048.みんなで試着1
長めだよー。いい眺めだよー。
「それはどうなのよ……」
教室の一角、ずらりと並べられた衣装の前で、僕は軽く震えながら力無い言葉をはいた。
そりゃぁ誰だってそうなるだろと思う。目の前に並んでいる衣類の束を見れば、僕じゃなくたってこういう反応をするに決まっている。
試験が終わってから、たった三週間。
それなりに学園祭の準備も進みつつある中で、ちょっとした予定外のトラブルというやつが発生したのだった。
トラブルといっても、メイド服が完成していないというわけではない。僕が依頼していたようにちゃんと僕用のメイド服はきっちりできているし、問題らしい問題はない。
でも。
「いくらなんでも女子の制服って……」
そう。そこにはメイド服以外に九着。女子の制服が置かれてあったのだ。
紺色のブレザータイプの服は、まぎれもなくうちの学校のもので、おまけに言えば少しだけくたびれていて、新品じゃないのがひとめでわかる。
「みなさんにはこれを着て、二日間は完璧に女子生徒として学園祭に参加していただきます」
制服の前で実行委員が言うと、みんなからぶーぶー文句がでた。これじゃあさらし者じゃないか、とみんな大騒ぎだ。
ひとりだけ違うのは伊藤くんで、彼は学校で女子制服コスができるなんて……となぜか胸のあたりに手を置いてうるうるしている。もしかしたら彼が仕掛け人なのかもしれない。ウエスト調節とか絶対彼が手を加えているに決まっているのだ。
「宣伝活動も含めて、です」
反対意見は多かったけれど、ぴしゃりと実行委員がそう言うと、だいたいのメイド役の子はすぐさま沈静化されてしまった。
宣伝というのは、あからさまに女装をしているってわかる子がこの制服を着ていれば、どこの仮装だという話になるんじゃないのかということだ。
はっきりいって女装というものは目立つ。ちょっとガタイがいい感じの子が太股でも出して歩こうものなら、嫌でも人目をひいてしまう。
本当ならメイド服でやりたいところなのだろうけど、さすがに衛生上の観点からそれだけは却下になったらしかった。
「ごめん、僕の提案だったんだ」
「秋田くんって……」
うあーと頭を抱えている僕の隣で小声で謝ってきたのは秋田くんだった。
彼は少し申し訳なさそうな様子で、それでもちょっとだけはにかんだ笑顔をこちらに向ける。
「せっかくの学園祭なんだし、ぱーっとはじけてみようって思って」
はじけすぎですから。
そう、突っ込みをいれたくてもあまり言うと秋田くんが萎縮しそうなので、口をぱくぱくさせながら僕はこらえた。
もちろん音泉が制服姿になることはないだろうから、メイド服に比べればだんぜん危険度は低いんだろうけど。
でもさ。二日間女子生徒やるのって、みんなそんなにあっさりとOKできちゃうもんなの? 男の矜持というか、女装への抵抗というか、そういうのってないの!? うわ、さっき嫌がってた子達が女子の制服を手にとってにやりとしているよ!!
「って、この制服はどこから……」
「去年の卒業生のお古をね、かき集めてきたってわけ。サイズは伊藤くんが微調整してくれたから、たぶん平気だと思うよ」
「うぅ……なんか、どうなんだ……」
「あぁ、靴下はメイドと制服兼用で頼む。時代はニーソっしょ!」
制服ニーソ。制服ニーソ。
伊藤くんは、ちょっと脳みそ膿み膿みさせながら、小躍りをしていた。
ちなみにニーソっていうのは、オーバーニーソックスの事で、膝よりも上まであるやつのこと。ロング丈のメイド服だと、絶対領域なんて全然ないから、ニーソの必要性はまったくないんだけど、どうやら制服の時の事も考えてこれになっているらしい。
「世界が……世界が崩れていく気がするよ……」
へたりと、座り込んで僕は力無くつぶやいた。
「崩れたらまた作ればいいじゃない? ほらほら衣装あわせしてみようよ。もう週末本番なんだから」
そんな僕に秋田くんは無邪気な笑顔を向けてくる、なんというかメイド服を着たくて着たくてたまらないっていう感じ。
秋田くんってこんなに生き生きしてる子だったっけ?
