表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/44

発見

学園の食堂入り口手前。

屋台の様な手押し台車の近くに、見覚えのある顔があった。

マリーアとルシーアの兄、ホセの姿があった。


「兄さま!」


嬉しそうに駆け寄るマリーア。

続けて結生が、スリプナーが、そしてルシーアが後に続こうとする…


「お前は、駄目だ。」


大振りな肉切り包丁を真っ直ぐに突きつけ、ホセはルシーアに告げる。


ピタ、とその場に釘付けになったかの様にその場に立ち止まる。


「いかに妹と言えど許さん…手間暇をかけて立ち上げ、育て上げてきた俺の店を…あんな風に…あんな風に…」


その無骨な顎からきしる音が響き、喉の奥から唸る声が漏れた。


「賞味期限切れ卵でも食らえ!」


そう言葉と共にルシーアに投げつけられる、白くて丸い鶏の卵。

べしゃ、と音を立てて彼女の額にぶつかり潰れた。


「……。」


明るい銀色の髪が翻って、女子寮の方へ走り去って消えた。


「ホセさん…」


いたたまれない気持ちになって、結生は両の手を握りしめた。

スリプナーは彼に近寄って言う。


「すみません、大変下世話な質問ですが修理費用は…?」


「ああ、出たよ。“機関”からな。」


彼は屋台の角からウォッカの小瓶を取り出して、そう言う。


「であるからして今、実店舗は改装中。俺はこの屋台で人の多い場所を回送中、て訳さ。」


言って彼は無色透明な液体を一口煽る。


「飲まずにやってられるか…金の問題じゃねぇんだぜ、畜生。」


彼はスリプナーの細い顔を見つめる。


「あいつには一回厳しく当たらなきゃ駄目だ。一カ月、ポテトとマヨネーズだけで生活させるとか、そんな生っちょろい罰じゃなくてな。とにかくあいつは思い込みが激しい。人の話だって聞きやしねえ。」


「…組織として善処します。」


真面目な顔をして言うスリプナーから、彼は結生へと目を移す。


「おぅ、嬢ちゃん。辛気臭い顔すんじゃねぇ。あんたは何も悪くない。悪いのは出来の悪りぃ俺の妹の方でよ…」


二口目の酒を口中に注ぎ入れる。

そんな兄に、妹であるマリーアは言う。


「じゃあ、二人の妹のうち、良い方の妹にさ、何かおごるって考え方ない?タコスとかタコスとかタコスとかさ。あの日食べそびれちゃってから、アタシ腹ペコなんだよぅ。」


少し前から飲んでいたのか、若干眠そうな面持ちでホセはマリーアの顔をじっと見る。

そして叫んだ。


「分かったぞ!」


無機質に高い廊下の天井に至るまで響き渡る怒声。

その場にいた誰もが釘付けになる。


「……そういう筋書きなんだな。」


「……。」


周りが硬直する中、ホセは興奮しながら話す。


「そういう“役”ってこったな?これから毎回毎回、俺は自分の店を、何かある度にぶっ壊されるんだろ、そういう役回りなんだろ!?全部読めたぜ!」


「落ち着きなよ兄やん。この世界は小説じゃないぜ?」


妹の言葉も虚しく、ホセは結生達を追い払うかの様に立ちはだかった。


「…失せろ、疫病神共。今後俺の店に関わろうとするなら…」


屋台の上に置かれた、大振りな肉切り包丁を目で指し示す。


「“バラす”ぞ。解体して、皮剥いで、ミンチ肉に挽いてやる。その後で」


彼は一同を壮絶に睨みつけ、言う。


「スパイスかけちゃうぞ…?」


狂気じみた顔から本能的な危険を感じ、結生達はその場から逃げる様に脱出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