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第三話 ハインツビール

三人は街を歩き、必要なものを調達し、異臭の原因となっていたクマの生肉を捨てた。ゴウトとバトは服を買い、すぐに着替えて小奇麗になった。本当は風呂にも入りたかったが、マテウスは二人を酒場に誘ったので、付いていくことにした。


三人はこの街で最も有名なビールを注文した。ハインツ王国はビール造りで有名な国で、各国に輸出している。その中で最も売れていて、美味しいと評判のビールがハインツビールだ。三人はハインツビールを一気に飲み干した。ゴウトはこれまでビールを飲んだことはなかったが、疲れていたせいか、このハインツビールが世界で最も美味しい飲み物のように思えた。


「さて、ゴウト、お前は仲間にはならねえと言ったが、手伝いくらいはしてくれるんだろうなあ?」マテウスが言った。


「俺にできることなら、何でもするよ。」ゴウトが気安く請け合った。


「じゃあよ、俺は用事があってすぐにはルーエンには戻らねえが、もしルーエンに戻るようなら、色々情報を手紙で送ってくれねえか?」


「そのくらいなら、問題ないよ。」


「助かるぜ。今ルーエンがどんな状況で、いつ事を起こせばいいか、情報がないと何も分からないからな。」


「で、どんな情報が欲しいの?」


「国の情報だ。ルーエンの国王周辺の情報、バーンやラミリスの動向、それから、ザンジバルやガーランド、もし可能ならサリオンの動向も知りたいところだ。」


「ちょ、ちょっと待って。知らない名前が多すぎてついて行けないよ。」


「ああ、そうだな。後でメモを渡すが、国王周辺の重要人物だ。一応話しておくが、まだ俺はその誰とも仲間じゃねえ。だが、バーンとグラン公はいずれ仲間にするつもりだ。」


「ええっ、バーン騎士団長と?盗みに入ったのに?」


「ああ、要求を飲まざるを得ないだろうさ。俺には切り札があるからな。」


「あっ、盗み出した文書のこと?」


「それもある、が、それだけじゃねえ。」


「分かった。で、グラン公はどういう繋がりがあるの?と言っても知らない人だけど。」


「ああ、グラン公爵とバーン騎士団長はバーランド前国王の一派だ。そいつらを俺の仲間にする。」


「他の人は?」


「カサンドラ国王派の人間と、ラミリス大公派の人間だ。特にカサンドラ現国王は倒すべき敵になる。」マテウスは誰にも聞かれないように小声で話した。「お前が捕まると芋ずる式に俺の居場所がばれるからな。絶対に捕まるなよ。」


「ああ、分かった。」


「特に魔道士サリオンは鼻が利く。怪しい行動は控えることだ。表向きの情報だけでいい。裏を取る必要もない。」


「分かった。」


「これで俺も気が楽になったぜ。こちらでも準備を進める。あと1か月と言ったところだ。俺が行動を起こした後は、手紙は送らなくていい。俺からの手紙も捨てて構わない。」


「分かった。」


「もしかすると、何か用事を頼むかも知れねえ。無理だと思ったら引き受けなくてもいい。だが、できれば引き受けて欲しい。」


「何だよ、それ。どっちなのか分からないよ。」


「ははは。まあ、今のところ用事はないからな。もしかすると重要な用事が出来るかも知れねえしな。」マテウスは二杯目をあおりながら言った。「ところで、お前たちが飛ばされたっていう扉、あれはいよいよかも知れねえな。」


「いよいよって、何が?」


「戦争だよ。いよいよゾルディアがルーエンを攻めようとしているのかも知れねえなって話だ。」


「何で突然戦争の話になるの?」


「分からねえか?お前たちを遠くに飛ばせるんなら、誰だって飛ばせるんだろう?」


「うん。そうだと思う。」


「だろう?つまり、ルーエンを超えて、ハインツ王国の中間地点まで一瞬で飛ばせるとしたら、背後からルーエンを攻撃できるってことさ。突然背後から挟撃されてみろ。ルーエンの軍隊なんて一瞬で壊滅状態になると思うぜ。」


「あっ、そうか。そういう使い道は思い浮かばなかった。」


「もしその扉がどこへでも飛ばせるとしたら、これほど強い兵器はないだろうさ。」


「どこへでも、というこことはないらしい。多分、入口と出口はペアになっていると思う。入った入口が同じなら、多分同じ出口に出るんじゃないかと思う。」


「もし、出口と入口が決まってんなら、その扉を壊せばいいだけの話だがな。しかし、それを量産されたら、もう手の施しようがないな。」


「俺が見た扉は二つ。一つは俺の故郷の近くの洞窟にあった。これは俺が破壊した。もう一つはルーエンとハインツの中間あたりの洞窟。これは壊してない。」


「そうか。この情報はいつか役に立つかも知れねえな。もし俺が王になったらな。」そう言ってマテウスは二杯目を飲み干した。


「あるいは、俺が動く前にゾルディアが動き出すかも知れねえが。そうすると俺の予定も狂うな。」最後は独り言のように言った。

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