魔人は召喚先で大好物のラーメンを広めた♪
チャララ~ララ、チャララ~ラララ~~~♪
寡黙な男が屋台を引きながら笛を吹く。
そして広場の端に来ると屋台の周囲に椅子を並べた。
「おやっさん、一杯頼む・・・・・」
鎧を着て腰に剣を下げた兵士が数人、屋台の周囲を取り囲んで言った。
ラーメンの屋台の鎧姿の兵士、ミスマッチ感もここに極まっている。
「こんな暑い中に兄ちゃんも好きだな」
「おやっさんのラーメンが旨いからだ、俺はチャーシュー麺で!」
腹を減らした兵士が屋台を取り囲み始めた。
「すまんが私にも一杯頼む・・・塩だ!」
「ヘイ♪」
明らかに貴族と分かる身形の男が兵士達に混ざって座った。
「兵隊さんに混じって平然と座れるなんて、肝っ玉の据わった貴族様ですね?」
「これでもヴァンデラス家は武門の家、戦時には兵士達と一緒に火を囲んで食事をする・・・皆も私の事など気にしないでくれ」
周囲の兵士に気を使って言うが逆に緊張されてしまう、ヴァンデラス家はこの国の公爵家なのだから!
「フォークとスプーンを用意しましょうか?」
「いらん、ラーメンは箸で食らう物だ・・・レンゲも不要だ」
ヴァンデラス公爵は鼻を鳴らして呟くと、出されたラーメンを猛然と啜り瞬く間に食べ切って仕舞った。
「お見事・・・惚れ惚れする様な食べっぷりですな♪」
「替え玉だ!」
「ヘイッ♪」
器を一旦下げると寸胴の隣に有る平鍋の湯に浸ける・・・スープが冷えない様にだ。
そして手早く麺を茹で丼に入れると、丼の外を手拭いで拭って貴族の前に置いた。
その麺を再び啜り込むと今度は丼に口を付け、スープも残さず平らげた。
「オヤジ、幾価だ?」
「中銀貨1枚に小銀貨3枚です」
「安いな・・・」
ヴァンデラス公爵は大金貨を一枚カウンターに置いた。
「釣りは要らない。貰い過ぎだと思うなら、暑い中で職務に励む私の同僚たちに振舞ってやってくれ」
「ヘイ♪」
兵士たちの歓声を背に・・・公爵は爪楊枝を咥えながら悠然と去って行く。
オルブライト女王リディアに召喚された魔神タカミザワは、いったん禅譲された王位をリディアに戻すと彼女に国政を執らせた。
すでに自分では名乗ってもいないのに神に祭り上げられ、世界の文明を忙しく発展させソッチの方が忙し過ぎるからだ。
世界は大分 様変わりし今や女王リディアは世界を発展させた魔人の巫女的立場に成っている。
「公爵・・・」
「閣下・・・」
公爵が閣下と呼ぶのは魔神タカミザワただ一人、
「ついにあの店に眼を付けたか・・・・・」
「戦役で脚を失った兵士に仕事を与えて頂き・・・・・」
タカミザワは面白くも無さそうに言う。
「アイツだけで無い・・・意欲のある人間にはレシピは公開している。ところでこの書類に目を通してくれ・・・・・」
オルブライトに吸収された国の元大臣が不正蓄財している情報・・・
「御神託 賜りました!神の名の下に神罰を代行させて頂きます!」
ヴァンデラス公爵が飛ぶ様に去って行くと、マイトは屋台の方に歩みを進めた。
「実験的に塩を広めてみたが中々盛況の様だ・・・醤油・味噌・豚骨そして塩と広めたから、次は肉味噌でタンタンメンを広めて見ようか・・・んっ?」
屋台のオヤジが貴族と取り巻きを叩きのめしていた。
如何やら順番を守らず、市民や兵士を押しのけて食べ様としたらしい。
ただオヤジも元軍人で腕っぷしは強い。
そう言えば先日も高位貴族が屋台を無理やり自分の屋敷に連行し様として、その屋敷が跡形も無くなるまで落雷し続けると言う謎の天災が・・・・・
「何が天災ですか、マイト様の仕業なのに!」
いつの間にか背後に並んでるのはローブで身を隠した❝お忍び❞仕様のリディアだった。
「リディアは随分 生意気に成った・・・Hなお仕置きパート2だ!」
「ゴメンなさいっ、もう逆らいませんから首筋にキスするのは御許し下さいっ!」
