青
よろしくお願いします
「もう、見えるだろ?」
ん?そう言われた、誰なんですか?
一気に目を開いてやりますよ!
閉じていた瞼を開いていく、確かに見える、青い空の手前に見覚えのある形の山、ゆっくり右手を頂に向かって伸ばしてやりました、いい天気です、心の声の内に秘めていた気持ちを一気に解放してみました!
「これは、倒れている私への挑戦状、エベレストよ、そこで待っていいるのですよ」
爽やかな春の風が吹いています、氷点下ではなく、雪解けが始まる心地の良い暖かさ、ほとんど雪がなく、岩石だらけ、まさか、ここはエベレストではない、ジャングル、まっ私はジャングルでも誰にも負けませんよ。
「まだ動くな、回復までもう少しだ、僕が回復してやった感謝しろよ」
先ほどから、命令ばっかりですね、伸ばした私の手に、動くなとばかりに触れてくる、このヌルヌル感……また痴漢ですか?警察よびますよ、犯罪ですよ、柔らかく冷たい感触と共に、目に入った青い姿。
「スライムじゃないですか!ここはゲームの世界ですね」
「そうだ、スライムだお前は人間か?」
「そうです、私は地球上で一番の知能を持つ人類なのです」
「邪悪だな」
「ふふふ、そこのスライムよ、人間が邪悪ですと?何を寝ぼけたことを、私を邪悪呼ばわりするとは勇気がありますね、今にわかりますよ」
しかし身動きがとれないんですが。
「動けないんですけど、なんとかしてください、雁字搦めの放置プレイなんて趣味はありませんよね?」
「やっぱり見たところ君はおそらく人間だな……この世の邪悪な生き物がまだ綺麗な姿で遺っているとはな~美しい、奇跡だ」
「邪悪?その根拠はどこにあるのですか?」
「自ら滅んでおいて、よくそんな口が聞けたものだな、面白いヤツだ」
この世界を支配しているのはスライムなのですか?
私達人間が邪悪ですと?
邪悪な魔物に邪悪と言われるはずがない。
「お前たち人間は邪悪だ、この世界を滅ぼす生き物として語られているんだ、だから君を助けたが、姿はハーフに変えておいた、人間は独りでは弱い存在だからね、僕が殺す価値はない、人間が居ないこの地球は幸せだよ、さっきも言ったが中2補正しといたぞ」スライムは平然とした顔で私の目の前で自慢げに話す。
「今の私はどんな姿なのですか?ヌルヌルしてました、カエルですか?スライムですか?私に何かあったら承知しませんよ」早口で減らず口をたたいてやりました。
「落ち着けよ、取り乱すなよ、安心しろ僕は危害を加えないよ、やはり君は人間なんだね?」
このスライム何を言ってるんだ。
いったいこの世界はスライムが支配しているのですか?
眠いです、そしてもう一度眠りました……
ハッと目覚めて気がつきました、なにやら薄暗い部屋らしきところで寝かされていて、うっすらと見える登山テントとは全く違う丸文模様の豪華な天井が私の目に映りました。
「うっ!」首だけを明かりの指す方へ動かしたが、痛む、首が痛いのです……まだ懲りずに縛りプレイですか……
痛みをこらえながら辺りを見渡した、使われていなさそうな綺麗な暖炉、青空が見える大きな窓、壁に掛かる大きな姿見、今寝ているフカフカなベッド、大きな扉、人間と何も変わらない、少し、いやいやいや、めちゃくちゃ豪華な部屋。
そこに私は横になっている、寝かされているではありませんか、お金持ちの子に生まれ変わったのでしょうか?
