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奇士刑事  作者: グラニュー糖*
10/46

シルバースワン編 2

奇士刑事最終回直前ということで、タブー編まで連続投稿させていただきます。


なお、イラストやオマケは省かせていただきます。

「は〜〜〜」


 口から白い息を吐いて、見上げる。

 目の前にあるのは、黒いビル。色以外は窓合わせ他のビルと大差ない。

 少し身震いしながら剣の柄に手を当てた。


「雑居ビルより大きく、ビルより小さい……って感じですね」


 隣にやって来た白黒兄弟の兄が話しかけてきた。マフラーもせずに大丈夫なのだろうか。


「さささ、寒……寒いぞ……」


 一方、ガタガタと震えながら師匠が僕の手にしがみついた。今回の作戦のパートナー、僕じゃなくて上原先輩なんだけど……。


「師匠っ!なんで冬なのに着物に下駄なんですかっ!?気づかなかった僕も僕ですけど!!」


 現在2月である。


「これしかねぇし……」

「この前防寒具あげましたよね!?」


 この前の防寒具とは、僕と山野くんがクリスマスの夜に魔界に行った時に渡したのである。身長と衣服が合わないため、警察関係者ながらも職務質問されそうな見た目になっていた。

 ちなみになぜ魔界に行ったのかというと、師匠に悪霊が取り憑いており、その謎の解明のためだった。魔界でもレインくんを始め、ヘッジさんやカリビアさん、さらにはヘラまで被害に遭っていた。


 結果、クリスマスプレゼントをあげたいムジナくんのやったことだったのだが。それに師匠は犯人がわかっていたらしい。ならなぜ魔界に行かせた。


「カリビアの店にあるレインの部屋にあるんだよ」

「魔界に行った時に持って行ったんですね……」

「クノリティアは雪山だからな」

「今度冬服を買いましょうね」

「やったぁ!」


 僕と師匠が話していると、白黒兄弟の兄がため息をついた。


「はぁ。敵陣の前なのによくそんなのんきでいられますね」

「まぁまぁ、いつもこんな感じだから。変に気を張って失敗するより、いつも通りで勝って戻ってくるほうがいいでしょ?」

「……。だからイレギュラーなんですよ、あなたたちは……」

「今日はしっかり見ていくといい。ついでに、推攻課へのイメージを改めてくれると嬉しいな」


 そう言って扉に右手をかける。当然左手は銃が入っているポケットに添えている。続けて、白黒兄弟の兄が扉の左側に背中をピッタリと合わせ、上原先輩の顔を見て突入機会を伺っている。横では弟がその時を待っていた。


「いつもは突入〜!って感じで突っ込んでいくのにな」

「いつもがおかしいだけですよ」


 先輩は誰もいないことを確認し、バン!と扉を開けた!

 先輩が先行し、後ろを白黒兄弟が進む。その後ろに山野くん、師匠、殿として僕が入った。


 ……静かだ。入口に監視カメラはなかった。あまりにも無防備すぎる。銃の密輸組織なのだとすれば、入口に機関銃でも設置していそうなのだが……。


「……おかしいね。誰もいない……」

「いないだけマシじゃないですか。行きましょう、上原さん」

「そうだね。黒池ちゃんが見てくれてるし」

「僕の事何だと思ってるんですか……」


 一階は受付ではなく、道場のようになっている。床は畳になっていて、靴で移動するのは罪悪感があるが、今はそんなことを考えている暇はない。このまま右奥にある階段に向かおう。


「……」

「畳、気になりますか?師匠」

「あ、ああ……。すまない」

「いえ。昔のことを思い出したんですね」


 僕はしみじみと江戸時代に思いを馳せる。だが師匠は顔をこわばらせたままだった。


「……黒池、オレはここに残るぞ」

「へ?何でですか?」

「それは……」

「おーい、黒池ちゃん、リスト!行くぞ!」


 階段がある曲がり角から上原先輩が顔を覗かせる。垂直なんて怖いからやめてください。


「は、はーい!ほら、師匠!」

「ここ!畳が傷んでいる。誰かがいた証拠だ」

「師匠、ここは入口です。誰でも通ります」

「いや。踏み込みが、普通の徒歩じゃなくて……!」


 師匠が僕の方を見たその時だった。


「良い読み。頭は良くても、体は動く?」

「誰だ!?……うおっ!?」


 女の人の声が聞こえたと思いきや、ガコンと音がし、師匠の体がふわりと浮く。


 師匠の足元には大きな穴があったのだ。


「師匠!」

「大丈夫だ!」


 気がつくと、師匠は天井のコンクリートにできている横向きの柱にムチを巻きつけ、宙ぶらりんになっていた。とんでもないスピードである。


「へぇ……」

「誰だ、出てこい!」

「黒池ちゃん、リスト!」

「外野は行って」


 ガラガラガラッ!とシャッターが下りる音がした。そしてバンバンと叩く音。曲がり角でシャッターが下りたのだろう。


「黒池ちゃん!黒池ちゃん!クソッ!」

「……上原さん、行きましょう!彼らは強いんですから」

「お前っ!黒池先輩とリストくんを見捨てろって言うのかよ!?」

「そんなことは言っていません。信じろと言いたいのです」


 言い争いが聞こえる。が、バンバンと叩く音が無くなるとともに声も聞こえなくなった。


「……僕と師匠だけですか……」

「正確には黒池、あなた一人が理想」

「僕?」


 仮面を身に着けたスーツの女性が音もなく現れた!


