体力測定を無双する 1
入学式から一週間が経った今日は、体力測定の日。僕はスポーツだけはそれなりにできるほうだと思っているから、ちょっとわくわくしていた。
「瑠璃ー!!今日楽しみだね」
「う、うん……そう、だね?」
そうだった。可愛くて完璧に見える瑠璃だけど、運動は得意じゃなかったんだ。厳密に言うと運動全般が苦手というわけじゃなくて、陸上系の競技に弱い。まあ、そんな瑠璃のギャップも可愛いからいいんだけどね?
「はる君…?黙ってどうしたの?」
「はっ、な、何でもないよ?」
「ふーん?どうせ私と違って運動も万能なはる君にはこの憂鬱さはわかんないと思うけどね!!ふんっ」
そう言いながら少し頬を膨らませて拗ねている瑠璃の可愛さに内心悶えつつも、少しだけ反論する。
「ねぇ、瑠璃?」
「なにさ、はる君」
「僕だって、最初からこんなに運動が好きだったわけじゃないからね?」
「え?」
「なんなら僕がこんなに頑張れるきっかけをくれたのは瑠璃だからね?覚えてないと思うけど」
「え!?気になるじゃんかー!」
「教えなーい!」
そう、僕だって最初から運動が好きだったわけでも得意だったわけでもない。きっかけは、小2の頃、運動会のかけっこで1位を取った時だ。その時に瑠璃に言われた「うんどうできるはる君かっこいい!すきー!」っていう何気ない一言があったから未だに毎日欠かさずにトレーニングをしているんだ。瑠璃には内緒だけどね?
そんなこんなで、それぞれの思いを抱えながら体力測定が始まろうとしてたんだけど……
「はるはるー!るりるりー!えへへっ、どやー!」
何よりも驚いたのは、僕のでも瑠璃のでもなく、珊瑚さんの成績だった。
「え?珊瑚さん全種目満点だったの!?」
「あ、そうだよな。2人は珊瑚が運動神経抜群なこと知らないもんな。何なら俺よりも運動神経はいいぜ」
悠真のその言葉に僕達は驚くことしかできなかったけど、張本人の珊瑚自身は何も気にしてない感じだった。
そして、それを現すかの如く珊瑚が話しはじめる。
「んー?なになにー?うちの話ー?こんなんちょっとやればちょちょちょっとできるやーん?」
「くっ」
「あー、珊瑚さんごめん、瑠璃こういう系苦手でさ」
「そうだったん!?にしては全部平均以上じゃない?これで苦手はガチな人の反感買うよ?」
「くぅっ、でももっと上手くやりたいの!」
「そかぁ、ならうちと一緒に何かする?」
「え!?いいの!?」
「うん!いいよー!だってうち達友達じゃん!」
「うん!ありがとう!!」
仲良くしている2人を見て僕と悠真はほっこりしつつ、次は僕達男子の番だった。
「お互い頑張ろうね悠真」
「おう!運動なら遥輝ともいい勝負できるだろ」
そして、星光学園史上最もハイレベルな体力測定(男子の部)が、幕を上げる……
デデドン!なんか、ゆるふわ系の子が実は運動神経抜群ってよくないですか?
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何卒…何卒……