リディアの背後でメアリ達が呆れ顔だ。
「ところで・・・お忍び仕様なのだろうが、暑くは無いのか?」
「魔法で冷やしてるので反って涼しいですよ♪」
もっともリディアがお忍びし様のローブ姿でも、背後に白銀の鎧を着けたメアリ達が続いてるのでは意味が無いと思うのだが・・・・・
「マイト様、見て下さい!何やら様子が・・・・・」
執事風の壮年の男性が、屋台のオヤジに何か話し込んでいる。
「別に珍しい風景じゃない、大っぴらにラーメンを啜れない貴族達が屋敷に来てくれないのかと頼み込んでるんだ」
まあ仕方無い・・・ラーメンは啜って食べると広めたが、そうして貴族が食べるのは少しハードルが高いだろう。
リディアを追い返すのも可愛そうなので、メアリ達と一緒に空き待ちの列に並ぶ。
案の定リディアの正体はバレバレで、先を譲るろうとする者が現れた。
「お許し下さい・・・魔神タカミザワ様は公正な方、権力を持った私が後から割り込んだ何て知られたら、城に戻ってからHなお仕置きをされて仕舞います!」
こうしてボクの悪評がマタ広まった・・・帰ったらHなお仕置きパート3だな!
ここから先は、もうちょっとHなお話・・・・・
屋台のオヤジは客が引けてから、家とは逆の貴族の邸宅街に向かった。
とある貴族の屋敷の裏口で警備の物に声を掛けるが、屋台は小さな裏口から入れないので表に廻らされる。
すると待ち構えてたのは貴族の子女が数人と屋敷の使用人達、使用人の方は口止め料の代わりに御馳走に成るらしい。
「良いこと、この事は社交界に行ってる お母さまには絶対内緒よ!」
貴族のお嬢様が皆に言い聞かせているが、そう上手く行くモノかなと屋台のオヤジは疑問に思った。
こう言う事は良くあり貴族や富豪に呼ばれる事はあるが、オヤジはタカミザワの世界に感銘を受け職人気質、通常営業時間終了後かその前で無いと絶対に召集に応じない!
まあ呼び出された手間賃も弾んでくれるしオヤジは良いのだが・・・・・
「お母さま許してェ~~~ッ!」
お嬢様はお母さまからスカートを捲られ、お尻を直接 叩かれている!
それを見守るお嬢様の友人一同と使用人、口止め料を貰ってるから共犯で連帯責任だが、お尻叩きは流石に首謀者のお嬢様だけである。
「あんなにイイ匂いをさせて、バレないとでも思ってたの!」
そう匂いでバレる・・・考えたら当然だ♪
お尻を叩かれ泣かされてるお嬢様だが、お母さまは手加減してくれてるので思ったほどダメージは無い。
むしろ皆に見守られる中でオシリを出され折檻されるのが精神的にキツい!
「私も食べて見たかったのに、自分達だけで食べるなんて狡いわ!使用人の皆さんにまで振舞ってるのに・・・お仕置きよっ!」
「えっ、お母さまも食べたかったのですか?きゃんっ!」
お尻を叩かれ悲鳴を上げながら問い返すお嬢様、
「お・・・お母さまは社交界で美味しい物食べて来てるんじゃ?イヤンッ!」
「社交界でガツガツ食べられる筈無いでしょ!どんなに美味しそうな物が並んでても、味見程度にしか齧れないのに・・・・・」
社交界なんてそんなモノである。
お嬢様だけでなく、一緒に食べていた友人達も社交界の現実を初めて知った。
「ゴメンなさい、お母さま!次にオヤジさんを呼ぶ時には必ず御誘いしますから、どうか御許し下さいませ・・・・・」
「絶対ですよ!」
お母さまも如何やら前から噂のラーメンを食べて見たかったらしい。
だが貴婦人が貴婦人仲間や使用人に、如何すれば自分も食べられるのか聞くのは躊躇われたらしい。
お尻を真っ赤に腫れ上がらせる事に成ったお嬢様は、お母さまの怒りを何とか鎮めることに成功したのだが・・・翌週!
「オマエ達っ、私だけ仲間外れにして狡いぞ!私だって食べて見たかったのに!!!」
お嬢様とお母さまは二人並んで お尻を出させられ、今度はお父様からお尻叩きの罰を受けるのでした♪