「!」


 気配は感じなかった……。この状態で背後を取られていたら、こんな最初の最初でマリフのマジックアイテムがお釈迦になってしまうところだった……!


「黒池皇希!」

「は、はいっ!」


 女性が叫ぶ。かなり通る声で、運動部を連想させた。


「決闘を申し込む」

「け、決闘!?」

「ほ〜」


 師匠は決闘と聞くなり、後ろに下がった。……楽しみにしているのでは?

 僕、下手したら殺されそうなんだけど!?


「ま、待ってください!僕、あなたのことは知りません!」

「忘れたとは言わせない!早く剣を手に取れ!」


 話を聞いてくれそうにない。僕は腰に添えていた剣の柄に手をかけた。女性を攻撃するのは気が引けるが……やるしかない!


「……っ」

「はああああっ!!!」


 彼女は大きく振りかぶり、僕の方へと向かう。ちなみに彼女はなぜか鉄パイプを持っている。周りの景色は道場なのになぜ鉄パイプ。銃の密輸組織なのになぜ鉄パイプ。なぜ近接攻撃なんだ。


 僕は鞘から刀身を抜かず、そのまま横にして鉄パイプを受け止める。彼女の仮面は目の部分を隠しており、口だけが見えている。その口は奥歯で噛み締めたのか歪み、トン、トンとバックステップを踏んだ。


 僕は突然の攻撃だったのできちんとした体勢を取れておらず、今のうちだと足と腰に力を入れた。


「すー…………はー…………」


 ゆっくりと呼吸をする。


 周囲の見た目といい、彼女の動きといい……。どこか僕が入っていた部活を思い起こさせる。僕は剣道部に入っていた。だからどうもそのイメージが頭から離れないんだ。


 横目で師匠を見てみる。よかった、無事のようだ。むしろ僕より頑丈だと思うし、一番生死が不安なのは僕なのだが……。


「……っ!!」


 心を落ち着かせ、意識を目の前の敵にのみ向ける。


 今、僕と剣は一心同体になっている。もちろん比喩の話だ。だが、集中していると、剣の細かな動きや風の抵抗の僅かなズレなどを感知することができる。このズレは命取りとなる。

 銃も同じだ。弾道を調整したとしても他人が見ると何も変わらない光景だ。『動かした』ようには見えないが、実際にはミリ単位で手の角度が変わっている。さっきはあそこに当たったから、今回はさっきのところから少し右下に手を動かそうかな、と動かすのは間違っている。本当の本当に微々たる角度を変更するだけで当たる場所は変わる。『動かす』のではない。『変える』んだ。たとえ目に見えなくても、確実に成長しているのだから。


 風を読め。敵を読め。自分を読め。相棒(愛剣)を読め。


 それを理解している者こそ、本当の敵となる。戦いには力が必要だが、読み合いも大切だ。


「……それでこそ、私の宿敵……!」


 彼女は右、左ととても素早く移動する。

 左か!なら僕は右に…………!


「……フ」

「!!」


 さ、逆手……!!!


「っ、ぐ……!」


 キィィイイ!!と鉄と鉄が擦れる音がする。咄嗟に抜いた剣がガードしてくれた!

 僕のお腹をめがけて斬ろうとしたのか、僕はそれを押し出す形で留める。やはり女性を傷つけるのを躊躇っているからか、本気になれない。


「なぜ仕掛けてこない!」


 彼女はもう一度下がってから叫んだ。


「僕とあなたに何の関係があるんですか!」

「本当に忘れているのか?」

「忘れているどころか、知りません!」

「……。いい。わかった。見せてあげる」


 彼女は仮面をかなぐり捨てる。仮面の下には、前髪が右上へと斜めに切れ、鼻の付け根に白い野球少年が付けるような絆創膏が付けてあった。大きな目は僕を睨みつけ、一歩も譲らないという強い意志を感じた。


「あなたは……!」

「思い出した?」

「その特徴的な髪型……もしかして、剣道の主将の……!」

「そう!全国大会であなたに負けた、小崎遥。警察官になったと聞いたあなたに勝つため、私はこの力こそ全てと聞いていたシルバースワンとかいう犯罪組織に入ったの」

「犯罪組織に手を貸すだけでも罪なのに、どうして僕に勝つためだけにそんな危険なことを!」

「それだけの覚悟があったんだろう、この女には」

「師匠……」


 壁にもたれる師匠が呟く。

 それだけの覚悟?僕はそれだけの覚悟を決めさせるだけのことをしたの?

