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003.審査とあくの強いオーナー

本日更新分3/3です。

 も~ちょうどよかったわ~。あなたみたいな子が来てくれてっ。

 正直こまってたのよ~。

 も~ね、いろんなことは想定して仕事してるけど、こればっかりは想定外だったわ。

 なかなか、いないのよね~イメージぴったりの子って。

 やっぱり従業員は、地元でそろえないといけないじゃない? アルバイトなわけだし。

 となるとね~、これだけ中途半端な片田舎だと、なかなか……

 わたしが求めるのは、純粋さを持ったみずみずしい果実。でもね、天然でも形がよくないと、だ、めっ。

 こういう町だと、もう女の武器をきっちり手にいれちゃった子ばっかりだったり、妙にこびた感じの子ばっかりだったりして、大変なのよ。あん。まぁ、そういう子だって上手くお店を回していけると思うわ、でもね……わたし、夢を見てみたいの。

 都会に、人がいっぱい集まるのは、当たり前の事なのね。周りにはいろんなものがあって、そこに出店すればお客はいっぱい入ると思うわ。でも、それって、他の用事できたお客のおこぼれをもらってるだけじゃないかしら?

 今まで姉妹店をいくつもプロデュースしてきたわ。でも、それじゃ物足りないのよ。

 わたしはね、そうじゃなくって、このお店自体があるからこの町に来たいって思ってもらえるようなお店にしたいの。

 だから、お店で働くメイドさんは、完璧なメンバーで臨みたいのね。

 うちのメイドは、キャラクターよ。ただのメイドじゃないの。あなたはサービスを提供するんじゃなくて「あなたがするサービス」を提供するメイドになる。お客もそれを望むの。あなたがするメイドだから価値がある。だからお客は安らげる。

 あなたにはなにか、すごい素人っぽい魅力があるのよ。それでいて暖かみがあるような。きっと育ちがいいのね。今時あなたみたいな子は珍しいもの。

 それを発揮してもらうだけでいいわ。

 ああ、外見に関しては、こちらの言うことを聞いてもらうわね。あとでスタイリストがくるからその時に一番貴女に合うスタイルを作ってもらうから。

 美容には気を遣うこと。太陽の光は極力さけてね。

 日焼け止めとか、使ったこと有る? ないか……じゃあ、これを使うといいわ。

 見たところ……お化粧とかって、全然してなさそうね。まぁ、中学出たばっかりだったら、そんなものかしら。

 でも、これからはそれじゃ、だめ。

 貴女は清純派で売っていくことになると思うけど、清純派だってそのまんまでなれるもんじゃないの。素肌に見えるメイク、なんてのも、あるんだからね。

 あとイメージが固まったら、キャラクター商品も作らせてもらうから。

 名前は……んー本名のままでいい? ああ、恥ずかしければ別のでもいいわよ。

 音泉となみちゃんか……本名の灯南ちゃんって名前も可愛いけど、こっちも良い感じねっ!

 いい? 貴女が人から好かれるようなメイドになれば、キャラクター商品もいっぱい売れるようになる。そうすればお給料も上乗せになるから、是非がんばってね。




 面接は、ほとんど一瞬で決まってしまった。

 まず電話をかけて面接に行って、少し話して即採用。

 面接を担当した千絵里オーナーという人は、僕の顔を見たとたんにくねくねして、あぁ~んっ、最高っとか悶えていたくらいで、まったくもって男だなんてばれることはなく、すんなりと決まってしまった。


 せっかく気負って行ったのに拍子抜けだ。

 というか、ぽかーんとしてしまったというほうがいいだろうか。

 ほとんどなにも弄ってないのに女子に見えてしまうのは、こういう場合良かったことなんだろうか。いや、今の状況としてはたぶん、良かったことなんだろうね、ははは。


 高校生にもなって僕は声変わりを全くしていない。合唱だってソプラノパートにいれられるくらいで、おまけに言えば、その環境で違和感がないなんてからかわれるくらいだった。今日だってごく普通のジーパンにラフなTシャツっていうものすごく普段着なのに、まったくもって不審がられないのには少し哀しいものがあるけど、まぁ背に腹は代えられない。


