おぅいぇす!女子高生☆
【各々の休日】
『神坂の休日』
朝は父の声で目が覚める。
「冬季ぃ!いつまで寝てるんだ。朝の貴重な時間を無駄にするんじゃない。父さんが学生の頃は――」
父の昔話は神坂の心には届かない。というより、はなから耳に届いてすらいない。
むっくりと布団から起き上がり、廊下を走ってリビングに向かう。マッサージチェアでくつろぐ母に甘える。と言っても相手にはしてもらえない。完璧に無視だ。だがそんなこと、彼女には関係のないことだ。
一通りひっつき虫をした後、優雅にブランチ。時刻は正午近く。
その後、二階にある自室で一人を満喫。ただ勉強机に座っているだけ。机の周りは白のカラーボックスで囲まれていて、机に近づく道は一本のみ。どこの位置からも、座っている彼女を確認できない。ちなみに部屋は、物が散乱しているせいか、驚くほど狭く汚い。本人は自らの部屋のことを【腐界】と呼んでいる。なんせ足の踏み場がない。そんな中で、時折ニタニタしながら、ずっと座っている。彼女は自他共に認める変人である。普通変人と呼ばれると少しムッとするであろうが、神坂は変人であることに対して誇りを持っている。しばらくして、一人が寂しくなってきた。外はすでに薄暗い。そうして弟に遊んでもらうために思春期真っ只中の弟の部屋にノックもなしに突入していくのであった。
『大西の休日』
午前六時。いつもセットしている目覚ましが鳴り響く。布団にもぐっている大西はもぞもぞと動き、頭まですっぽりと被った布団から腕を一本ニョキッとだして、止める。
午前九時。大西はまだ寝ている。熟睡だ。
正午。もぞもぞと動き、頭だけが出てきた。黒くて長い髪が枕から雪崩れている。日が顔に当たっても起きる気配がない。
午後三時。ここでようやく変化が起きた。もぞもぞと動いた布団の中から腕が二本出てきた。それは枕元の目覚まし時計を鷲掴み、顔に近づけた。
「――三時か……。起きよう」
ここでようやく起床。歯を磨き顔を洗い、髪をとかし台所へ向かった。適当に食べ物をつまんだ後、リビングでだらだらとテレビを観賞し。特に動くこともなく外は暗くなった。
彼女はその日、午後十時には就寝していた。
『池内の日常』
安音は眠った。その時刻午前三時。パソコンの電源を落とし、ベッドにもぐりこむ。
そして、母の声で目が覚めた。
「安音ぇ!出かけるよぉ」
その時刻、午後一時。この時、安音の起きるか起きないかの判断は行き先で決まる。
――どこに行くんだろう……
夢現に考える。
「何かおいしい物を食べにいこ~」
この母親の言葉は決定的だった。
その日の夕方、満腹でご満悦の安音の姿があった。
『中谷の日常』
彼女の休日の始まりは、驚くほど速い。午前四時ごろ起床。もちろん家族はまだ夢の中。一人静かにリビングに下りる。暗い部屋の電気をつけ、ついでにパソコンを起動する。インターネットの動画サイトや書きこみサイトをはしごするためである。そこで面白い動画や記事を発見するのが楽しいのだ。また、しばらく時間がたてば、彼女曰く「ゴールデンネトゲタイム」という物になるらしい。ネットゲームを楽しむのに最適な時間なそうだ。家族にも邪魔されることなく存分に楽しむことができるのだという。これが彼女の家での楽しみなのだ。
彼女の家はペットを飼っている。ミニチュアダックスの雄だ。毛の色はクリームで、扱く愛らしい。餌をくれる人にはよくなついているが、彼女にはめったによってきてくれない。ネットゲームを終えてからペットと、若干触れ合う。
食事の時間。自室にいる妹を呼んだ。
「エミ~」
すると妹ではなく犬が来た。彼女の目の前にちょこんと座り尻尾を振り、物欲しそうな目でじっと見上げてくる。
それに静かにデレて、ご飯の量とおやつの量をいつもよりたくさん上げた。
結果、平均的なオスのミニチュアダックスよりも少しポチャッとしている。
【普段の生活】
『イケメンな神坂』
神坂は基本イケメンである。
「あっヤバイ。筆箱忘れた」
中谷玲子はその日筆箱を忘れた。
「神坂、筆箱忘れたからシャーペンとか貸して?」
筆箱とその中身一式を手提げ袋から取り出し、渡した。
もちろん、神坂はいつも使っている筆箱をちゃんと持ってきている。中谷に渡したのは予備だ。
「誰か忘れる予感がしたんだよねぇ」
「さすが神坂。イケメンすぎる」
彼女は筆箱や授業で持ってくるように言われた材料などは、言われた量の二倍は必ず持ってくるのだ。クラスの中には忘れてくるものもいるため、そういうとき彼女は持ち前の男前精神で輝くのだ。
イツメンで集まっている朝。中谷が大事なことを思い出した。
「宿題やってくるの忘れた!」
「誰か、やってない?」
「神坂!」
「ふっ……ブツごと忘れてきたぜ。やったのにぃ!」
これも神坂にはよくあることだった。
『ちょっとずれたJK』
神坂たちはちょっとずれたJKである。
休み時間には四人で集まっている。それは普通だ。ただ、会話の内容がちょっとアレだ。
「ホルモォォォォオオオオオオオオオン!」
こう叫び出すのが大西だ。
「くいてぇぇぇぇぇえええええええええ!」
安音が続く。
「遊びたいよぉぉぉぉ!」
玲子が言った。
「レイコ、JK、JK」
神坂が玲子に諦めを促すような表情を向けた。
この時のJKは「常識的に考えて」だ。
「神坂、JK。何とかなるよ」
玲子は満面の笑みでグッと親指を立てた。
そしてこの時のJKは「情熱的に考えて」である。
「あの量の提出物は、さすがにね……」
大西がポツリとマジレス。そうコレは毎年恒例、玲子の終わらない夏休みである。
夏休みがとっくに終わっているにも関わらず、夏休みの宿題が残っているのである。無論、それぞれの提出期限など玲子にはあってないようなものである。神坂も同じような状況であるものの、なぜか提出期限には間に合う。これが神坂と玲子の違いであった。
「レイコ」
玲子は安音を見た。
「ドンマイ」
物凄くイラッとするが、感動するほどの高いクオリティのドヤ顔がそこにはあった。
『鞄の中』
安音の鞄の中は基本食べ物しか入っていない。だが食べた後のゴミはほとんど入っておらず、綺麗だ。
大西の鞄の中は、基本ファイルだけが入っている。その他は筆箱が入っているだけの鞄。
玲子の鞄は普通だ。教科書とお弁当、小さめの小銭入れ。女子高生らしい鞄だ。
神坂の鞄は基本的に汚い。男子よりも汚い自身が彼女にはあった。お菓子のゴミが鞄のポケットに大量に入っていたりする。それと一緒にぐちゃぐちゃの凄く古いプリントが出てきたり、教科書が入っていたりする。
『ローファー』
「ねぇねぇ、ローファーの底見せてぇ!」
神坂が大西に頼んだ。
「はい」
大西が脱いで底を見せた。
そのローファーの綺麗さを見て、神坂は言った。
「うそ、何でそんなに綺麗なの。神坂のなんて凄いすり減り方してるし、かかとには穴まで開いてるし、おまけに中はベコンベコンになってはがれかけてるし」
「お店で直してもらえばいいのに」
「ああ!」
神坂は衝撃を受けた。