「それで、どこで着替えるの?」
さすがにクラスメイトが作業している中で着替えるのは無理がある。そう思って尋ねると、すぐに答えが返ってきた。
「被服室の半分に着替えスペース確保したからそれ使ってくれ。他のクラスの生徒も使うから喧嘩しないようにな。向かって左が男子、右が女子のスペースだから、おまえら絶対覗くんじゃないぞ」
覗くと、それはそれはおぞましい学園生活がこれから待っているからな、と伊藤くんが脅しをかけた。
そりゃね……ここでそんなことやったら、三年間ずっとのぞき魔の称号がつきまとうことになる。僕はもちろん覗く気なんてさらさらないけど、メイド役の子のうちの一人が、えーつまんないー、とやたら乙女ちっくに言った。
「じゃあ、いこっ」
それを横目に聞いていると、ふと手に暖かい感触が走った。
柔らかくて、ちっちゃい手の感触。少し驚いた顔で相手を見ると、そこにはいつもとは違う秋田君の笑顔があった。
にこりと可愛らしく、いこっ、なんて言われながら手を引かれると、僕はなにやら妙な気分だ。
なんとなく、今、自分が音泉なのか、灯南なのかよくわからないような感じになってしまったのだ。
でも、そんなに考えている余裕なんてなくて。
僕は手を引かれるまま彼の後についていった。
「なんか不公平じゃない? 男子の着替えは女子が覗いてもいいって……」
「そーんなことないないっ。私達は善意の使徒であります。お嬢様方がちゃんと美しいレディになれるようにご奉仕するのが使命でありますっ」
しゅたりと、手のひらをおでこのあたりに軽くつけて敬礼する仕草をしているのは、僕達の担当になった、前島みちるさんだった。衣類のコトは専門家に尋ねるのが一番ということで、手芸部の面々がそれぞれ着飾るお手伝いをしているわけだ。
「俺が指導してもいいけど、人数が人数なんでね。すまん」
女物の服は複雑にできてるからなぁ、なんてカーテン越しに伊藤君の笑い声が聞こえた。隣のスペースとは薄い布一枚で区切られているだけだから、声はよく通った。たぶん他のスペースで着替えている子にも筒抜けになっていることだろう。
「メイドに奉仕する人間っていうのも、なんか倒錯してるよねぇ……」
「はいはい、榊原くん、ちゃんと脱いで脱いで」
一緒の簡易更衣室の中に入った秋田くんに愚痴をもらしていると、前島さんに着替えをうながされてしまった。
まったく。人前で着替えるのは好きじゃないのに。
いくらここが被服室の背後に作られている試着室だからって、何人かで試着室にはいるというのがなんとなくイヤなのだ。フォルトゥーナでこそこそ着替えているから、なおさらその違和感に磨きがかかってしまった。
もともとここって被服室で作ったものを試着するための設備なんだけど、仕切られているのはふわりとしたカーテンだけだし、中には前島さんも秋田くんもいるからけっこう恥ずかしいのだ。
「うわ、ほそっ」
それでも着替えないわけにもいかず。
とりあえず衣替えになってから着るようになったガクランを脱いで、まず上だけ下着姿になってみせると、前島さんが驚いた声をあげた。
「細いだろー。俺も採寸してびびったもんな。ウエスト55とかいって、男のウエストじゃないよ……」
「むしろ、女のウエストでもないと思う……」
頭を押さえて彼女はあぁ、と首を振った。
「でも、秋田くんだって相当細いじゃない」