 いつ?やっぱり剣道の全国大会?でも、あの時は普通に戦ったし……。


「やああああっ!!」

「黒池!」

「っぐ……!」


 ぐるぐると渦巻く思考。今はこんなことを考えている暇なんてないのに!


「……これで……どうだッ!!」


 僕は考えを振り払うように一歩踏み込み、手首に向かって剣の腹をぶつけた!僕の剣は刀ではなく勇者の剣のような形なので、そういうことが可能なのである。傷つけたくない警察としての心の表れなのだろう。


「!」


 衝撃で手から鉄パイプが落ちる。その手は赤く腫れ、無事な左手で庇い始めた。背中を曲げ、痛そうに奥歯を噛み締め、口から空気が漏れる。彼女は僕を睨み、何も言葉を発さなかった。


「…………勝負アリですね」

「ま、だ……やれる!」

「いいえ。その手では満足のいく戦いは無理でしょう」

「お前は何もわかっていない!私がどれだけ辛かったか!」

「……。何があったのかは僕にはわかりません。ですが、謝りません。あれは僕の未来への修行なんですから」

「はぁ?」


 あの頃は、ヘラに匹敵する力を求めるのでいっぱいいっぱいだった。


 空は飛べないし、炎は出せないし、覚醒なんてできないし、壁を蹴って避けたり……あんな動きもできない。


 でも、一つだけ。一つだけ悪魔という存在に勝つことができるものを見出した。それが「達人」だ。一つのことに集中して鍛え上げれば、どんな相手にだって勝てる。それがたとえ、悪魔だろうと何だろうと。


 僕は「先生」に剣道部に入ることを伝え、毎日毎日鍛えた。「先生」もなぜかその手のことには詳しく、家に帰ったあとでも練習した。たくさんたくさん練習した。


 全ては、あの紅い悪魔を倒すために。


 言っては悪いが、大会とかは全て僕の成長度合いの力試しだ。つまり踏み台。竹刀なんかで殺せるわけないし、後々使うだろう剣や刀は竹刀とは全く違った重さや使い勝手だから、どれだけ早く風を斬ることができるようになったかを確認するだけだった。だから僕は相手のことなんか覚えておらず、僕の成長のみを視野に入れていた。


 ……まぁ決勝くらいは覚えておいてもいいかなとは思ったけど。


 結局僕は覚えていなかった。ヘラには勝てなかったし、「先生」はいなくなってしまった。僕に残されたのは……師匠と上原先輩だけだ。


「ですが……楽しかったです。久々に強い相手と戦えて」

「………………」

「だから、罪を償って早く陽の当たる場所に戻ってきてください。それと……隠れてないで出てきてください。出番ですよ」

「!!」


 僕は壺の後ろに声をかける。そこから出てきたのは、白黒兄弟の弟だった。彼は見つかったか〜とノソノソ出てきた。


「よく気づいていたな」


 師匠は満足そうに頷く。


「…………あなた……本当に人間以上を目指していたんだ」

「へ?」

「ううん、何でもない。そりゃ勝てるわけないよね。……そこの人!早く連れていけば?」

「はいはい」


 弟は彼女の手に手錠をかける。僕は連行される彼女を見て鉄パイプを拾い上げた。


「再戦を楽しみにしてるから」


 ふと止まった彼女は嬉しそうに言った。


「……小崎さんをよろしくお願いします、弟さん」

「外で待ってるから」


 ガガガガガ……ガシャン!とシャッターが開いた。外へ繋がる道と、上へ繋がる道。僕は師匠に鉄パイプを持たせ、上へ繋がる道へと足を伸ばした……!


 __________


 同時刻。


 二階ではシルバースワンの雑魚たちが立ち塞がっていた。


 全員スーツだ。それに、体のどこかに白鳥のマークがある。ビンゴだ。やはりAliceの情報は間違っていなかった。抗争跡には白鳥のマークがある場所が多く、それがシルバースワンのマークだろうと検討はついていた。が、本当に他の場所がわからず、捜査は難航していた。だからこの機会を逃すわけにはいかない。こいつら全員確保するためにも、頑張らなくては……!


「山野くん、いけるかい?」

「もちろんです!」

「もしここから二手に分かれるところがあればそこで分かれる。いいね?」

「わかっています!」


 ここまで一方通行だった。分かれるとすればさっきの黒池ちゃんのやつだろう。

 とりあえず特別能力推攻課ではない白黒兄弟はできるだけ戦わせないようにしよう。


「それにしても、ビルの中ではないように見えますね……」


 どう見ても廃墟のようだ。コンクリートがむき出しだし、コンクリートの柱から白いものが見えている。そしてニヤニヤしていたりオラついていたりするコートのお兄さんたち……。ここは世紀末か?


