私ならできるわ!
よろしくお願いします。
「私がハーフエルフ??」
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「王様、エルフの血を引く者が発見されました」
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”冒険家の東谷マリンさん19歳がエベレストの日本人最年少登頂を果たしました!”
「キュン!」という音と共に私の中の何かが弾けた!
「私はエベレストの最年少登頂記録を更新する!」
決めた決めた決めた!
私が12歳の時、ふと足を止め見上げた駅前の大型モニターで、当時19歳の日本人少女がエベレストに登頂し最年少記録を打ち立てた映像をニュースで見た時、そうその時私は決めた。
あれからの2年間で、時には挫けそうになったけど、キリマンジャロ、アコンカグアなど南極以外の五大陸最高峰を登り、過酷なトレーニングを重ねてきた、そして今、とうとう念願のここサウスコルと呼ばれる標高7900mにいる。
キャンプ4にテントを設営し山頂を目指す、今の天候は私の心と同じ雲ひとつない快晴だ。仲間達も笑顔がたえない。
日本出発から約60日、あとはここから好天を待ちアタックする、それが今日。
山頂は皆も知る、標高8848m。
一日でその高低差1000mを往復する。
深夜に出発し午前中には登頂。
その時に私は念願の日本人最年少登頂記録保持者になっている。
そして日の沈まないうちにサウスコルに戻る計画、何度も繰り返してきたイメージトレーニング、きっとうまくいく。
はーはーはーはー!
背中には酸素ボンベと必要最低限のわずかな荷物を持ち向かう。
ザッ!ザッ!ザッ!
カコン!カコン!
暗闇と静寂の世界、晴天に浮かぶ天の川が私達を導く、ヘッドライトに照らされたわずかな範囲だけを視野にピッケルと足音が響く、私達5人は着実かつ慎重に前へと進む。
ザッ!ザッ!ザッ!!
エベレストの頂から望む景色は登頂した者しか味わえない。
どうしてエベレストに登るのと聞かれたならば、私はマロリーと同じように『そこに山があるから』という言葉を選ぶだろう。
薄明を迎えると、光がうっすら私達を照らす、5時間は歩いただろうか、ラストアタック夢の山頂は目の前にまで迫る。
ここ標高8000m以上はデスゾーンと呼ばれそこに滞在し座っているだけで体力を消耗してしまう、酸素を補給するスピードよりも消費するスピードの方が早い世界、少しもの無駄な行動は許されない。
ビュービューーーービュー!
風が轟音をたて、宙に舞う地吹雪がバチバチと音を立て身体を襲う、急激に天候が悪化してきた、シェルパの判断は危険だ、引き返そうだ。
「なんで!ここまで来たのに!これが最後なの!」
「馬鹿!命よりも大切な記録なんてあるもんか!おーい行くな!待ってくれよ」
かすかに飛鳥さんの声が聞こえた。
気だけが焦る、私だけが前に進もうとする、すべてをつなぐ命綱ピン!と張る。
ビューーービューーー!
バチ!バチバチバチ!ブリザード、一緒にして視野を奪われ私の周りには誰もいない、ホワイトアウト現象、ベースキャンプと連絡を!
皆は足を止めた。
「ベースキャンプ、応答せよ、視界が全く見えない、聞こえますか?聞こえますか?応答してください、下山します」
「――――――――――――――」
むなしく無線から流れる砂嵐の音、事態は緊迫していた。
「ベースキャンプ応答を!」
「――――――――――――――」
連絡するが応答は無い……空白の時間が私をさらに焦らせる、相変わらずザーザーザーという砂嵐と吹雪の音がが虚しく交差する。
登頂前に天候を予測する、山の天気は予測を裏切る、変化が激しい。
幾人もの冒険者がここで歓喜し、そしてここで300以上の冒険者が散っていったことか……
仲間5人は全員一本のザイル、唯一の命綱で繋がれている。
誰ひとりとして脱落するわけにもいかない!
そう究極の運命共同体であって、同志。
真っ白で20センチ前も見えない、声も聞こえない。
もしかしたらここで死…私は冷静さを失っていった。
ハーハーハーッ!
「ねーみんな大丈夫?ねーどこにいるの?」
ブリザードの中聞こえるか分からない叫び、返事は返ってこない……私は何度も問いかけた。
焦燥感に駆られる。
「みんなどうしたの?二宮さーん?飛鳥さーん?」
やはり返事はない……
今の私の心の緊張のようにピンと張られたザイル。
ピッケルをその場に刺し、左右の手でゆっくりと手繰り寄せる……寄せても寄せても重さが感じられない。
「え?」前も後ろも……誰もいない…ザイルのみが命綱なのに……
私を置いて行かないで、お願い置いて行かないで!
取り乱し走る、30メートルくらいか。
遭難する…の?
ここは沢山の遺体が眠るデスゾーン…私もここで。
体力も限界よ、その場で倒れて落ちた。
しんしんと降る雪に埋もれていった……
冷たい、寒い、眠い、すべて真っ白に・・・。
エベレストの頂に立ちたい。
みんなありがと、毎日楽しかった……私は泣いていた。
「お願い……助けて――――――――!」
この夢覚めて――――――!
標高8000メートル以上には微生物すらいない。
遺体は腐敗しない、そこから私の姿が現れた。
ホワイトアウトから急速に冷凍保存されていたのです。
わずかに声が聞こえますね~。
「―――――――――――――!」
ここは天国ですか?私は起こされるのですか?
綿雪のような柔らかく冷たいなにかが、ふわっと私の頬を触ってくる。
また雪が降ってきました。
それとも冷たいそよ風、なんですか天国の風ですか……眠いのです、やっぱり私は寝るのです。
「―――――――――――――!」
えっ?また同じ声ですね。
仕方ないですね、目を恐る恐る開いてやります、はっ!目の前のモザイクをどけてください、視界が眩しくぼやけていますよ……水中ですか?息はでけてますね。
いったい私はどこにいるのですか?
ひゃっ!ぞくぞくします、頬を撫で触るのは誰ですか?柔らかく冷たい触感、ぼんやりと何かの影が見えたのですが……
「おい、大丈夫か?ある程度は回復しておいたが、これが限界だ、あっ!中二補正もしておきましたよ」
その何かに限界と言われたように聞こえましたが気のせいです、きっとここは病院ですね。
視力が戻るまで時間がかかりそうなのでまた寝ます。
「じっとしてな」
図々しくも命令ですか?そう言われなくてもじっとしてますよ。
冷たく柔らかい感触で動けない私の右手に触るなにか、これは中2の私に痴漢ですか!許せませんよ!
それから、そいつは私の心に話しかけてきたのです。
温暖化、公害、戦争、宇宙まで行った人類が自らの過ちで死滅していく。
自然の力は素晴らく、人工物は自然に飲み込まれ消えていく。
温暖化は徐々に修まりつつあるが、気温の上昇により海面も上昇している。
あなた!誰なのですか、私への挑戦状ですね?
中2versionとして、読んでいただければうれしいです。
ありがとうございます。