デス・マッチ
「“断て”!」
結生は心の中で、深淵から湧き上がったエネルギーが青く輝き、凝固して鋭く尖った氷柱へと成長するイメージを練成した。
そしてそれは現実の領域に出現した。
冷気を放つオーラの一端を、右手で握り締める。
「……。」
それは鋭利な武器。
非物質のエネルギーが凝結した一振りの剣。
青い輝きを放つ刀身が瞬き、点滅する。
一振りの重さのない剣を、結生は両手持ちで構えた。
「ハァッ!」
ルシーアの通りの良い美声が虚空をつんざく。
一迅の烈風が部屋の中の什器、家具類を引き倒し、また吹き飛ばす。
結生は背後より飛来する給仕用ワゴンを気配で感じ取り、振り向きざまに斬りつける。
決して軽くはないワゴンが、バターの塊を切る様にして切断された。
「セルピェンテ・デル・ビェント!」
結生は振り向く。
風は止み、冷気を孕んだ重たい空気が渦を巻いてルシーアの周りに集まる。
「……!」
結生は身構え青く輝く冷たい剣を強く、握り締める。
ルシーアは右手を高々と掲げた。
不可視の大気の流れが手の内に凝集され、固まっていくのを、結生は重々しい圧力で感じた。
テーブルの上から一歩を踏み出し、ルシーアは跳んだ。
「ボイ・ア・ルチャール(参る)!」
着地の衝撃を上昇する気流で相殺した彼女は、見えない空気圧をまとった武器を、容赦なく結生に向かって叩きつける。
決死の覚悟で結生は武器を振るって攻撃をいなし、半歩下がって青く輝く刀身を持ち直した。
「“断ち切れ”!」
エネルギーの刃が煌めく。
エモノを真横に構え、一気に斬り払う。
対する騎士の様な少女は、不可視の渦巻く武器を真っ直ぐに向ける。
振り抜かれた青い剣は、凝縮した暴風に絡め取られて彼女の手を離れ、明後日の方向へ飛んでいった。
「……!」
すかさず結生は精神を集中し、冷たく鋭い刃のイメージを頭の中に構築し…
「!」
本能的な恐怖を感じてかがみ込んだ。
そのまま持ち前の運動神経を生かして転がり、ルシーアからの距離を取った。
それまで結生がいた背後。
アーチ状の通路に、その狂風の力が注ぎ込まれる。
素人が操縦する重機が乱入して、手当たり次第に目につくもの全てを滅茶滅茶に壊しているかの様な轟音。
あそこにいたらと思うと、結生はゾッとした。
大舞台のヒロインを思わせる、通りの良い美声が響く。
「ア・ラ・フスティーシア(観念せよ)!」
ルシーアは再び不可視の武器を構え直し、結生に接近する。
彼女はその眼で睨みつける。
暴風の主、恐るべき破壊の力を誇る“白のケツァルコアトル”の堂々たる似姿を…
「!」
結生は駆け出す。
驚くルシーアの白く浮き上がる顔を尻目に、彼女は素手で見えざる武器を掴み、強く握り締めた。