「すぐに拠点を変えることができるからだろうね」

「やはり逃げるためですか?」

「ああ。でも逃げるのも今日でおしまいだ。今日全員捕まえてやるからな!」

「おお、上原先輩が燃えている……!」

「いくよ、山野くん!」

「はい、先輩!」


 ……と言っても、動くのは山野くんのみだ。俺が相手の動きと心を読んで、一番被害が大きくなりそうなところに山野くんを誘導して攻撃させる。もちろん人数が多くなればなるほど俺の消耗は激しくなる。だがそんな悠長なことを言っていられる場合ではない。もしここの騒ぎを聞きつけてシルバースワンのお偉いさんが逃げるとなれば、この作戦の意味が無くなる。


「……右だ!柱の裏に隠れて武器を用意している!吹っ飛ばせ!」

「はあああっ!!」


 山野くんの髪が逆立ち、一瞬、空気が熱くなる!そして、爆発が起こった!

 10人くらいが吹き飛んだだろう。

 山野くんの爆発は、爆弾を飛ばすのではなく、決めたところに爆発を発生させる能力だ。


 山野くんは元々警察官を目指しておらず、むしろ不良だった。そう、夜中コンビニでたむろってそうな感じの。パトロールしていた黒池ちゃんが偶然見つけ、早く帰りなさいと注意したところ逆上し、爆発で応戦した。……だが、強さを極めていた黒池ちゃんはそれを軽々と避け(黒池ちゃんが追い求めていた「ヘラ・フルール」という悪魔は炎を使うため、炎に対する攻撃に耐性があったと言っていた。黒池ちゃんは火遊びしていたのか……?)、あえなく敗北。とてつもない力の黒池ちゃんに憧れ、山野くんは警察官を目指したのだそう。


 黒池ちゃんは俺に憧れ、山野くんは黒池ちゃんに憧れ……。歴史は繰り返す、ってやつなのかな。


「次は10時の方向だ!」

「はあっ!!……っ、はぁ……はぁ……」


 山野くんの能力は使えば使うほど弱くなっていく。ゲージを想像して考えるとわかりやすいだろう。小さい爆発だとゲージの減りは少なく、何度も攻撃できるのだが、大きな爆発となるとゲージの減りが多く、撃てる数が減る。回復するには普通に休むくらいしか回復できないらしい。リストがその良い例で、一度リストのように甘いものを食べさせてみたがやはり純粋な人間だからなのか、あまり回復されなかった。


「ありがとう、山野くん。あとは任せて」

「い、え……できま、す……!」


 息を切らして、肩で呼吸する。


 ……っ!後ろ……!


「山野くん!!後ろだ!!」

「!?」

「オラァ!死ね!!」


 鉄パイプを持った男が飛びかかる!山野くんは咄嗟に目をつぶり、俺は山野くんを庇おうと動いた。


 ……が衝撃はいつまで経っても来なかった。


「……本当に上原さんたちって、黒池さんに任せっきりなんですね」


 声に反応して上を見ると、腰より高い位置まで足を上げた白黒兄弟の兄……飛向冰李(ひむかいひょうり)が立っていた。

 そして吹っ飛ぶ鉄パイプの男。……もしかして、蹴飛ばした?え?蹴りだけでそんな火力出るの?おかしくない?格ゲーかな?


「あ、あわ……」

「上原さん、そんな間抜けヅラを見せないでください。蹴り飛ばしたくなります」

「あっ、ごっ、ごめんっ!」


 開いた口が塞がっていなかった。これが本物の「開いた口が塞がらない」か……。


 俺は急いで口を閉じ、山野くんを部屋の端っこに引きずる。白黒兄弟の兄は足を下ろし、戦闘態勢を取った。


 なぜこんなに強いのに推攻課ではないのかって?それは、彼はただ単に体術に強いだけだからだ。人間、ここまで鍛えることができる。人間すごい。

 アスリートも目指せたそうなのだが、アスリートより人生において安定している方向に向いたそうだ。ちなみに弟の飛向霜慈(ひむかいそうじ)は弱い。


「……来い。相手になってやります」


 静かに呟く。俺もそうだが、こんなスカした奴は気に入らない。なので、ブチンとキレたスーツ軍団は一斉に兄に襲いかかった!!


 あーあ……。あー、うわうわ。ひゃー、こりゃひどい。


 いや、マジで。マジでこんな感想しか出てこないから。なに?なんなの?無双?無双ゲーの世界に迷い込んだ?目の前で起こってるの、ホント無双ゲーの主人公みたいなことになってるよ?蹴りはもちろん、パンチも相当なんだけど?ヤダ、この子怖い。一体どこで鍛えてきたの?


