非常識は感化する
帝都からの妨害がひと段落したところで、マイヤは再度育成に力を入れることにした。
そして、こっそりとニーロがレムリオ草のことを調べてくれたため、何とか用途は分かった。使い方は分からないままだが。
「レイスやアンデットが増えた地域に出る浄化草ですか。大地を浄化する作用がある。……どこまで信用できるか分かりませんけれども」
ニーロにその気がなくとも、偽情報を掴まされている場合もあるのだ。
その土地が浄化されている、いないというのはなかなか分かり難い。
「お嬢、立場上疑り深くなるのは仕方ない。だけどやってみないと分からんだろ」
現在育成されている調合師の中で、一番腕の立つ男、リオンが言い放った。
「まぁ、他の調合師や薬に影響あると悪いから、ここか海辺で俺が研究するわ。最近あがり具合が悪い」
「そういう時期ですもの」
「だからさ、気分転換。存外俺の性分に合ってたわ」
「海辺にもあるといいのですけれどもね」
「何で?」
「そうすれば、あちらにある神殿を研究施設として使えますもの」
「……聖獣様がいらっしゃるんだが」
「いない場所を使えば問題ないでしょう?」
そういや、こういう人だったね。そうリオンが呟いて、建築スキルを取得した住民に小さな小屋を頼んでいた。
そうなれば、ある程度人は集まるもので。
スキル成長が見受けられなくなった住民たちが「息抜き」と言わんばかりに鑑定やら調合を始めた。
「……根こそぎ取ってしまっては、次がないと思うのですけど」
「文献通りの植物だったら、その辺に出て来てもおかしくないだろ」
実際、他の集落跡にも何か所が見つかり、研究肌の住民たちは嬉々として採取に勤しむのだった。
「初めて知りましたけど、こういう研究もスキルがあがりますのね」
最近、研究に勤しむ住民の方がスキル上昇が早い。そう分かれば、他の住民たちも追従する。それでは薬の調合が追い付かなくなるため、泣く泣く調合師グループを三つに分け、研究、調合、その他スキル上げを交互に行うことにしたのだった。
非常識というものは、どうやら感化するようである。そう呟いたのは、一人神殿に残された神官と、海辺にいるレイスだったという。




