境界線
結生が空き腹を抱えながら、そしてファラフナーズが愉快そうに軽快なステップを踏んでたどり着いた先。
薄暗い洞窟の中のような、ドーム状の玄関ホール。
その奥に佇むこの学園の、来賓室の大きな扉。
それを見て結生はファラフナーズに聞いた。
「何これ。誰かお客様でも来てるっての?」
彼女の言葉に頷く遠い異国から来た少女。
「そう。せっかくだしユキちゃんを紹介してあげようと思って。」
上品に口に手を添え、ほくそ笑みながら言う。
「何それ、聞いてないじゃない。」
短くため息をついた後、半場怒りの口調で結生は言う。
「それって何かのお偉いさん?そもそも何であんたがそれを知ってるのよ?」
ファラフナーズは細長く目を細める。
まるで相手を品定めするかの様な独特の目つき。
それは、飼い主の顔を見つめる子猫の様にも見えた。
少し押し黙り、ごく短い沈黙の後彼女は言った。
「親戚が共産党の、幹部の人といい仲でね…その関係でたまにお付き合いさせて貰っている人なの。」
「……。」
暗く人もいない扉の前のホールの中、しばしの沈黙の帳が下りる。
以前から何となく察してはいたがファラフナーズが一学生として、明らかに優遇された立場に置かれている事の理由が今分かった。
結生は呆れたように再びため息をついて言う。
「…まあ、そのへんの事情は分かった上でほっとくけど、私なんかが相席していいわけ?」
「構わないわ。私の友人として紹介してあげる。それに、」
ファラフナーズは続ける。
「貴方も私と同じ、××××だし…」
「……?」
最後の方が聞き取れなかった。
聞き慣れない単語だった事もある。
その一言が発された瞬間、重々しく恐ろしげな鈍い音をたてて扉が開いた。
「行きましょうか。」
終始楽しそうなファラフナーズ。
まるで結生を置いてけぼりにするかの如く、一人で来賓室に入って行く。
「待ってよ。」
結生は彼女の背中を追う。
隣で扉を開けた職員がうやうやしくお辞儀をする。
抜けた先にはアーチ状の通路があり、壁に高価そうな絵画が所狭しと、並んで二人を見下ろしていた。