「フンッ!!」


 ドカッ!


「はあっ!」


 バキッ!


 ……あっという間に全員倒している。

 山野くんも夢か幻かという顔をしながら頬をつねっている。大丈夫、現実だよ。ありえない現実だよ。


「先輩っ、みなさん!すいません、遅くなりましたっ」


 タタタッ、と黒池ちゃんがリストと一緒に階段を登ってきた。リストの手には鉄パイプがある。


「黒池ちゃん!」

「まだ残りが!」


 ブン!と平行に風を切る足。回し蹴りってやつだろう。

 黒池ちゃんは驚いてしゃがんだ。


「うわっ!!」

「……なんだ、黒池さんですか」

「わざとですか!?」

「そんな馬鹿なことするわけないじゃないですか。……霜慈は?」

「先程戦った人を捕まえて下で待たせています」

「……そうですか。無事ならそれでいいんです」


 兄は嬉しそうに笑った。笑うところを初めて見たかもしれない。


「山野くん、立てる?」

「はいっ」


 山野くんに肩を貸し、立たせる。さっきよりは元気になっているようだった。


「……山野、しんどかったらオレが運ぶぞ」

「リストくん、ありがとう。でも大丈夫だよ、リストくんが潰れちゃうでしょ」

「そ、そんなことないぞ!」

「そうですよ!師匠は“これでも”大人なんですから!“小さい”からって、ナメてはいけませんよ!」

「お、ま、え、が!一番失礼じゃあああああっ!!!」

「いたたたたっ!!!」


 怒ったリストがムチでベシベシと黒池ちゃんを叩き回す。今更だが、リストには『小さい』とか『チビ』とかの言葉は地雷なのだ……!


「ぜぇ……はぁ……す、すいません……師匠……。師匠は素敵な大人です……」

「ふん。許してやる」


 3分くらいやったあと、和解した。……早く……行こっか。


「二人とも、行こう。今は仕事中だ」

「は、はい。すいません……」


 結局山野くんは俺が運び、その後ろに白黒兄弟の兄、黒池ちゃん、リストと歩いていった。また階段がある。一番奥だ。


 垂れ下がった赤い『非常口』のライト。ホコリまみれの視界。ジーーー……ビンッと音がするライト。

 結構怖い。周り、全員呻いてるし……どこ蹴られたの?ゾンビゲーかな?


「みなさん、どうして倒れられているのですか?」

「……あとで聞けばいいだろう」

「あの〜」

「聞いてた!?」


 黒池ちゃんはしゃがんで、人差し指でちょんちょんとつつく。一人が苦しそうに目を開けて唸った。


「うぅ……蜘蛛が……蜘蛛、来るな、来る、な……!」

「蜘蛛?」

「ああ……あああ……!助け、助けてくれっ!あああああっ!!!」


 そいつはパニック状態になり、暴れだした。急いで黒池ちゃんをリストが引っ張り、その手が黒池ちゃんに当たることはなかった。が、どうも気になる。


 蜘蛛……蜘蛛か。


「う、うわあああっ!やめろ、やめてくれぇっ!」

「いやだっ、刃物は嫌だあああっ!!」

「頭がおかしくなる!やめてくれえええ!!」


 他の人にもそのパニックは伝染し、辺り全員が暴れだした。俺たちは急いで2階を駆け抜け、階段の曲がり角から顔を覗かせた……。


「なんで……なんでこんなことに……?」


 黒池ちゃんが泣きそうな顔で見ている。黒池ちゃんは優しい。優しいから相手が安心できるようにしてから話を聞いたんだろう。でも、現実は違っていた。こんな集団ヒステリーになるほどのトラウマが彼らにはあったのだ。


 刃物……蜘蛛……頭がおかしくなる……?何が原因なんだ?何が……何が彼らをこんな目に遭わせた?


「……行こう。終わる頃には落ち着いているはずだ……」


 うなだれる黒池ちゃんの肩をポンと叩く。黒池ちゃんは静かに頷いた。


 __________


 3階。

 2階より綺麗な階層だ。……まぁ2階の叫び声が聞こえなければもっと最高だったのだが。

 相変わらずコンクリートむき出しのグレーだが、さっきと違うのは廊下が狭くて……というか、廊下というものが存在し、部屋が存在しているというところ。しかしその部屋は2つしかない。どこに誰がいるかなんてわからないので、ここでチーム分けしないといけない。



 手前の部屋か奥の部屋。そして残ったチームは階段で上に向かう。これが一番の効率だろう。


「オレは手前のところに行く。上原、いいな?」


 師匠がぶっきらぼうに言う。上原先輩は仕方なさそうに首を縦に振った。


「では奥に行きましょうか、山野さん」

「……わかりました。黒池先輩、上の階ですが……一人で行けますか?」

「なんとか行けると思います。……お互い、気をつけましょうね」

「はいっ!」


 完全復活した山野くんは笑顔で答えた。

 その後、それぞれ扉の横で銃を上に構える。ビルの入口と同じような感じだ。ただ、場所が違うだけ。僕は2チームを置いて走り抜ける。


 どうか……どうか、死なないで、みんな……!!


