トランプ大統領にあって日本の政治家に「絶望的に欠如」しているもの
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は日本時間の1月21日(アメリカ時間20日)に再度アメリカ大統領に就任したトランプ氏の大統領令について見ていき、「日本人の政治家に足りない素養」について見ていこうと思います。
◇日本とアメリカの「政権交代」の違い
質問者:
初日からバイデン前大統領の78の大統領令を撤回し、1日で新たに100以上の大統領令などに署名したって凄い話ですね……。
筆者:
トランプ氏は1期目の就任の際には「政治素人」であったことから、今回は教訓を活かす形になっているみたいですね。
そもそも、アメリカでは二大政党制である共和党と民主党で政権交代がある度に政策が大転換することになります。
これは大きな代償を支払う可能性や、方針がコロコロと変わることによる国際的な信頼低下と言うデメリットはありますが、
政策が変わるという事は利権が固定化しにくいために一つのところに金が集まりにくいという要素もあります。
大統領が任命権を持つ高級官僚の数はおよそ3,500人と言われており、
それだけの人数が入れ替わることは文字通りの「大転換」と言えます。
質問者:
3500人も任命していたら大変そうですね……。
それだけ周りのサポートする人数も多そうですけど……。
筆者:
一方で、日本の場合は政権交代・閣僚交代をしてもピラミッド構造の中にある「官僚の出世」には何ら影響をもたらしません。
むしろ、国会の答弁や立法などを官僚が事実上担っている面も多分にあるために、政治家は頭が上がらず「官僚政治」とも言われているわけです。
これはある意味選挙において政権交代が起きても、「官僚的な政権交代は起きていない」状態とも言えます。
癒着や天下りと言った中国の王朝時代からあるようなことが未だに続いているわけです。
一方で「政権担当能力が無い」と言われている政党が担ってもそんなに「国が壊れない」と言った要素もあります。
※ただしアメリカの場合は政権がコロコロ変わって大転換しても人材が2つの政党に集結しており、どちらも一定以上の政権担当能力があるためにこのデメリットはありません。
質問者:
だから最近はその中でも他の省庁の予算も握っている財務省がやり玉に挙げられているというわけなんですね……。
筆者:
ただ、財務省は予算をどう減らすかどう増税するかぐらいしか官僚の評価指標が無いためにある意味「誠実に」行っているわけです。
ですが「誠実」がゆえに国民を不幸にしている側面も否めないという事です。
◇今回の注目の大統領令
質問者:
話は戻りますけど、今回の1日の間のトランプさんの大統領令にはどのようなものがあるのでしょうか?
筆者:
〇アメリカ国内政治向け
・メキシコ国境の国家非常事態を宣言
・アメリカとメキシコに面する「メキシコ湾」の名称を「アメリカ湾」に、アラスカ州にある北アメリカ大陸最高峰の山「デナリ」の名称をかつて呼ばれていた「マッキンリー」に戻す
・麻薬カルテルをテロ組織に指定。
・不法移民の取り締まり強化と犯罪歴のある移民の大量送還を表明
・国籍付与の出生地主義制度廃止
・“議会襲撃事件”で訴追の支持者ら約1500人に恩赦
・「TikTok」の米国内での禁止につながる新法について、適用を75日間猶予
・政府職員のリモートワーク廃止
・性は男性と女性のみ、多様性・公平性・包括性(DEI)に関する政策を終わらせる
・言論の自由を回復して連邦政府の検閲を終わらせる
・「政府効率化省(DOGE)」を設置(経費削減や組織改革など実行する公的権限はほとんどない。)
・死刑制度の適用拡大
〇国際的な事柄
・エネルギー生産の増加を約束(アラスカの資源開発規制の撤廃)、
・「パリ協定」を含む全ての環境枠組みからの離脱
・WHOからの脱退を発表(新型コロナでの中国への忖度による不信)
・経済協力開発機構(OECD)加盟国を中心とした国際課税ルールを米国には適用しない(法人税の最低税率15%を事実上破棄)
・アメリカ対外支援の90日間の停止と見直し
と言った感じで比較的公約として掲げていたことは初日から発動しました。
※ここまで政策が変わって信用が損なわれないのはやはりアメリカが超大国であることの証左であると見ることも出来ます。
質問者:
この大統領令と言うのは発動した瞬間に確定しちゃうんですか?