なんか人間扱いされていないのがシャクだったので、となりでもそもそ着替えている秋田くんをみながら僕は言った。こうやってみてみても、骨格は華奢だしウエストだってそうとう細いのがわかる。
「58と55じゃ、やっぱ55のほうがスゴイだろう」
隣からの声に僕はむぅと声を漏らした。
そりゃ、数字の上では僕の方がすごい。
でもやっぱりね、女の子ぽくするなら丸みが全てだと思う。
ほんとウエスト55とかいったら、夏の買い出しの時の店員さんも結構参ってたんだよ。細すぎて服がないって。
「うへ、秋田くんもそんななんだ……いいないいなー」
彼女は僕らの全身をうっとりとなめ回すように見渡しながら、言った。
そういう自分はちょっとぽっちゃりさんで、最近ダイエットを始めたといって、巧巳が持ってきたケーキをがっつり食べていた人だ。
「でも……僕が驚いたのは、灯南ちゃんの胸なんだけど……それ、なにか詰めてるわけではないよね?」
「ほんとだっ。えっ、なにそれ、もしかして」
ちょっとちょっと、と前島さんは驚いた顔で僕の胸を凝視した。
ちょいとばかりふっくらしている胸板を見て彼女は驚いた声をあげたのだ。
でも、その後の彼女の反応に僕は絶句してしまう。
「榊原くんって、実は……女子、とか……?」
だって、ほら、男とは思えないくらい可愛いし、と彼女は困惑気味にうなずいた。
普通、男の子ならもっと胸囲はあるし、いくらなんでもそれは男子としては嘘すぎると彼女は僕に詰め寄った。
「……ないっ! それはない!」
なんてことを言い出すんだろう。
そりゃ胸は女子の象徴みたいなものなのはわかるけれど、それだけで女子だと言われてしまったら立つ瀬がない。身体の華奢さで言えば秋田くんだっていいセンいっていると思うし、僕だけが極端に華奢なわけではないのだ。
「なんかここ何ヶ月かなんだ。なんか、女性化……にゅうぼう? 今頃の年でなる子はときどきいるんだって。大人になると自然に治ってくるらしいし、上着きちゃえば目立つサイズじゃないから、気にしてなかったんだけど」
実は男装してる女子高生だなんてとんでもないというと、前島さんは、えーとまだ疑いの目を僕に向けていた。
「もー勘弁してよ。そんな漫画みたいなことできるわけないじゃん」
「そ、そうよねぇ……」
「それに、もし仮に僕が女子で、それを隠して学校に来てるなら、人前で裸になるだなんて危ない橋をわたるわけないじゃない?」
「そ、そういわれると、そっか」
そんな秘密があったら胸なんて絶対人前に見せないよね、と彼女はようやく納得してくれた。
「それで、何をどう着ればいいの?」
「ああ、ごめんごめん」
そんな掛け合いをしていたら少しだけ肌寒くて身体がぶるりと震えた。
メイド服の着方なんて、もう嫌になるくらい知っているんだけど、とりあえず知らないふりをして彼女にすべてを委ねてみる。
まずは前についているボタンを開いてスカートをはくように黒いメイド服に袖を通す。その状態で制服のスラックスをすとんと地面に落とした。ひやりとした風が太股を撫でるけど、もうなれっこになっているのでいちいち驚いたりはしない。胸元についているボタンを首筋までとめて、おまけに手首のボタンもとめる。
ここまでだったら黒いワンピース姿ってやつ。それから真っ白なエプロンを装着する。ホワイトブリムを頭に付けると最後にはいつも使ってる眼鏡をかける。ホワイトブリムはピンでとめるわけだけど、これはさすがに前島さんにやってもらった。自分でもできるんだけど、ヘアピンを使いこなせる男子高校生というのははっきりいって怪しすぎる。
