密偵たちの待遇
いつもありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ
一応、従者扱いの密偵たちもかなり忙しい。何せ、「まだばれていない」と思っているせいか、必死に従者の仕事と密偵の二足わらじな生活なのだ。
「……その、『わらじ』ってなに?」
またしても異世界言葉に困るヴァルッテリだ。
「セヴァトスラフ様語録によれば履物の一種だと」
「確かに一度に二足の履物は無理だね。いい言い回しだ」
説明してくれたヘイノに、思わず感心してしまう。
「お粗末な密偵ばかりですね」
ウルヤナですら、呆れ果てている始末である。アハトはわざとらしく従者としての仕事を遠慮なく振っている。そちらをまじめにやれば、ある程度の情報が手に入るとは思っていないようで、必死になって書斎で調べものをしているという情報がガイアからもたらされている。
「この集落程、密偵に優しい地域もないはずですが」
「いや、厳しいっしょ」
ウルヤナの呟きを拾った料理人が、呆れて果てたように突っ込みを入れた。
本日、ウルヤナは従者としての仕事は休みである。その代りに、住民たちに「正しい魔獣の解体方法」を教えている真っ最中だ。
「命の心配もなく、表の仕事をある程度しっかりしていれば情報を教えてくれる場所など、他にはありませんよ」
「……そーいう意味じゃねぇよ」
料理人に言わせれば、そこら中に隠密スキルや密偵に必要なスキルを所持する輩はいない。いてももっと低いレベルな上に訓練なんざ受けていない。ということなのだが。
「? 隠密スキル自体、冒険者は結構持っているかと」
それにここにいる住民の大半が忌み嫌われていた者たちだ。生き延びるためには、気配を消すしかない時もあるはずである。
「言い方が悪かった。そこら辺の埃並みに密偵を捕まえるための罠が仕掛けてあると、誰が思うよ」
「それに関しては、我々に言われても」
あれに関しては、ウルヤナも遠い目にならざるを得ない。確かにそういう意味では密偵に厳しい場所とは言える。
ただ、言い訳をさせてもらえるならば。
それを仕掛けたのは、マイヤと愉快な侍女たちである。ヴァルッテリは一切関与していない。それどころか、一度罠にかかりそうになったアハトが、大変な目にあっていた。
本人たちは、「密偵たちが煩いので、ちょっとした罠を仕掛けておきました」という簡単な報告しか受けていなかった。
あの罠関連のどこが「ちょっとしたもの」なのか問い詰めたくなってくるところではある。問い詰めたとしても「怪我すらしないのですから、大したことないかと」という答えが返ってくるだけだ。引っかかった密偵はあられもない姿を晒して、子供たちに笑われていたのだが。
ちなみに、子供たちどころか年老いた人たちもこの集落の住民は引っかからない……らしい。どこまで鍛えたのだという、泣きの突っ込みがアハトから出ていた。
とどめとして、「あれに引っかからなくなりますと、警備の緩いお貴族様の御屋敷から、情報を持って帰れますわよ」と、ベレッカがいい笑顔で言っていた。そして、それに同意するマイヤとガイア。マイヤを盲目的なまでに愛しているヴァルッテリもドン引きしていた。
「アベスカ領は魔境だからなぁ」
店主までもがしみじみと言い出した。アベスカ領が基準なら、仕方ない。皆、そう思ってしまう位には。
二足のわらじ……両立しえないような二つの職業を同一人が兼ねること。特に、江戸時代、博徒が捕吏を兼ねることをいった。現在では「会社員と作家の二足の草鞋を履く」など、両立が困難と思われるような職業を兼ねることにもいう。
というわけで、使い方として若干違います。




