お姫様は幼馴染(遥輝) 1
夏休み初日、僕はいつもと変わらず理玖さんのお店にバイトに来ていた。
「今日もよろしくお願いします!」
「うん、よろしくー!いやぁ、遥輝くんがうちに入ってくれるようになってからこの店の売り上げも伸びてきててこっちとしても嬉しいよ」
「いやいや、僕は何もしてないですよ?」
「それがそんなことはなくてさ?遥輝くんは見た目の良さが正統派イケメンだからか、前以上に若い子の来店率が上がってるんだよ?だから遥輝くんのおかげだよ、ありがと!」
さすがにこれ以上謙遜するのも気が引けるので、今回はその言葉を素直に受け取ることにした。
「じゃあそういうことにしておきます!ありがとうございます!」
「うん、それでいいんだよ!もっと自信持っていこう!あ、それと今日はボクの婚約者が店の子連れて遊びに来るらしくて遥輝くんのこと楽しみにしてるみたいだからよろしく!」
「よろしくとは!?」
と、ツッコんだ時には既に理玖さんは裏に消えてしまったので、なんだか嫌な予感がしつつも今日の仕事はスタートした。
「ようこそいらっしゃいました、お姫様。さぁ、僕達と共に素敵なひと時をお過ごしください」
始業してしばらく経ったけれど、理玖さんの婚約者さんはまだ来る気配はなさそうだった。
(うーん、もしかして理玖さんのからかいだったのかなぁ?いいんだけど)
そんな事を考えながら、新たなご来店のお客様(お姫様)をご案内しに行って僕は固まった。
「ようこそお越しくださいましたお姫…様!?」
「え、はる君!?」
「ちょ、瑠璃!?どうしてここに!?」
「わ、私は店長の悠姫さんに誘われたからここに…」
まさかだった。理玖さんの婚約者さんと共に来たのは、他でもない瑠璃だったんだ。にこやかにしようとするけど、驚きで表情が引きつってしまう。
「ま、まさかこんな形で瑠璃に会うとは……」
「私もびっくりだよ!?」
「ふふーん、そういうこと?もしかして私、お邪魔だったかな?」
「「そんな事ないです!!」」
しれーっと消えようとした瑠璃のバイト先の店長さんを必死に引き止めたのだった。
「あ、あちらのお席をご利用ください」
なんとか気持ちを落ち着かせてご案内を済ませると、僕は足早に裏へと向かった。
「理玖さん!!?な、なんで婚約者さんと一緒に瑠璃が…あ、僕の知り合いが一緒にきてるんですか!?」
「あ、あの子遥輝くんの知り合いだったのか!それは、完全に予想外だよ?確かに悠姫に、『うちにイケメン入ったから見においで』とは言ったし、悠姫の店にすごい可愛い子が入ったっていうのも聞いてたから連れておいでとは言ったけどね?」
「本当に知らなかったんですね?」
「あ、圧が怖いよ…?」
「うぅっ、めっちゃ恥ずかしいんですけど…」
「大丈夫大丈夫!いつも通りでいいんだよ」
僕は、そんな楽観的な理玖さんを少し睨みつつフロアに戻るのでした……
さぁ、かっこいい遥輝は見られるのでしょうか?
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何卒…何卒……




