不幸な大学生は事故に遭う。
こんにちは。
拙い文章ではありますが、この物語を楽しんでいただけると嬉しいです。
これから、よろしくお願いします。
思えば、儚い人生だったー。
俺、西城 三月は、トラックにはねられ、朦朧とする意識の中、そんなことを思っていた。
次々に過去の思い出が蘇る。
幼稚園生の時、初めて動物園に連れて行ってもらい、動物が好きになったこと。
小学校の時、両親と桜並木を歩いて学校に行ったこと。
中学生の時、その両親が病気により亡くなったこと。
そして、高校生の時、好きな人に振られたことー。
(くそっ、なんで、思い出の半分は「悲しい思い出」なんだ)
事故に遭った理不尽にに加え、身体と胸の痛みで、涙が出てくる。
(出来れば...)
溢れないように、目をつぶる。
(出来れば、もっと、幸せに、生きたかった...! )
「其方の願い、聞き届けた」
そんな声が、聞こえたような気がした。
(ん...)
意識が覚醒していく。
(あれ..ここは..)
俺はいつの間にか、見たこともない場所にいた。
一面が光に包まれており、一寸の影もない。
「空間」であるかも曖昧な、とにかく眩しい所だ。
(っというか、俺って死んだんじゃ...!)
自分の体を見てみる。
ー無傷だった。トラックにはねられたのに。あんなに吹き飛ばされたのに。
(...僕の身に起こっていることは、いまいち理解できないが、取り敢えず、「助かった」ってことだよな? )
口から息が漏れる。そうか、俺はまだ、生きているのか...。安心感がどっと出てきた。
その時。
「やっと目覚めたな」
人の声がした。
(誰だ? )
声の主を見てみる。
そいつはー。
銀白の髪、整った顔、見たことのない美しいローブ...。
(いや女神ー! 完全に女神だよこの人ー!)
誰が見てもそう思えるような、「The 女神」だった。
「なんだ、そんなに人のことを見て」
女神は眉をひそめて、そう言った。
そして、
「あ、そうだった。お前には伝えなければならんことがある」
紙を渡してきた。
「見てみ」
何だろうと思いながらも、紙を受け取って、取り敢えず読んでみることにした。
(えーと、なになに..)
『あなたは死にました』
(カ八ッ...! )
バタッ!
あまりにも衝撃的な一文を読み、俺は倒れてしまった。
「だ、大丈夫か! 」
駆け寄ってくる女神。いいやつだ..いや、これを書いたのがあいつなら、悪いやつか..。
「くっ、どうしたんだろうか……八ッ!もしや、文中の[ピーッ(規制済み)]という表現がいかがわしかったのか?! いや、もしくは[パラリラパラ(同)]というやつが人間にとってはタブーな奴だったのか?!……あぁーッ!あれだな!あの……」
(...いや心当たりありすぎだろ!そもそもなんでそういう表現で書いたんだ。分からなかったら、グー〇ルとかで調べればいいだろっ!)
心の中でツッコミながらも、体を起こし、取り敢えず読み進める。
(確かに『死んだ』とは書かれていたが、それなら今の俺は、どういう状況なんだ? )
...そのまま十分程度で、紙を読み終わることができた。
(今、分かったことは、
まず、俺は一度死んでいること。しかし、神によって、生きているのか、死んでいるのか、どっちつかずの状況にまで、「半蘇生」されたこと。
(流石は神様。命を操るなんて、反則も甚だしいな)
次にーこれは、半蘇生されたことにもつながるがー「転生」について。
面倒な説明と意味不明な表現を省いて、それを一言で言うと、「もう一度人生送っていいですよ」、ということらしい。
ただし、違う世界で、違う人として。
ー正直、これは飛び上がるほどうれしかった。僕に、「幸せな人生」を送るチャンスが与えられたのだ。
さなぎを脱ぎ捨てて、広い世界に羽ばたく蝶のように。
僕は、新しい世界で、新しい人生を送るのだー。
そして、最後に。
「転生ボーナス」について。
このシステムは、はっきり言って「すごい」。
なぜなら、転生後の世界で、「特殊能力」や、「反則級ステータス」をひとつ、受け取ることができるからだ。
しかし、もちろんそんなうまい話があるわけない。
能力も、その強さも、「ガチャ」で決められるのである。
つまり、完全な運ゲー。
(すごいシステムだけど...その分怖い)
はっきり言って、このガチャで人生が決まるといっても過言ではない。
異世界というのは、文字通り「異なる世界」。
文化、常識...あらゆることが元の世界と異なっている。
僕にとっては、さぞ生きにくい世界だろう。
しかし、ガチャによって強い能力を得れば、その分生きやすいし、悪い能力を得れば、寿命は短くなる。
運で次の人生が決まるー。
これほど怖いことはない。
そんなことを考えていると、さっきまで一人で騒いでいた女神が話しかけてきた。
「...全部読んだか? 」
恐る恐る尋ねてくる。
「...はい。一通りは」
意味不明な表現はカットして、ね。
「そうか...。」
...少しの間、無言の時間が流れる。
お願いだ。誰かしゃべってくれ。2人しかいないけど。
沈黙を破ったのは、女神だった。
「こ...コホン。えー、あー、なんだ。その...」
しばらくモジモジして、
「悪かったな...。あんな表現で」
「いえ、謝ることないですよ」
すると女神はうれしそうな顔をして、
「そ、そうか..!ありがとう、な」
くっ、かわいいぜ...
そして女神は、
「...では、其方が抱えている疑問に、一つ一つ答えようと思う」
と、言った。