白のケツァルコアトル
時は夕刻。
ルシーア・ミゲル・デ・ミニョーラは一人、自室で思案の泉に深く、沈み込んでいた。
おぞましい爆発事件の後、政府の職員達と行われた話し合いの内容について思い返す。
「君には特別な力があるんだ。」
そう、言われた。
「君は神の似姿。今回死んだ者から、その力が移った。」
信じがたい話の数々ではあったが、自分でも驚くほど、すんなりと納得することが出来た。
例えば彼女の妹のマリーア。
いつも落ち着きなく、何らかの“仕事”に従事している。
明らかに学生のバイト、という感じではない。
普通ではない。
以前から彼女はそう思っていた。
おまけにこの学園都市すらもそうだ。
この国に封鎖都市は多数存在する。
しかし…
封鎖都市“39番”。
ここの住民は…
自分達が住む街が、何故封鎖されているのか、理由を全く知らない。
異常だ。
原子力発電所、原子爆弾開発、諜報、機密情報管理。
そういう理由で“敵”に見つからないよう、隠された都市がこの国には多数存在している。
しかしこの街は…
人の出入りを厳しく制限しつつ、その理由は一切明かされていない。
彼女は考える。
もしかしたらこの学園は、自分達を収容するための檻なのではないか?
正常から逸脱したアノマリーを収容する保管庫、もしくは監獄。
風の噂で聞いた話が思い出される。
この学園の卒業生は皆、国家直属の機関にて雇用され、“エージェント”になるのだと。
だとすれば…
ルシーアは夢想する。
この自分に宿った摩訶不思議な“神影”というチカラで、国家に仕えることになるのだろうか?
…それも悪くないと思った。
部屋に備え付けの鏡を見る。
雪よりも白い自分の顔、そして長い銀色の髪。
先天性色素欠乏症。
…アメリカ合衆国のヒスパニック・コミュニティで暮らしていた頃は、ひたすら周りから浮いていた。
“白人の様だ”
と容姿をけなされる事もしばしば。
強い者だけが自我を通し、弱い立場の自我は抑制される。
そういう国だったと、ルシーアは思う。
この社会主義国家とて、それは同じだ。
権利を保持した者はそれを決して手放さず、保ち続ける。
持たざるものは、厄介な仕事を押し付けられるのを避けるために、ひたすらに無能を装う。
国家という機械の歯車が、徐々に錆びつき腐敗して行く。
滅びつつある超大国。
彼女はそう、内心で評した。
しかし彼女にとって、この国は自分を拾ってくれた恩があり、また浅からぬ愛着もあった。
国家に仕えることで、その恩を返すことが出来たら素晴らしい。
まして、自分にしかない特殊なチカラで、それが出来るなら…
そう思った。
窓の外から一陣の風が吹き込み、彼女の長い銀髪を揺らした。