筆者:
すぐさま実効性が出るものと出ないものがあるようです。
例えばWHOや気候変動枠組みからの脱退は年単位での期間が必要です。
野党や企業、市民団体などが大統領令の無効を求めて提訴することも少なくなく、裁判所で違憲判決が出れば、やはり大統領令は効力を失うことになります。
今回であれば「国籍付与の出生地主義制度廃止」については全米各地で憲法違反であると早速提訴されています。
また予算が多額に必要なモノに関しては下院議会を通過しなければ、実施できないので事実上の無効になります。
それに対して不法移民の取り締まり強化や恩赦と言った大統領の一存で決まることに関しては直ちに効果が出ると言っていいでしょう。
質問者:
なるほど、政策ごとの要素によって色々と変わってくるんですね。
一方で言われていながら実行されなかったこともあるようですが……。
筆者:
「トランプ関税」の発動や国内減税、EV補助金の廃止、仮想通貨関連の大統領令などは出してきませんでしたね。
一番注目された関税については初日に発動しなかったので、株価としても大きく動くことはありませんでしたね(トランプ仮想通貨だけは暴騰したようですけど)。
今後は「外交カード」として使っていくことになると思います。
関税は例えメキシコやカナダにかけられたとしても、自動車部品工場などがあったりするために日本経済に影響が出かねない状況にあります。
また、ロシアとウクライナに関する停戦は「24時間以内」から「半年以内」に変わりましたね。
恐らくはロシアが「占領したい地域」と言うところまで来ていないんでしょうね。
プーチン大統領がどこまで占領したいのかは不明ですが、要望する地域まで到達しなければ交渉のテーブルにも付かないと思います。
◇日本に対する影響
質問者:
確かに海外に関することはそこまで動かなかった印象がありますね。
「WHO脱退」は流石にインパクトがありましたけど……。
筆者:
選挙戦途中で共闘したロバート・ケネディ・ジュニア氏の影響は大きそうですね。
日本はアメリカが離脱した国際枠組みにおいて「ATM化」されないか心配になります。
更に過去のトランプ氏本人や側近の発言からするに米軍駐留のための金銭的な負担の増加を求めると思います。
その際に日本政府はしっかり交渉できるのか? が非常に重要になります。
負担を増やすのであれば今の米軍に対する特権的恩恵は全廃ないし部分的廃止、
日米地位協定、日米合同委員会の見直しなどを求めていく必要があります。
質問者:
トランプさんは「アメリカファースト」と言うだけであって日本に対してプラスのことをしてくれるわけでは無いですからね……。
筆者:
他国の大統領や首相が日本を救ってくれるという安易な考えは捨てていかなくてはいけませんね。
確かにアメリカが弱くなり過ぎるのも中露が増長するので困るのですが、
アメリカが自由奔放にやって日本が何もしなければ「草刈り場」が加速するだけになります。
トランプ氏は「ディール(取引)」を仕掛けてきているのだという事を忘れてはいけません。
「ハイハイ」と言う事を聞いているだけだと気が付けば取引できるものを安く叩き売りしている可能性もあります。
日本は日本国民でしか救うことはできないんです。日本国民一人一人の意識向上を行う事が非常に重要になっていくと思いますね。
質問者:
円安が是正されて国民の生活が改善するという事は無いんでしょうか?