 先入観というものは恐ろしい。きっと千絵里オーナー()は女の子が来るものだと思っているからこそ疑う余地すらなかったのだろう。

 ちなみに実際に勤められるかというと、いくつかの問題さえクリアできればなんとかなるのだろうと思う。


 幸い、高校生ということもあって、他のバイトの大学生とはシフトが違うから、うまいこと着替えで他の従業員とかち合うこともないみたいだった。それでも、一緒の着替えとかになってもなんとかできるように、いろいろ考えておいた方がいいのかもしれない。


 そしてあとは他の従業員との関わりといったところだろうと思う。

 千絵里オーナーはやーんとすぐにだまくらかされてくれたけれど、他の同年代の女の子の視覚まで果たしてだませるのだろうか。理由を説明してというのは却下だ。どこでどう学校に伝わってしまうかわからないし、生活がかかっている以上はこのまま女子としての自分を押し通していくしかない。


 でも、そんな不安は、面接後すぐに払拭されることになる。

 面接官だった店のオーナーの千絵里さんという、くねくねしたおにーさんとの話が終わったらすぐに、スタイリストさんが来たのだ。


「うわ~ほんとだ。千絵里ちゃんがいう通りだ。いいねぇいいねぇ~」

 ちょっとぶっきらぼうな口調のこの人は姉妹店すべてのメイドさん達のスタイリストをしている、神月茜(こうづき あかね)さん。

 見た目は小柄なおねーちゃんで、見た目も若い。女の人の年齢はいまいちわからないけど、自称十八歳なのだそうだ。(千絵里さんの話によると二十二歳らしい)

 彼女は、鏡台の前に簡易散髪所をつくって、さっさと髪を削っていった。

 本当に削るって言葉がぴったりな感じで、長さはほとんど変えないで、先の形だけをいじっていく。


「音泉ちゃんは、十五歳? やっぱり若い子はいいね。髪も瑞々しいし」

 二言三言曖昧に返事をしているうちに、はさみが止まった。

 そのまま、鏡に映った僕の顔をじーっと見つめて腕を組みながら、んー、となにやら考え込んでいるようだった。


「んーやっぱりこの子の場合ロングのイメージだよなぁ。少年っぽい瑞々しさも持ってるけど、清純派の黒髪萌えっ! って感じで。色はこのままでいいとして……」

 軽く切れて肩にかかっている髪を払ってから、茜さんは鞄を取り出した。メイキャップ用具が入った黒いボックスではなく、別に持ってきてた焦げ茶色の鞄のほう。


「カツラ!?」

「うわ……ほんと音泉ちゃんって、天然というかなんというか……今時珍しい子だね」

 そこから出てきた黒くてもじゃもじゃした物体に、思わず僕は驚いて声を出してしまった。

 だって、そこに握られているのは黒色の毛の束だったのだからしかたない。

 普通、男の子というものは髪で遊ばない。いや、同級生とかでだいぶ気合いの入ってる子とかいるけど、でも、さすがにこういった髪の毛の束をつけているのはいない。こんなのを使うのなんて、せいぜいが年末隠し芸大会とかのイベント時くらいなものだろう。