 __________


 バン!と扉を開けた。


 手には魔力が渦巻く。

 あぁ、直接魔界と繋がっているときよりかは弱いけど、こりゃ良いものだな。


 部屋のサイズは縦横10メートルくらいか。視界の先には机が横に並んでる。いや、そういうことじゃなくて……机の足の部分がこっちに向いて転がってる……いや、設置してる?あぁ、もういいや。とにかく、異様な雰囲気になっている。


「ようやく来やがったな、サツども……!」


 部屋の中には青いスーツの男が一人立っていた。角のようになった金髪、色黒の肌、目に刺さる金色のアクセサリー、天を貫くような三角形のグラサン、金の装飾がやはり目立つ白いブーツ。ここのボスって奴か。


 チラ、と目に入ったのは左腕にある白鳥のようなマーク。なるほど、さすがシルバースワンと言ったところか。そういやさっき黒池と戦っていたあの仮面の女のスカートにもこのマークがデカデカと入っていたな……。


「お前がここのボスか?」

「ハァ?ボスは姫だ!間違えるんじゃねぇよ」

「姫……ということはボスは女ってことか」

「姫のことを軽々しく口に出すんじゃねぇ!態度次第で武器を変えてやろうと思ったが、ヤメだヤメだ!最大火力で消し去ってやるぜ!!」


 ガチャン!と大きな音がした。上原が急いで観音開きの重たい扉を開けようとしたが、開かない。自動的に閉まるのか!

 ……なるほど、こいつを倒すまで出られないってことだな。


「受けて立つ。上原、下がってろ」

「下がってろって、これ以上後ろが無いんだけど……」


 真後ろが扉だ。


「なら部屋の端っこにでも居てろよ!」

「りょ。そこから援護するよ、リスト」

「勝手にしてろ!」


 青いスーツの男は机の後ろに隠してあったであろう武器を取り出した。

 ……ん?何かどっかで見覚えがあるぞ。どこだったかな……。


「お前、リストって名前なんだな」

「ああそうだよ。お前は?」

「ジークフリートだ」

「ジークフリート……か。いい名前だな」

「えっ……あ、ありがとよ」

「……行くぞ、ジークフリート!」

「よっしゃあ!鉛玉を喰らえ!」


 ドン!と勢いよく飛んできたのは鉛玉。

 鉄砲……。見たことあると思ったら、これ、サニーが引き連れてきた人間たちが使ってたやつだな!?

 うわ、ボロ負けした記憶が蘇る!


「うわっ!!」


 急いで机の後ろに隠れる。真横を銃弾が通過していった。机に……穴が開いている!!

 これじゃあ蜂の巣になるのも時間の問題だ……!


 幸い、部屋の壁に風穴は開いていない。洞窟で戦ったデスの改造銃より威力は低そうだが、これが続くとなれば心配だ……。


 幻影桜花を発動したら1発2発は耐えられそうか……?連続発動してもいつまで発動できるか……。あと、マリフの『絶対防御機構』で数秒は無傷でいられるはずだ。チャンスは少なそうだな。


「クソッ……オレの一番苦手なやつじゃねぇか……」


 思わず口に出るほどだ。


「おいおい、これだけかよ?景気よくいこうぜ!」


 ガチャガチャと何かを漁る音が聞こえる。オレと同じく机の後ろで戦況を見ていた上原は目を細めている。

 そして……ヤバ、という顔をした。なんだ!?何がヤバいんだ!?そんな愕然とした顔で固まらないでくれ!


「!?……!!!?」

「上へ逃げろ、リスト!」

「もう遅ぇよ!」


 シュウウウウウ……と音がする。何!?爆弾か何かか!?


「一か八かだ!」


 オレはもう一度一階でやったときのようにムチで天井へぶら下がろうとした。


 ドガアアアアンッ!!


 間一髪、ぶら下がることができたが、爆風の強烈さと熱さで思わず目を瞑る。風に煽られ、天井が近づいたところでオレは天井に足をつき、床に着地した。


「ゲホッ、ゲホッ……!」

「なんだ、避けたのか」

「何だよ、コレ!」

「この形、知らないのか?本当にサツなのかよ?」

「オレはトレジャーハンターだっ!!」


 デカい筒。煙が出ている……。

 わからん。わからんぞ、オレには。現代には疎いんだ。なぜならオレは江戸時代の人間だからな……!!