これでもう、何処に出しても恥ずかしくない、立派な眼鏡メイドの完成だ。
メイド服は前と後ろがある程度きっちりしているので、女装初心者でもけっこう着やすいと思う。
「そういや伊藤くーん、胸ってどうするのー?」
ちょうど服をもそもそ着終わった所で、隣に向かって前島さんが呼びかける。
衣装っていうのは確かにあったけど、下着はそのまんまだもんね。
こーいうイベントでは、やっぱしあり得ないくらい胸とかぼいんにするのが鉄則だって話だし、ぺったん胸ではちょっと問題ありだ。
僕としても、音泉がどちらかというとぺったん胸(そりゃ、なくて当たり前)なので、これはもう、平均的な女子高生のちょっと上を行くくらいの胸のほうがいいとか思ってる。それこそ適当に布を詰めるくらいでもいいから、胸は作っておきたい。
でも。
「んーさすがにそこまでは予算的にきつくてなー。いちおう胸の所になにか仕込めるようなデザインにはしてあるからノーブラってことで……」
「えーー! ちょ、それはだめよ!」
思わず出た反論に、隣からぬぬぬっと小さなうなり声が聞こえた。
「何をいっているんだ! 時代はぺったん胸なのだよ! スレンダーなボディなのだよ! いいかい、男が女コスをやる時の最大の利点はそのスレンダーさなんだよ! 胸がない、胸がないとは、よきことかな、ああ、ぺた胸最高!! 君にはわからないのかい、この感覚が!!」
「わ、わかりません……そんなん……」
続いて、そんな熱い反論が返ってくる。もう姿を見なくても拳を握り締めているのが簡単に想像できてしまう。
フルフル首を振っていると、彼女は少し顎に手を当てて思案を巡らせていた。
「っていうのは冗談だとして。俺の貸してもいいけど、サイズあわないだろうしな……おまえらは、自分の下着を男に付けられるの嫌だろ。だったらこの際、下着の線とかでるのは仕方ないって……」
「俺のって!?」
「まじかよっ!?」
隣から出る声に、秋田くんが敏感に反応した。もちろん、反対側で着替えている男子達からも同様の言葉が漏れて聞こえてくる。
そりゃ……男子高校生が女性下着を自宅に持っているなんていったら、普通そういう反応だよね……あはは。はぁ……。
「ああ、コスプレ用に下着あるんだよ。さすがに下着売り場一人でうろうろしてたら、売り場のおばちゃんに呼び止められたね」
「って、そこまでするか……」
「コスプレ用ですーって話たら、もうおばちゃんと仲良くなって、下着の知識とかいろいろ教えてもらったよ」
でも、肝心の伊藤くんはまるっきり動じることなく。
恥じらう気配一つ無くそう言ってのけた。
ある意味、ここまで堂々としていると、おかしいのは自分のほうなんじゃないかと思ってしまうから不思議だ。
そしてそんなわきの雑音を耳に挟むことなく。
「……でもなぁ、この二人……これで下着無しだと……あーでも…うー」
隣からの声が聞こえているのかいないのか、前島さんは、それじゃさすがに犯罪だろうし、あぁ、でもっ、なんてうめき声を漏らしていた。なんだか知らないけどずいぶん悩んでいるみたい。
「よっしゃ! 決めた。当日、二人には私のブラかしたげる。下はちょっと抵抗あるだろうから、ブラだけね。洗わないで返してくれたら、そのまま写真つけてブルセラショップいきってことで!」
そして。
彼女はくねくねしながら、そんな事をいってのけた。
ああぁ、手芸部の面々はみんなそういう人達なのですか!
