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ガーディアンルポ01「最終列車」■第2回コマンドは国鉄福知山線列車の客を調べ始まる。何人かの乗客がROW星人だった。

■ガーディアンルポ01「最終列車」■第2回

(1979年作品)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/



■第2回 ■

トレインジャックを果したスペシャルコマンド部隊の隊長は、クルスという名前だ。クルスは、各コマンドに命令を下していた。彼は三十才台の頑強な男だ。

「車掌は車掌室に閉じ込めました」


「よし」

「運転手は我々の命令を忠実に実行しています」

「よし、基地までこの速さで二時間の距離だ々。時間はあまりない」


「クルス隊長、連絡を基地にとってよろしいでしょうか」

「いかん。まだ速絡はとる痙。ROWの円盤機に発見されたらおしまいだ」

「了解」

「捜索の方は進んでいるか」


「はい、現在、第て第二車両の調査を終えた段階であります。まだJとROWは発見されていません」


「よし、ひきつづき行なえ」


 サイトウの通路をはさんだ向い側の男が落ちつかない様子だ。いらいらしている。

四十才くらいだろうか。


男は隣りに小さな女の子を坐らせていた。かわいい。子供は眠りについている。


 サイトウ達が乗っている第四車両ヘスペシャルコマンドがやってきた。

 先刻の落ちつきのたい男が立ち上がり、後部へ走ろうとした。幼ない女の子の手をにぎりしめている。スペシャルコマンドが男をつかまえようとした。


 男は女の子をスペシャルコマンドヘ投げつけ、通路を駆けだす。

乗客はただあっけにとられて見ている。


 コマンドがレイ=ガンを構えた。背中に命中した。

が男はひるまず、後部の扉にたどりついた。扉の所にいたスペシャルコマンドが、彼を押しとどめようとした。

 放電音がした。


 彼がはがいじめにしたスペシャルコマンドが黒こげになり、車両の連結板の上に倒れた。男が電気ショヅクをコマンドに与えたのだ。


 男は列車の窓を開け、片手を上空へとさしあげた。スペシャルコマンドが、列車全体にはりめぐらしていた「バリヤー」が一時的にやぶられた。


 男の手の先から光線が発せられた。

同時に車両からコマンドから数丁のレイガンが発射される。


男の体の三分の一が真黒になり、やがて消え去った。

 残りの体の部分はくずれてきて、ぐにゃとした偽足風の手足に変ぼうしつつある。


 叫び声をあげ、気を失う女性も出てくる。

 男が投げ出した女の子を、スペシヤル=コマンドが介抱している。


「J、J、しっかりして下さい」

「J、あなたがいなければ、我々はどうなるというんです」

 サイトウはイヌイにささやいた。


「どういうことだろう。これは」

 イヌイはもの知り顔で言った。

「こりゃ、あんた。我々はスペースオペラの世界にはいりこんだようですぞ」

「スペオペですって、なら私はキャプテンフユーチャー―がいい」


「冗談をいっている場合ではないのですぞ、サイトウさん」

 二人の目の前を死体が運ぱれていく。肉片の端がペタとサイトウの顔にふれた。

「うわっ」


 サイトウは、その死体のに訟いと、触感でとびあがり、えづき始めた。

前の席の80歳くらいのばあさんはいやな顔をして、文句を言った。


「今の若い衆はいくじが々いのか。死体くらいでどうした。

大東亜戦争の時の大爆撃に比べたら何の事はありやせん」


 サイトウはまだえずいている。

スペシヤル=コマンド達は乗客の調査を再開する。

ガイガーカウンターのような機械を一人一人に直接押しあてている。


 時折、かん高い反応音があがる。

その人をスペシヤル=コマンドは最後尾の車両へと連行していく。


 サイトウの番たった。おどおどしている。

 恐怖の瞬間がすぎる。大丈夫だった。しかしイヌイは抗っていた。

「伺、何をするんだ、君達は。人権無視もはなはだしいぞ。その機械は何だ」


「敵と味方を区別するためさ。お前も見たろう、さっきの男の姿を」

「さっきの男は、一体何者だ」


「ROW星人さ」

「ROW星人だって」

 その時、機械が音をあげた。サイトウの隣にすわっていた大学生風の男の体が反応したのだ。


「こいつらのことさ」

 急にスペシヤル=コマンドが大学生風の男にレイ=ガンをぶちこんだ。


 激しいショックで大学生の体が一瞬の内に変化していた。

きっきの男と同じような体になった。


 サイトウは腰を抜かさんぱかりだった。

 イヌイも歯をがちがち々らし始めた。


 ばあさんだけは落ちついている。口の中で念仏のようにつぶやいている。

「大東亜戦争、大東亜戦争……」


 サイトウはなりふりかまわず、便所へ走った。口をゆすいだ折りに、いつももっている禁煙ガムの包みを落としてしまった。


何とはなしに目を洗面所の隅にうつすと、変な機械が置かれていた。



 隊長クルスは、隊員から、Jが無事保護されたことを聞き、喜んでいた。

 しかし彼は男が死に際に列車の外へ光線を放ったことを聞き、愕然とした。


 (しまった。仲間に連絡されたぞ。この不安定な時空間にかける敵の勢力はほとんどない。しかし加勢を呼んだとすれば、事態は急を要する)


「最後尾の車両に、ROWの手先を集めました」

 部下の隊員が報告した。


「よし、最後尾の車両を切り離し、消滅させろ」

 後部の方から爆発音が聞こえ、振動が響いてきた。


「伺だ、伺だ、今度は何だ」

 いささか、やけくそ気味にサイトウは言った。


「今度は爆弾らしいぞ。後の車両が爆発したようだぞ」イヌイが言った。

 それを聞いて、ぱあさんは再び念仏を唱える。

「大東亜戦争、大東亜戦争……」


「ちっ今度はスペオペから戦争ものか」

「いや、どうやら、また、スペオペにもどったみたいだぞ」

車窓から外を痙がめていたイヌイが大声で叫んだ。


(続く)

(1979年作品)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/


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