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第六話 ルーエンの王様

「こんにちは!」エルナたちは【花の指輪亭】の扉を勢いよく開けた。


「あら、お昼にここに来るなんて珍しいわね。」【花の指輪亭】の店主ヴァレッタが言った。


「そうなんです。闘技場(コロッセオ)に行って戦おうとしたんですけど、剣闘士(グラディエーター)達は命を賭けて戦ってるみたいで、私にはとてもついていけないと思って。」


「えっ、剣闘士として出場しようとしたの?そんな危ない。闘技場なんて若い女の子が行く場所じゃないわ。」


「そうですよね。ジースさんが勧めてくれたんですけど。」


「ジースが?分かりました。ジースにはよく言っておくわ。こんなか弱い女の子を一人で、あらごめんなさい、レイナさんもいらっしゃるけど、闘技場に行かせるなんて。」


「あはは。いいんですよ。収穫もありましたし。」


「収穫?」


「はい、詳しくは話せないんですけど、収穫です。そう言えば、コロッセオを出るときにラミリス公がコロッセオに入って行くのを見ました。」


「ああ、それは有名な話ね。ラミリス大公は闘技場が好きで、毎日通い詰めているって噂よ。ただ、闘技場で戦いを見るのが好きなのか、それとも強い人を集めているのかは分からないけれど。」


「あ、その話、聞きました。闘技場で活躍した剣闘士をスカウトしてるって。」


「ここだけの話なんだけどね。」と言いながらヴァレッタは他の客には聞こえないようにエルナの方に近寄って小声で話した。


「ラミリス大公は、近いうちに挙兵して、国を乗っとるつもりなんじゃないかって噂で持ちきりよ。闘技場だけじゃなく、世界各国から強い傭兵を集めて私設傭兵団を作っているのは有名な話だけど、その使い道が国の転覆なんじゃないかって噂。」


「反乱を起こして国を乗っ取ろうとしているんですか?」エルナも小声で話した。


「そうなのよ。元々、お兄さんのカサンドラ王とは仲が悪かったみたいだし、そもそもカサンドラ王が即位した経緯も、怪しいところがあるでしょう?ラミリス公はその上のお兄さん、もう亡くなった長男のバーランド前国王と仲が良かったらしいのよ。それで、ラミリス大公は現国王のカサンドラ王に対して恨みを持っているんじゃないかって噂もあるのよ。」


「怪しいところって、何ですか?私この街の生れじゃなくて疎いんです。昔、バーランド国王からカサンドラ国王に変わったという話は聞いたことありますけど。」


「今から7~8年前だと思うけど、バーランド王が失脚したのは、カサンドラ国王が告発したからなのよ。バーランド王が悪魔に乗っ取られたって。誰もそんなことは信じなかったけれど、色々と証拠が出てきて、最後にはカサンドラ王がバーランド王とその家族を処刑したのよ。それで今カサンドラ王が王様を引き継いだの。誰も文句は言えなかったんだけど、自分が王になるためにバーランドを失脚させたという噂よ。まあ、誰が見てもそう思うわよねえ。」


「そうですねえ。次に国王になる人が告発したというのは、国を乗っ取るためと思われても仕方ないですね。でも家族まで処刑するなんて。」


「そう。マーシャ王妃やバルログ王子も国王に加担したってことで処刑されたのよ。」


「加担したって証拠があったんですか?」


「さあ、どうだか私には分からないわ。でもガイア王がまだいてくれたらこんなことにはならなかったと思うんだけど。」


「ガイア王って、誰ですか?」


「あら、知らない?ガイア王は先々代のこの国の王様で、バーランド前国王、カサンドラ現国王、それからラミリス大公のお父様よ。それはそれはしっかりした王様で、その上、物凄い魔法使いだったのよ。もういなくなってから10年以上経つかしら。ガイア王がいてくれれば、王子たちが好き勝手することもなかっただろうし、あんなゾルディアのような都市ができて、魔物がはびこることもなかったんだけれど。」


「ガイア王とゾルディアは何か関係があるんですか?」


「ルーエン一帯は、ガイア王が作った結界で守られていたの。魔物が入ってこれないように。でもガイア王がいなくなってから、魔物がうようよ出てくるようになって。」


「じゃあ、ゾルディアってガイア王がいなくなってから作られた都市で、ガイア王が存命なら存在しない都市だったんですか?」


「多分そうだと思うわ。ガイア王の結界はこの国の中心から10kmに及ぶと言われていたから。」


10kmと言えば、ゾルディアも丸々入ってしまう距離だ。そこまで大きな結界を張るというのは凄いとしか言いようがない。ガイア王は確かに大魔道師であったに違いない。


「そのガイア王はどうされたんですか?」


「ガイア王は忽然といなくなったのよ。理由は誰も知らない。だけど、置手紙があったから、自分の意志でこの国を抜け出したのは間違いないわ。」


「その手紙には何て書いてあったんですか?」


「そんなこと私たち下々の者が知るはずないわ。ただ、そんな噂が立っていたと言う話。これはジースから聞いたんだけどね。」


なるほど、ヴァレッタが情報通なのは、隣の情報屋のジースから色々と情報を仕入れているからに違いない。


「今日も食事とか、情報とか、色々とありがとうございます。また来ますね。」エルナはヴァレッタに別れを告げて【花の指輪亭】を出た。


「さてと。レイナ。今日はたくさん情報が入りすぎてよく分からないわ。でも決めたことが一つある。ゾルディアに行こう。」


二人はすぐに準備を行い、明るいうちにゾルディアに向かって出発することにした。


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