一応、順調ですよ?
マイヤとヴァルッテリが結婚して、誰が一番得をしたのか? と聞かれれば、領民たちは間違いなくこう答えるという。
「そりゃ、先代公爵閣下だろう」
と。
それもそのはず。これ幸いと先代公爵は、とある集落に隠居したように見えるからだ。実際は、そこで知識を学び、執事たちに指示をしていようとも、見えなければ同じことなのかも、しれない。
「解せぬの」
「だったら、領都で働け!」
毎度のことながら、仲良く喧嘩をする祖父と孫。それを見る集落の人々の目は、生暖かい。
何せ、先代公爵は指示を出すのにヴァルッテリを使うからである。先代公爵も魔力はあり余っているのに、だ。
実際、こっそりと領都や帝都に行き、嬉々として情報収集をしている先代公爵。それとは別に、聖獣への治療や、伝承を集めるのに魔力を使っている。それがマイヤに大変ありがたがられ、好々爺と化している。
それに対して、やきもちというのもあって、食って掛かるヴァルッテリ。ただ単に「マイヤにどちらがよく見られているのか」を競っているだけとも言えるのだ。
当のマイヤは、仕事が捗れば文句は言わない。喧嘩が酷くなると仕事を押し付けて騙せるだけである。
「平和ですわねぇ」
とのんきにのたまい、侍女も同意するものだから、止める人間は誰もいない。
「公爵様たちいつ来るんだ?」
「さぁ? 公爵様もお忙しいらしいし。奥様も色々と采配しているらしいし」
止める人間が、公爵や公爵夫人というのは、これ如何に? という突っ込みはどこからも出ない。この集落の住民も大概だ。
そう突っ込みを入れたのは、またしてもレイスと神官だ。
最近では「集落の常識枠」とひとくくりにされて呼ばれている二人である。
本来レイスと神官は隣に並んだりしない。ましてや、苦労を共に分かち合うなどしない。
……のだが、ここではそれが日常と化している。
『神官殿、あなたが来てくれて助かっておる』
「……それは、集落の人々を一人で対処しなくて済む、という打算からですか?」
『それ以外になるがあるという? あなたとて、一人であったらそう思うであろうよ』
「集落でミサをするのは私一人ですからね! 嫌というほど分かりますよ!!
まったく、あんな馬鹿な密偵もどきば増えなければ……」
『我を道連れにしていた、か』
「当り前じゃないですかぁぁぁ!!」
という会話がしょっちゅう海辺の神殿でなされるのであった。




