タブー編 7
奇士刑事最終回直前ということで、タブー編まで連続投稿させていただきます。
なお、イラストやオマケは省かせていただきます。
資料を一旦仕舞い、白神さんのデスクに向かった。ちょうど椅子に座っていたので、さっきわかった情報を伝えた。
「…………そうです。私の弟の名前は、『白神秀人』です」
「……やっぱり、そうなんですね」
「…………魔界ですか。私には想像がつきませんね」
白神さんは立ち上がり、こちらを見た。やはりエフィーさんのことは見えていないのか、僕と冰李さんの方だけ見ている。
「魔界は綺麗で良いところですよ。この世のどんな観光スポットよりも」
「それは……。秀人も、それを見てきたんですね」
「ええ。おそらく」
「……黒池さん」
「……」
「あなたも、その魔界に行ったんですね」
「はい」
「そう、ですか……。……あぁ、別に怒っていません。大切な話、ありがとうございました」
「そういうものでしたから。それで……」
「言ったとおり、私は特別能力推攻課を狙うのをやめましょう。あなたたちがいるからこそ、解決することがあると理解しました」
その言葉を聞き、僕とエフィーさん、冰李さんの表情は明るくなった。
「やったー!!」
3人でハイタッチをする。
僕と冰李さんが何もいない方向に向かって手を出したので、白神さんは驚いて声を上げた。
「え゛っ!?」
「あっ……。紹介します!と言っても、見えるかどうかわかりませんが……」
ニヤニヤしているエフィーさんがアクロバットな動きをする。簡単に言うと、浮遊プラス天地逆さま。
……見えた瞬間に驚いた顔を見るためなのか。
「やぁっほぉ〜♪」
「きゃああああああああ!?」
驚いた白神さんは、そのままへなへなと気を失ってしまった!
「や、やりすぎですよ!」
「ええー、こんなことで驚いてちゃ、この先不安だわ〜」
「とりあえず椅子に座らせますか……。黒池さん、手伝ってください」
「は、はいっ!」
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数日後。
ああは言ったが、やはり『なぜタブーが守られているか』が不思議でならない。
だから彼らには悪いが、私は署長に直談判することにした。
「……そうか。そこまで気になるんだね?白神悠子さん」
署長は大きな茶色い革製の回転椅子に座ったまま、後ろを向いている。
「はい」
「まずは『特別能力推攻課』を諦めてくれたことに礼を言おう。彼らにはしっかりと『許可なくして能力を使用することを禁ずる。』と言っているからね」
署長は愛し子を前にしているかのような優しい声で言った。
「単刀直入にお聞きします。彼らはどうしてここに存在しているのですか?」
「……これは独り言だが……。国と国の牽制のためだよ」
何を言っているんだ?
「それは……自衛隊のようなものですか?」
「自衛隊……ねぇ。正直、彼らより強力で、有力なチームだ」
「では……爆弾や核のようなものですか?」
「そうだね。ここにいるだけで牽制になっている。『怪奇討伐部』の精鋭メンバーである黒池皇希くんが日本人で助かったよ。彼がこの国の住民である限り、この国は守られる」
「……『特別能力推攻課』より、その『怪奇討伐部』という組織……?の方が大切なのですか?」
「そうだね。『特別能力推攻課』は、ただ『黒池皇希』という強い武器を留めておくための場所にすぎない。本当はVIP並の護衛をつけられてもおかしくはないんだけど……。彼自体が強いからね」
「は、はあ……」
とんでもない話になってきた。
『タブー』と呼んでいた『特別能力推攻課』が、まさか『国の兵器』だったなんて。
「では、『特別能力推攻課』に身を寄せている『獅子ヶ鬼剣一』、『エフィー』の両名も同様なのですか?」
「そうだね。多様化と言っては何だが、その2人は『神秘』の塊だ。本来は監視しないといけないが……。彼らは何も悪いことをしていない。少なくとも、この国ではね。たとえ『獅子ヶ鬼剣一』くんが大昔の人斬りだったとしても、とっくの昔に時効になったし、今現在彼によって殺害された人間は誰一人としていない。今は『黒池皇希』につきっきりでいてくれているから問題はないと思うよ」
「……ですが見ておく必要はある、ということですね」
「そりゃそうだね。彼はまだ一般人だ。上原くんに数日に一度、『獅子ヶ鬼剣一』くんの記録を出してもらっているが……。はは、あの破天荒っぷり、まるで小説でも読んでいるかのようだよ」
「署長……」
「ゴホン。とにかく、知りたいことはそれだけかい?」
「はい。ありがとうございました」
私は敬礼をした。
「礼をするほどではないよ。いつかは世の中に広まると思われていたことだからね。この先、『特別能力推攻課』を無くそうとするような間違いが起こらないように、もう少し前に話しておくべきだったね」
「いえ。貴重なお時間を割いていただき光栄です」
「これからもよろしくね、白神さん」
「はい!!失礼します」
私は署長の部屋を出て、扉を閉めた。
『黒池皇希』……。彼のことは頭から抜けていた。むしろ、一番人畜無害だと思っていたのに、彼が一番問題だったなんて。
あぁ、この先、警察官として容疑者を疑う時の推理力が心配になってきた。少しリフレッシュしよう。……公園でも行って、自然でも見てみよう。自然……少しくらい残っているはずだ。ふふ、まさか私が自ら『神秘』を見たいだなんて。焼きが回った……っていうのかな。とにかく昼まで待って、お昼を外で取ろう。
うん……そうしよう。