「トレジャーハンター?泥棒じゃねぇか!」

「ちげぇよ!あと、それわからんから教えろ!」

「これはロケットランチャーだ!お前を消し炭にする兵器だぜ!」


 ロケットランチャー。……ロケットランチャー?ふむ……聞いたことがないな。


「……って微妙な顔するな!」

「いや……すまん。本当に聞いたことがないんだ。いい勉強になった」

「ぐぅう……!気分がおかしくなる!さっさと決めてやるぜ!」


 ジークフリートは新しいロケットランチャーを拾い、狙いを定めた。今回はオレの姿が丸見えになっている。今回は……!


 シュウウウウウ……!


「『幻影桜花』…………ッ!」


 着弾する。オレは吹き飛ばされた。幻影桜花でガードしたはずなのに!なぜ?なぜだ!?


 見えていたのは、オレの目の前のみ。周りを見ると、桜が焦げていた。まさか……まさかだとは思うが、穴が開いた?火力で?幻影桜花が負けただと?


 信じられないが、現実だ。マリフの言った通りになってしまった!

 オレの視界と同じくらいの大きな穴が桜の盾にできている。ボロボロと落ちていく桜の残骸が呆然とするオレの視界の上から下へと動いていく。オレは吹き飛ばされただけだったが、もしもう少し幻影桜花の威力が足りなければと背筋が凍った。


「まだ生きてる?!なら、これはどうだ!」


 また別の武器を取り出す。何個あるんだよ!?


「リスト!さっきのもヤバいが、これもヤバいぞ!」


 上原の叫びが聞こえる。そんなことはわかってんだよ。ジークフリートの武器が全部ヤバいってことくらい!

 てか上原、もう死んでておかしくないのになんで生きてるんだ!?まさかマリフは人によって調整してる!?ひどくないか!?


「煙もすごいし、これで決めてやる!あまり煙たすぎると姫に怒られるからな!」

「勝つのはオレだ……!人魔でも普通に暮らせるよう、認めさせてやる……!!」


 大きな銃口を向けられる。オレは幻影桜花を発動した。


 今回は……!


「死ね!!」


 ドン!!


「あああああっ!!」


 バシィン!!


 ムチが銃にクリーンヒットし、銃が回転しながら床を滑っていく。もう一歩踏み込んでジークフリートを確保しようとしたが、爆風で足がもつれて逃げられてしまった。


「どうして生きてるんだよ!」


 今回は分身を用意した。オレより弱いが、身代わり程度にはなるだろう。オレは着物で口元を塞ぎ、バックステップを踏んだ。


「これはグレネードランチャーなんだぜ!?普通の人間は死んでるはずだ!!」


 ジークフリートは驚きと怒りで赤くなりながら叫んだ。それをオレは静かに見る。


「……オレは人間じゃないんでね。オレに勝とうと思うなら、死神の1体や2体、追い返してみろ」

「に、人間じゃない……?冗談言うな、どう見ても……」

「…………幻影桜花」


 オレの手に幻でできた桜が現れる。ジークフリートは奥歯を噛み締めた。


「……本当、なのか……」

「あぁ」


 オレは近づこうとした。が、ジークフリートはとても嬉しそうに口の端をニヤ、と上げた……!


「なら、お前に勝てば人間以上になれるってことだな!?」

「は?」

「これなら姫も喜んでくれる!」

「ちょ、待て!」

「問答無用!!最高のものを用意してやる!」


 ジークフリートは別の武器を手にする。さっきのロケットランチャーやグレネードランチャーより小さなものだった。


「フン、そんな小さなもので勝てると思うか!」

「そんなこと言ってるのも今のうちだ!」


 ドン!!!


 すごい音がした。


「ヴァ!?」


 壁にはさっきより大きなヒビが入っている。

 つ、強い!!これ、強い!!


「まだまだ!」


 ドン!!!

 ドン!!!

 ドン!!!!


「ちょ、ま、あっ!!」


 連射すんな!連射!!


 連射しているため、薬莢がコロンコロンと落ちていき、さらには回を重ねるごとに煙が立っている。本体が熱くなっているのだろう。


「どうだ、マグナムは!」

「マぁグナムぅ〜〜!?」


 名前だけは聞いたことある。上原がやっているゲームに出てくるやつだな。FPSってやつ。


 幻影桜花を発動させるが、容易く貫いた。これ以上続くと、本当にヤバいぞ!?現代を見くびっていた……!


「……残弾がもう無いか……!」

「やったぞ!」

「これで決めてやる!」


 これはわかる。ハンドガンだ。最初に使ってたやつだな。……まぁ火力は……幻影桜花以上なの、だがっ!


「うぐぐ……」

「……リスト、一か八かだが……このマリフのアイテムに思念を送る。その通りに動け」


 沈黙を貫いていた上原が急に変な提案をしてきた。


「は?そんなことできるのかよ?」

「一か八かって言っただろう?『……これでどうだ?』」

「うおっ、すげぇ」


 頭に直接言葉が……!