「って、サイズ……あうの?」
「んーいちおー二人とも、思いっきり細いから平気じゃない? 幸い、アンダーは二人とも私と一緒だし……」
僕は、彼女の身体を見ながら尋ねた。
僕の胸のサイズはこの前、茜さんにはかってもらったときは、ぎりぎり65のAだったからトップはないにしても割と標準的な、ともすれば華奢な女の子のサイズだと思う。普通の男子が80とかっていうんだから、男子としてははっきりいって規格外だ。
とまぁこんな風に、いろいろ知ってることはあるわけなんだけど、純粋に胸の大きさが違うことだけを疑問視してるように僕は装った。もちろん家に女性下着やらがしまってあることも当然ナイショだ。そんなのがばれたら大問題になってしまう。
でも。
「……トップは、どれくらいなの?」
そんな僕の隣で、秋田くんは臆面もなくそんなことを言ってのけた。
一瞬。本当に一瞬だけ前島さんの顔が固まって。
でも彼女はふにゃりと頬をゆるめるとにこりと微笑んで、なんでもないという風で言葉を続けた。
「うわー秋田くん、実は詳しかったりする? んとねーいちおー65のEでござい」
「……でか」
すると隣から、そんな声が聞こえてくる。
たしかに僕もその数字をきかされると大きいなぁとは思うけど、さすがにめんとむかってそういう失礼なことは言えない。
「うっさいよ、伊藤くん。あんただいたい見ただけで、サイズくらいわかってるでしょーが」
「いやーでも、おまえ、着やせするっしょー」
はっはっはと愉快に笑う伊藤くんの姿は、もう、それこそ普段教室の中にいる彼ではなかった。なんか学園祭っていうものの熱気のせいなのか、みんないつもよりもずいぶんはっちゃけた感じになっている。
普段なら言えないこと、普段なら抑えることが、今日は抑えられていない感じなのだ。
「だとしたら……やっぱパットとかって入れるべきなのかなー?」
「ストッキング丸めていれておけば? よく漫画とかではそうしてるじゃない」
古いストッキングなら大量にあるから、言ってくれれば提供すると彼女は言った。どうにも、部の方で材料かなにかに使うために取っておいたそうなのだ。
「あーなんなら、俺のパット貸してやってもいいぞ」
「へ?」
隣からなにやらとんでもない台詞がでて、今回はさすがに僕まで唖然として声を漏らしてしまった。パットを持ってる男子高校生って……
「つーか、コスプレイヤーならそんなもん持ってて当たり前だろ。基本だよ基本。ぺた胸キャラなら問題ないけど、漫画やアニメのキャラなんてほとんど爆乳なんだし。肌色に合わせて二種類あるから、丁度良いだろ。もちろん洗浄にはこつがいるから、そのまま使って返してくれればいい。なに、俺はブルセラなんかには持っていかないから安心したまえ」
「そこまで……やるか……」
ここまで徹底すると、もうすごいとしか思えない。
女装コスは変態っぽいとか、キモイとかいろいろ批判があるけど、ここまで突き抜けていたらある意味すごいと思う。きっと露出が多くて胸元が見えるキャラをやるためだけに、彼はパットを二種類も持っているんだろう。
「じゃー、胸パットはそれでいいとして。髪型とメイク、弄らせてね」
「え……メイクもするの?」
「あったりまえよー」
問題が解決すると彼女はドライヤーを取り出してブローを始めた。
まずは秋田くんからだ。もともとさらさらだった髪の毛はちょっと櫛を通すだけで、もう完璧なショートボブになった。僕の方は、ちらっとみただけで、やんなくていいやといって終わってしまった。もともと、弄る必要もないくらい完璧な女の子の髪型だもんね。
月に一度は茜さんに髪の毛弄られるし、日々のお手入れだってばっちり。ウィッグ被るから見えないと思われるかもしれないけど、これがまた地毛も多少は見えるので、ちゃんとケアはしておかないといけないんだよ。
「うわっぷ」
それが終わると、今度はお化粧。
眼鏡をいったん外されて化粧水を入念に肌になじませられる。ひやりとした感触がほほを撫でた。叩き付けられるようにして塗りたくられると、ちょっとだけ嫌そうに僕は顔をしかめた。
やっぱりお化粧のやり方はずいぶんと荒っぽい。
プロと比べてしまうとやっぱり高校生だなって思ってしまう。というか、僕がやったほうが断然上手く仕上げられそうだけど、とりあえずお化粧をばっちりこなせる男子高校生なんてあからさまに怪しいのでやめておいた。
普通は……そう。普通は秋田くんみたいにちょっとくすぐったそうに、困惑しながらうけるのものなのだろうから。
「よぉし、これで完成っと。良い仕上がりですよ、お嬢さんがたっ」
彼女は満足そうに言うと、カーテンを開けて外にあるおっきな鏡の前に僕らを並べた。
さぁ試着です。サイズもバッチリでした。
試着室でおとこのこを女装させるのって、たのしーですよねーー。
この頃は作者も描写それなりにしてたんですが、最近は行動の表現の方がふえちまいました。
はい。試着はまだ続きますよー。




