シスロリコン
ほんの息抜きに馬鹿なことやってみたくなるような話。
2XXX年――――VR技術の発展とともにそれらが人類の生活に密接に関わり合い、また無くてはならないものになった時代。
VR技戦師見習いの少年と年端も行かぬ幼女たちの物語である。
「って感じでどうだよ、鷹久?」
見るからにチャラそうな少年が空中に表示した文字列を鷹久に見せつける。
「どうとか言うな、というか今すぐ消せ!」
鷹久がその文字列を手で払うように動かせば、煙のように文字列は消え失せてしまった。
「何すんだよー、作るのに結構苦労したんだぞ!」
「うっさいボケ大井、そんなことより真面目に警護しろよ、遊びで来てるんじゃないからな!」
そう、彼らは遊んでいるように見えるが実は違う。
先ほどチャラそうな大井が表示していたVR技戦師見習い……正式には戦闘技術士なのだが略される場合は技戦師と呼ばれるものの見習いをやっている。
何故技術士に戦闘技術が必要なのかと言えば、発展し生活に身近、というよりも生活基盤となってしまったVR空間。
その中で所謂チートと呼ばれるテロ行為が横行し始めたのだった、その中でそれらに対抗するために作られたのがVR技戦師だ。
では見習いの彼らの現在の仕事はというと――――。
「おにいちゃーん」
年端も行かぬ幼女、もとい鷹久の妹である綾乃が手を振っている。
「あやのー」
鷹久も負けじと手を振り返した。
「真面目にねぇ……」
その様子を大井は冷めた目で見ている。
本日の仕事は、第三VR学園初等部二年の課外授業の警護である。VRテロ犯罪者のほとんどはロリコンでVR弱者である初等部生徒が襲われることは世間でもよく知られることであった。
そして学園内であればセキュリティが働いているため滅多なことではテロなど起きないのだがこうして課外授業などを行う場合は引率の教師兼プロVR技戦師一名とその助手に上級生が二名着くようになっていて。
鷹久と大井はその教師との面識や警護対象との面識があるなどの私的理由により抜擢されたのであった。
「なぁシスロリコン」
「誰がシスコンのロリコンだ、はっ倒すぞ」
「すまん俺にそう言う趣味はない」
無言の拳が大井のボディを抉る。
「で、なんだよ」
「ぐ……技戦師プログラムには一定の痛覚設定はあるんだからやめろよな、じゃなくてだな……来ると思うか?」
テロリスト達が。
「ああ、来るさ……綾乃は可愛いからな、後、みゆきちゃんとかさくらちゃんとか」
「シスコンじゃねーか、それにそのお友達まで、だからシスロリコンだっていうんだよ」
しかしロリコンとは今の世の中テロリストを指す言葉で侮蔑の対象である、そんな不名誉な呼び名鷹久は到底許せるものではなかったのでもう一発抉っといた。
談笑もつかの間ソレはやってきた。
VR空間が歪み、ゲーム系のエネミーが現れたのである、すなわちテロだ。
「そらおいでなすったぞ……ってありゃなんだ?」
「育成ゲーのスイーツモンスターに出てくるペロペロリンだな……」
巨大なホイップクリームの塊に足が生え、大きな舌が飛び出したようなデザインのモンスターがそこにはいた。
「なんつーか悪趣味だな、アレ中に入ってんだろ?」
「だろうな、チートモンスターテロなら複数出してくるはずだし単独犯か、舐められてものだな」
ペロペロリンだけに。
初等部の子らは既に引率の教師によって避難しつつあった。
それを追いかけようとするペロペロリンの前に二人が立ちはだかる。
「行かせるかよ! コンバート:ランス!」
大井が手にしていたデヴァイスと呼ばれる武器に変換するための端末を天に掲げると赤い閃光エフェクトと共に長い一本の槍と化す。
「フォォォム:ゲイィィ」
叫びながらかっこよく決めているがホモゲイと聞こえるのが難点だった。
「コンバート:ソード」
何も叫ぶ必要などはないと鷹久は静かに剣を構えた。
「てぇぇぇい!」
大きく振りかぶって投げた槍は寸分たがわずペロペロリンの脳天に突き刺さる。
「はぁぁぁぁああ!」
攻撃時には気合を入れるため鷹久だって叫ぶ、舌を切り落とすつもりで剣を振り下ろしたがズレてクリームなボディを切り裂いた。
「へっ、どうだ!」
『ペペペ、ロロ~ン』
ペロペロリンが嘲笑う、クリームのボディは切られた箇所はすぐさま元通りになるし、槍も全く効いてないどころか、刺さりっぱなしで帰還機能を封じられているのか大井は武器を失ったのである。
「お、俺の武器ぃぃぃ……」
「やはり駄目か……」
正直元のゲームでも物理無効持ちで厄介な相手であるのは知ってた。鷹久は大井のノリに付き合って攻撃を仕掛けただけであった。
「ど、どうするんだよ……」
「手はあるさ、ただ……時間稼ぎをして欲しい」
「どのぐらいだ?」
「三分もあれば……出来るか?」
「くっ、やってやらぁ!」
大井はそう言いながらペロペロリンに飛びかかった。おおいはペロペロされた。
「よし、やるぞ……サーチ:スイーツモンスター……」
ゲームタイトルを検索。
おおいはぺろぺろされている。
サーチ中……。
おおいはぺろぺろされている……ペロペロリンはふかいそうだ。
サーチ完了。
「大井! もういいぞ!」
おおいはちからつきた。
「仇はとってやるからな!」
鷹久は計画通りとほくそ笑んだ、シスロリコンを根に持っている。
「システム・ロードRe:コンバート!」
鷹久の持つ剣の形状が変わる。
「ティーカップ!」
その手に現れたのはティーカップ、スイーツモンスターのゲームにおける捕獲用アイテムであった。
『システム・ロードRe:コンバート』とは数あるVRゲームのシステムを読み込みデヴァイスをゲーム内のアイテムに変換する技術で複数のゲームを知る鷹久の特技の一つである。
なお、大井はこれをシス(テム)・ロ(ード)Re:コン(バート)――――シスロリコンと略す。
「これで終わりだァァァ」
カップを振り下ろしペロペロリンに頭部に叩き込むと、ペロペロリンはカップに吸い込まれ、カップからカチャカチャと二三度擦れる音がした後ぽちゃんと音がして静まった。
「捕獲完了」
カップをひっくり返せば白い液体が溜まっていて、スイーツモンスターの捕獲時はモンスターによってカップに注がれる飲み物が変わってくる使用でこれは牛乳である。
これにて事件は解決した、その場に残ったのはクリームでベタベタになった槍とよだれでベトベトになった大井だけだったという。
シスロリコンというのをかっこよく見せたかった的な感じ。
ふわっとしてる。
綾乃と鷹久、そして大井 お茶の名前という適当な理由。




