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可愛い生徒たち

「嵐山源隰門師匠、大変、驚きました。ご無沙汰しております」と河野モンテスキューは言って合掌をすると頭を下げた。


「元気そうだな」


「はい、お陰様で元気です。師匠、ラーメン屋は大丈夫ですか? 今日はオープンの日ですよね?」


「ラーメン屋は大丈夫だ。今は少しばかり俺のカミさんに任せている。今は具材の買い出しに来ていてね、その帰りに少し道場に寄ってみようと思って来てみたんだよ」


「それはそれは、師匠、お忙しい中どうもありがとうございます。私は今日は50人の生徒たちに枯葉キックを教えています。隣のクラスでは安達ゲルマニウム先生が枯葉拳廻し蹴りを教えていて、その隣のクラスの脱腸昌太だっちょうまさふと先生が枯葉拳の突きを教えています。大広場ではパンドラ隆之先生が200人の生徒たちに枯葉拳の組み手を教えている所です」


「分かった」


「師匠、もし良かったら、時間がありましたら、枯葉キックを生徒たちに披露してくださいませんか?」


「よし。やろう」


「ありがとうございます!」河野モンテスキューは嬉しそうに笑うと一礼をして合掌をした。


「おい、白帯の田中辰雄! 嵐山源隰門師匠の枯葉キックをよく見ておけよ!」と河野モンテスキューは気合いを込めて田中辰雄の背中を叩きながら言った。


「はい! 河野先生! 勉強します!」真面目な田中辰雄は真剣な顔をして言うと俺に向かって頭を下げた。


「皆、よく見ておけよ。これが枯葉キックだ!」


俺は左手でハゲ男をアイアンクローしたまま素早い枯葉キックを出した。枯葉キックとはな、切り裂くような素早いキックなんだ。チンタラチンタラする柔いキックではない。空気を切り裂き、敵の肉や骨を切り裂くような素早いキックを枯葉キックという。


生徒たちは皆、目を丸くして驚いていた。初めて本物の枯葉キックを見たのだからそうなるのも仕方ない。悪いがさっき見せた河野モンテスキューの枯葉キックは、まだまだ未熟だ。それなりの一定のレベルは超えてはいる。だが、まだまだ甘い。


「さ、さ、さ、さすが、嵐山源隰門師匠です」河野モンテスキューは合掌して一礼すると静かに引き下がった。


俺はハゲ男をアイアンクローしたまま枯葉キックを連発した。生徒たちに枯葉キックを極めて欲しいという親心からだった。


俺は左手でハゲ男をアイアンクローしたまま、ひたすら枯葉キックを200回連続で披露した。


枯葉キックの動きは激しい部類に入る。ハゲ男は力なく弱りきってグッタリしていたが、そんなのは別にどうでもいい事なのだ。何故ならばハゲ男の人生は無駄な人生だと思うからだ。悪い奴は生きる資格なしなのだ!!


門番の佐々木ホロシ、枯葉拳ブルー帯の河野モンテスキュー。白帯の田中辰雄くん等は、一切、ハゲ男について何も聞いてはこなかった。ハゲ男に視線すら投げ掛けなかったし合わせもしないでいた。ハゲ男が存在していないように俺だけを見ていた。『俺はハゲ男という人形を手にぶら下げている大人に見られているのかもな』と思ったりもしたが、そうではなくて、生徒たちによる対応、つまり、一線を超えてはならないという気持ちが伝わってもいたのだ。だからこそ、誰一人としてハゲ男について質問もしてこないんだと思う。ただし、心の中では『あのハゲ。天下の嵐山源隰門師匠に何かしらヤラかしたんだろうな。馬鹿な奴』という気配は漂ってはいた。


「こんなところで枯葉キックを終える」と俺は枯葉キックを止めると生徒たちは拍手をした。


「俺は今からラーメン屋に戻るが聞いてくれ。枯葉拳は練習あるのみだ。ひたすら練習、練習、練習だ。迷わずに練習するんだぞ。今度、ラーメンを食いに来いよ。全員、無料だからな」


生徒たちは喜びの顔を浮かべてお互いを見合った。


「おい、僕もタダにしろ! あっ、痛たたたたたたた!」とハゲ男が小声て言ったので俺はアイアンクローの圧力を上げた。


生徒たちはハゲ男を見て見ぬフリをするのに必死だった。『フフフフフッ。可愛い生徒たちめ。フフフフフッ。近いうちにラーメンを奢ちゃうぞ。フフフフフッ』と俺は険しい顔をしながら思った。


俺は嵐山源隰門枯葉拳総本山道場をあとにした。


俺はハゲ男のアイアンクローを左手から右手に持ち替えた。左手を上げてタクシーを停めるとドアが開いた。


タクシーの運ちゃんは男性だったが怪しい雰囲気を醸し出していた。


「いらっさぁ〜い。何処まで行くのよん?」


「都内にあるラーメン屋まで頼むよ。場所は肩楽かたらく5丁目359番地だ」


「ウッフン。りょーかい」


タクシーの運ちゃんは何回もバックミラーでハゲ男を、それとなく見てはいたが何も言わないでいた。


「最近、寒くなってきたわよねー」とタクシーの運ちゃんは言った。


「そうだな」俺は窓越しに秋の空を見ながら言った。


「秋って好きー。オータムって最高よね?」


「最高だ」


「失恋の季節でもあるわよね」


「そうなのか?」


「そうよ」


タクシーの運ちゃんは何か言いたそうだった。





つづく


ありがとうございます!

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