「ウィッグって言ってあげて。まぁカツラといえばカツラなんだけどさ」

 茜さんは苦笑しながら、その毛をセッティングしていく。

「音泉ちゃんさえよければエクステにしちゃってもいいんだけど……」

「エクステ?」

「うん。ヘアーエクステンションの略でね、つけ毛を直接他の髪にくっつけて固定しちゃうから、一ヶ月やそこらもつんだけど……」

 茜さんは鏡越しに、お願い事をするような視線を向けてきた。

 普段からエクステとかいうのをやっちゃったほうが、きっと自然に出来上がるし、いいってことなんだろう。


 でも……

「さすがに、それはちょっと……みんなにからかわれるし」

「そっかー。それなら、うん。取り外しはウィッグの方が簡単だから、こっちでいこうね。いちおーこういうのは自分でやることになるから、よく見ておいて」

 困ったような声を漏らす僕に、茜さんは気を悪くした感じもなく、丁寧にウィッグを付けていった。


 毛が足されて、最後にホワイトブリムをかぶせられる。

 ホワイトブリムっていうのは、頭の上にのせるレースのついた髪飾り(?)のことだ。


「はい、これで完成。このイメージだと5-fタイプのヤツをちょっと変える感じかなぁ」

 正面の鏡に映し出された僕の顔を見ながら、茜さんは僕にわからない言葉をつぶやいていた。

 けれど、僕はもうそれどころではなくって。鏡に映し出された姿に釘付けになってしまっていた。だってほら、今の服装とホワイトブリムがちぐはぐなのは大目に見るとして、それでもいままでの感じよりもだいぶ身体が軽くなった感じがするんだ。


 おまけに初めての背中にかかるくらいの長髪は、驚くくらい僕の小さな顔に合っていた。むしろ短いままだと勿体ないとすら思ったくらいに、ロングの髪の僕は魅力的だった。

 服装はさっきと同じボーイッシュな感じなのに、これだけでどこか少し活発的なお嬢様に見える。

 その姿はもう、普段の僕とはまったく別人。これなら、僕が灯南だってことを誰かに感づかれる心配もないだろう。本当に偶然だけれど、髪型を思い切り変えてもらえたのはありがたかった。


「あ、音泉ちゃん。試しにメイド服着てもらってからメイクとかも弄りたいんだけど……今日はまだ時間平気?」

「……まだ、平気です」

 鏡から目を離せないまま、外が明るいのを見て返事をする。


「じゃー着替えてきてもらおうかな。衣装は5-fだから……ちょいまってね。いちおー千絵里オーナーの話を聞いて、あらかじめ絞っておいたんだけど。あったあった」

 茜さんは一人ぼつぼつつぶやきながら、先程車から大変な思いをして運び込んできた茶色いバッグの中からメイド服を選び出した。わざわざ、かなりの数のメイド服の中から、僕に合いそうなのを見繕ってきてて、最終的に僕を実際にみて、5-fとかいうタイプに決めたらしい。


「まぁ、サイズがちょ~っと合わないかもしれないけど勘弁してね。それ、メイド服決めるためのサンプルだから、みんなMで作ってあるの」 

 茜さんは苦笑しながら、そのメイド服を僕に手渡した。

 渡された僕は少し複雑な心境だ。


 だって、そのメイド服は、僕の身体より一回り大きかったのだから。

 女の子のMの服が、ぶかぶかな僕は……男としてどうなんだろうと思う。

 けれど、どうしてもやらなきゃいけない。ここでうまくメイドの仕事をやりきることが、僕達家族の生活をなんとか立て直すためのたった一つの道なのだ。

 そう思い直すと、僕はそのメイド服を持って、更衣室に行く決意を固めた。

灯南ちゃんは、私の男の娘キャラの中では一番ちっちゃいかもしれません。

基本、女子の平均身長+ちょっとで作り込むのですが、この子だけはマイナスだったりします。

思えば努力無しで女の子に見える子って、初公開なような気がします。他はなんでかんでメイクだったり、服装だったりの技術でカバーしてる(気になってるだけのもいるけど)ので。

ようやっとメイド服を着ましたが、その描写はちょっとお預けなのですよ。

まだ下準備なのですからー。

まだまだ原石なので、ここから磨き込んで、あの夏イベントの「音泉ちゃん」に無事にたどり着いていただきたいものです。


次回更新は、来月中を予定です。でも割と早めにいけるのではないかなぁと。

メイド喫茶デビューまではちょっと走りたい感じデス。

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