いやいや、誘拐されて連れ去られてきたのであれば、看守などが外にいる、部屋から見れば監獄でもない、まして病院の様に点滴もない、病院ではなさそうね、まさかここでエベレストに登っている夢を見ていたと言うのか……
夢でよかった、記録を塗り替えらませんでしたからね。
この拘束縛りプレイを破ってやります、起きあがろうと上半身に反動をつけようと寝返る。
ん?「うぐっ!」全身が重い……ここの重力は地球の倍はあるのでしょうか、やはり痛いのです、長い間動かしてなかったように節々がやたらと痛いのです。
少し動かすと和らぐ痛み、和らぐ痛みをこらえて、ゆっくり起き上がり、「あっ」夢の中?で言われた『姿を変えておいた』という言葉を思い出しました。
まずは自分の姿を確認しておくべきでしょうね……と思った私は部屋に掛けてある姿見まで自分を確認するために鏡の前へ歩み寄る……そこに映った姿を見て驚く。
「きゃっ!ぺちゃぱい!どうして裸?」
体を丸め膝を抱えしゃがんだ、思わず鏡に映る自分を隠した、鏡を見るまで気づかないなんて、感覚も鈍っているのでしょうか。
やっぱりキレイだ、もう一度鏡を確認する、透き通るような白い肌と、透き通るような青髪……さすが私。
「えー!髪の毛が青い!誰ですか変装させたのは!」
よく見ると瞳まで青い、自分の髪の毛に惚れてしまうくらい、しばらく前を向いたり振り返ったりして見入った、やはりきれいだ。
それ以外は変わりはなさそうですけどね……
静けさの中に、大きなその叫び声は外まで聞こえた。
誰かに声が聞こえたのか、ノックもせずにガチャ!と部屋の扉が開く。
私は裸の身体でしゃがんだまま、両手で精一杯隠した叫んでやった。
「中2の裸を覗くなんて、このロリ!」
入ってくる姿はまだ見えず、声だけが聞こえた。
「やぁ目覚めたようだね」
「えっ?どこ!」
しゃがんでいる私と目線が同じ、入ってきたのは青いスライム、私は驚いてしゃがんだまま倒れ込んだ、やはり夢では……
「おいおい、しっかりしろよ」
倒れ込む私の頭と床の間にスライムが走り込み、クッション代わりにポヨン!と私は助けられた、頭を打たずにすんだ、体は冷たい床に横たわる。
「やれやれ世話が焼けるぜ」
私の姿に頬を赤らめて、そのスライムを枕に寝転んだ私に、ひとこと言ってくる。
「これお前の武器か?」
ボサッ!ガシャン!
床に叩きつけられた金属音、何かを床に放り投げた、どうやら、私を助けた時、身につけていた物や近くに落ちていた物をここへ運んできてくれたらしい、ピッケル、アイゼン、ザック、酸素ボンベ……
「それにやけに動きにくそうな、分厚くて暑そうな服を着てたな、壁に掛けておいたぞ、腕に付けてるブレスレットもおかしな物だ」
そのブルーの登山服は解れ、破れ、汚れている、この時おかれている立場が飲み込め始めた、登山中に連れてこられたのね。
ブレスレット……私は左腕手首を見た、時計の事ね。
さすがエベレストモデルのソーラーG○ョック動いている。
「あ―――!私の服、脱がせたのあなたね!変態!ロリコン!」
恥ずかしいさゃないですか……
「私、中学生よ!」……裸なんて誰にも見られたことがないのに。
「僕には暑いのか寒いのかはわからんが、ここは暑いらしいから脱がせたよ、心配するな人間には興味はないよ、後ろを向いているから、これに着替えな」
少し上体を起こした私からスライムは離れた、バサッ!スライムは持ってきた新しい服をベッドに放り投げ窓の外を見ている。
「この服に着替えろ」
「よく命令するスライムね」
「助けてやったんだぜ、おとなしく言うことを聞けよ」
私は立ち上がりその服を手に取る、真っ白地でブルーとシルバーの鷲の刺繍、少し高貴な服装。
「何この服?」
スライムが気を使っている間に服を着てみる、サイズを計ったようにぴったり、シルクのような肌触りとふかふかでさらさらの手触り、庶民の服装ではないのは一目でわかった。
「こちらの服は王があなたへと……高価な服だぜ」
「キレイな服ね、まるで魔法使いね王様?」
「そう王様、ここは王都にあるサンクリアル城だ、王都と言ってもちっぽけだがな、目覚めたなら、まずは王にお目通りを」
先ほどの夢が夢でないなら、人間は邪悪、殺されるのでは?
「私ん何者に変えたの?会ってあげるわよ、殺されたりしないわよね?」
「心配いらない、その服は死に装束だと思ってないか?」
ありがとうございました。