筆者:
確かにトランプ氏は「ドル高過ぎる」「日本は為替操作国だ」などと言う発言を過去にしていたことはありました。
ただ、トランプ氏とすればアメリカ製品が海外で売れて自国産業・雇用が守られれば「円高・ドル安」に拘らないと思うんですよ。
関税だけでその目標が達成できるのであれば、関税を引き上げて終わりと言う可能性はあります。
一方で、減税も宣言しているために再びアメリカの景気過熱からの円安傾向になる可能性もあるのではないかと思います。
今の増税路線、新NISAによる海外流出投資政策を推進する政府の政策を考えたら、日本企業が買収されることはあっても、中々日本円に投資が集中することは考えにくいのです。
長期的には円安になりますね。
質問者:
全ては日本がケチであることと社会保障制度のせいで現役世代が苦しむシステムだからですか……。
筆者:
結局のところそうなります。日本国民全体としては非常に血の汗を流しながら奮闘していると思いますけど、政治が酷すぎるのだと思います。
◇日本の政治家に足りない要素
質問者:
でもいくらアメリカなりの政権交代があるとは言え、ここまで大きな転換と言うのは中々無いのではないですか?
筆者:
僕はアメリカの共和党も民主党もそれぞれ方向性は違いますが、
「自分の国を良くしよう」という信念と覚悟は感じます。
民主党の意見に関して僕の視点では賛同できない政策も多いですが、人権擁護や環境問題重視など「理念の方向性」には一貫性がありますしね。
そこに共感する方がアメリカで約半数近くいるという事です。
対する共和党は特にトランプ氏が中心になってから「実利」を重視している印象で、
実りが無い政策に関しては次々と転換していっている感じですね。そこに「冷たさ」を感じるかどうか各々の価値観次第と言うところです。
そもそも政治はある程度時間が経たないと「この政策は合っていた」と分からないことも多いんですよ。
そのためにその時点で「良いと思われたこと」を全力でやるしかないように思います。
質問者:
確かに、感染症の蔓延、戦争の勃発など誰もが予想していなかった大きなことも近年立て続けに起きましたからね……。
筆者:
ただ、それを考慮したとしても日本の政治家の方々は「良くしたい」と言う「信念」があまり政策面から感じられないんですよ。
言葉だけではいくらでも言いますけどね。どうも薄っぺらい印象で聞こえてしまいます。
追及されても言い訳に終始し、自分達の利権を守ることが一番大事、予算の審議も官僚が出した案をほとんどそのまま通過。
コロナ対策も諸外国と比べればケチ。
こんなことで国全体が良くなるはずが無いです。
質問者:
思い切った方策を全力でやり切る意思は無いですよね……。
どれも前政権から引き継いだものばかりで……。
筆者:
ステルス増税や事実上の移民など「徐々に悪くしていく政策」をちょっとずつ改悪していっている印象を受けます。
日本人は真綿で首を絞められていっているような状況なんです。
今一番注目されている国民民主党ですら「相対的に見たら良い政策」程度で、
その信念を曲げずにいけるかも分かりません。
減税による貨幣発行による信用創造はインフレリスクがあるのも否めない上にこれまでの既存の「プロパガンダ」に真っ向から対立するために「覚悟」が必要になります。
それに対して増税はこれまでの政策を続けるだけなので「楽」である上に「お仲間にお金配り」もできる特典も付いているわけです。
質問者:
よほど強い意志が必要なんですね……。
筆者:
減税を頑張ろうとしている政治家は国民側から応援の声としてサポートしていく必要があります。
今で言えば玉木氏が踏ん張らないと103万円の壁が178万円に上がることは無いです。
京都大学の藤井聡教授によると所得税の壁が178万円まで上がれば5%消費税減税に相当する減税になるようなので、何としてでもここは返済不要の「真水国債」で頑張って欲しいものです。
という事でここまでご覧いただきありがとうございました。
今回は、
アメリカは官僚機構まで政権交代するために抜本的政策転換がやりやすいこと。
日本は「立法行政だけ政権交代」の状況なので根本的な政策は変わりにくいこと。
トランプ氏とはディールするつもりで外交を行うべきであること。
日本の政治家は「信念」や「覚悟」が足りない。
という事をお伝えしました。今後もこのような政治・経済、国際情勢について個人的な意見を述べていきますのでどうぞご覧ください。