『よし、続けるぞ。今、ジークフリートはリストが居る場所に向かって撃っていくつもりらしい。だから、そのムチを使ってワイヤーアクションみたいなことをするんだ。いけるだろ?あ、喋らなくていい。心の中で話してくれ』


 どうやら魔力を通して言葉を送っているらしい。そんなことできたのか……。


『……いけなくもないが。ちゃんとナビゲーションしてくれるんだろうな?』

『もちろん。さぁ、珍しい俺とリストの共同作戦だ!』

『なーんかやだなー』


 心の中で会話していると、ジークフリートがしびれを切らしたのか、バン!と一発上へと向けて発砲した。


「いいか!いくぞ!どれだけ考えても、この威力には勝てないことを教えてやる!」

「あぁ。ただの人間が人間以外に勝てないことを教えてやる!」


 ……そのただの人間が死神を倒した、なんて誰も思っていないだろうがな。


『右!』


 上原の言う通りに右へと動く。本当だ、さっきまでいた場所に向かって撃っている……!


 乱射するにも、頭を空っぽにして撃つことなんてできない。必ず一瞬でもどこに狙いを定めるかを考える。そこを、心を読む上原がすくい上げ、オレに指示を送る。当然、特別能力推攻課の誰がどんな能力を持っているかなんて知る由もない。わかるとすれば黒池くらいだろう。オレの正体も知らなかったのだから、当然上原のことなんて知らないはずだ。


 シルバースワンはいつまで経っても足がつかず、逃げ続けてきた組織。一人も捕まっていないらしいので、上原の能力を知っている犯罪者はほぼほぼいない。知ってて対策もわかっていたとしても、人間なのだから1つや2つ物事を考える。その時点でゲームオーバーだ。


「避けた!?なら、これはどうだ!」


 バン!バン!

 バン!バン!


 2丁拳銃……ってやつか。これも上原のゲームで見た。今回は!?


『うわ、2丁拳銃かよ……。今はジークフリートから見て右を見ている……。左は撃っていながらもノーマークのはずだ。幻影桜花を発動させながら行けるかい?』


 幻影桜花を発動させ、必要に応じてムチで軌道を変える。毎回吹っ飛びそうな勢いに耐えながら、距離を詰めていく。


『よし!』

『今だ!幻影桜花で視界を遮りながらムチで縛り上げろ!』

「はああああっ!!」


 幻影桜花で視界を遮る。本当にデスとの戦いを思い出すな。あいつも銃の使い手だったからな。


 ムチがうねりを上げてジークフリートへと向かう。もう少し……もう少しだ!!


 ………………ッチュン!!


 ギィィイイイイン!!


「!!!」


 オレの顔の横を、銃弾が勢いよく掠めていく。それと同時に体からヤバい音が鳴り響く。……『絶対防御機構』が発動した音だ。


 ムチはジークフリートの体をグルングルンと巻きつけていき、蛇のように動いたムチは後ろに回されたジークフリートの手から銃を弾き落とした。


 ……オレのムチ、こんなだっけ?まぁいいや。マリフが何かやったんだろう。


「ぐっ……クッソォ!!」


 ジークフリートは本当に悔しそうに叫んだ。


「……っはぁ……はぁ……」


 何とかなったというのと、魔力の行使と、脳への負担でヘロヘロだ。オレはその場に座り込んだ。


「やった、リスト!やったよ!」


 両手を上げて喜ぶ上原。上原は黒池がムジナに抱きつく時みたいにオレの体をギュウウウウと抱き“締めた”。

 死ぬ。死ぬぞ、おい。聞いてんのか。心の声聞こえてるだろ、おい。


「上原」

「……わかっているよ」


 上原はポケットから手錠を取り出す。そして……。


「待てよ」

「何だい?」

「……リスト」


 ジークフリートはこっちを見た。幻影桜花や爆風などで切り傷、煤が目立つ。


「お前みたいな面白い奴、久しぶりだったぜ。正直、楽しかった」

「オレも。銃の相手なんて久しぶりだったからな。正直、一人だったら勝てなかったと思う」

「……ハ。次はタイマンで勝負だな!」

「やるときはお前、銃使うなよ?犯罪だかんな」


 ヤンチャな彼は、白い歯を見せて笑った。

 オレは……オレは、この先誰かにこうやって笑うことができるのだろうか。

 人間に「少しでも違うから」とかいうふざけた理由で石を投げられて人間が嫌いになったオレに、そんな人間に向かって心からの笑顔を見せられるのだろうか。


 オレは彼が羨ましい。


 これから逮捕されて自由を奪われるというのに、それをわかっているのに笑っていられるなんて。

 オレも強くならないと。力だけではなく、心も。


 オレは、師匠なんだから。

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