐり…じゃぐり…じゃぐり…


生の肉を喰らい、滲み出す血潮を啜る音。

鉄臭い血の匂いが、邪悪な悪霊が住まう沼地より出でて虚空に吸われる有毒ガスの様にして、部屋中の空気に染み通っていった。


「…………。」


コリコリとした軟骨の最後の一欠片が白い喉の奥に吸い込まれて消えた。

満足げに微笑み、その優美に弧を描く口元に深紅の血化粧を塗りたくったルシーアは、次なる一皿を求める貴族であるかの如くに、尊大な目付きで見下ろす。

視線の先にある、血の池に沈む結生のほっそりした身体。

しゃがみ込み、その青白い首筋に手を伸ばす。

その爪先は、鉤爪の様に尖り、手の甲は青玉の色をした鱗で覆われていた。


「…………。」


自身の身体に起きている変化にも気付かないまま、彼女は獣の様に四つん這いになり結生の、意識と体温が失せた肢体に近づく…


霊鳥(シームルグ)!」


熱気を帯びた怒声が轟いた。

翼を炎で包まれた紅蓮の鳥が数匹、飛来してルシーアの周りを旋回する。

数人のスーツ姿の男と共に、長い栗色の髪の少女と、灰色のレインコートを着用した眼鏡の男が大部屋へと入って来た。

少女は言った。


「…カニバリズムは理解できなくもないけど、生肉食は趣味が悪いと思うわ。」


ファラフナーズは言った。


「犠牲はまず、火に捧げるものなの。火は、嫉妬深いのだから。」


火の鳥の群れが一斉に羽ばたき、辺り一帯を火の粉と熱波の竜巻で満たした。

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