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神卵 ― 神様転生のはじまり ―    作者: 万代 やお
第3律 星々をなおすもの
54/55

48 安心な全裸、紳士

 イチモツの油断ならぬ動きの所為で、シュランはとんでもない大破壊を炸裂させてしまったことに焦った。


「くそ! おさまれ、俺の下ツノ! 親方の女装姿を思い出せ。おさまれ! おえー」


 新年会であったゲオルグの女装姿を脳裏に浮かべ、沸き上がった吐き気に後悔しながら、シュランは自分の股間に言い聞かせた。下ツノさんは、これからはじまる未知の部族との対面に少々、興奮してしまったようだ。


「迂闊だった。下ツノの動きまで考えてなかったわ」


 上のツノをごりごりかき、シュランは憎らしげに下ツノを見て反省した。


 シュランはへなへな~と平常心を取り戻すと、周囲を見回した。いまだ大量の砂ぼこりが舞っていた。

 その中に影がちらほらと見えてきた。


「よかった……大きな怪我人はなしか」


 シュランは安堵の呟きをもらした。

 仮面の部族達は土砂や岩にまみれも、全員が無事であったようだ。

 砂ぼこりが晴れ、部族の全員が自分に意識を向けているのをシュランは感じとった。


「うむうむ」


 シュランは腕組みし、ここは紳士的に礼儀正しく原住民達と交渉しなければと考える。何事も初めの印象というものは大事だ。敵意がないことを証明し、細心の注意を払わなければならない。


「やあ!」


 と強い一言を飛ばす。高位精神体が放った思念は、彼らの脳内に意識的な声、テレパシー衝撃となって伝わり、原住民達の注目を一気に集めた。


「見て通り、俺はあやしいものでない!」


 十八歳以下の子供には見せられない全裸な男を見て、原住民達は心の底から思い知った。


「信じられないほど、あやしいものがいる!」


 と。


「あれ……反応がないな。恥ずかしがっているのか? 人見知り?」


 シュランはちょっと考えて、閃いた。


「そうか! 仮面を被っているから解らなかった。その中には女の子がいるんだな。さすがに、大事な部分を隠さないと失礼になる。なにか、葉っぱ的な隠すものを……」


 そこで動いたのが手乗り炎塊スルトである。炎塊スルトはひょろひょろ~と飛んで、シュランのイチモツの上に麗らかな乙女のように鎮座した。


 それから、炎塊スルトは神々しく白光した。


 なんと股間だけがまばゆき謎の光に包まれたことによって、シュランは十八歳以下の子供にも見せられる安心で立派な紳士の男に変貌したのだ。


 大事なことだから、繰り返そう。


 シュランはその股間が謎の光に包まれたことによって、十八歳以下の子供が見ても安心で人類史上、稀にみる全裸男に変貌したのだ。


「おお! ありがとう! これなら、いける! ナイスなドレスコードだ!」


 シュランは拳を力強く握りしめ、真っ白に輝く己の股間に、いけると確信した。


(蝶ネクタイを首元にほしいな…… )


 などとシュランはアホなことを考える。


 そして、炎塊スルトは口笛みたいな曲を吹きだした。シュランにとっては口笛であったが、ご存じの通り、高位精神体がしたことは、マイト量や霊格が加味され、下々のものにとって、大きな出来事と伝わってしまう。


 スルトの口笛は、原住民達にとっては何十人もの演奏者が奏でるオーケストラの壮大な曲として聞こえてきた。地球的文化で語るのなら、シュランの股間からはベートーヴェンの交響曲 第五番『運命』第一楽章、あるいはワーグナーの『ワルキューレの騎行』などに似た曲が勇ましく発生していたのだ。


「初対面の印象は大事。ムードのある曲もついた。これで大丈夫だろう。驚かないでくれ。もう一度いう。俺は決して怪しいものでない」


 シュランは褐色の逞しい肉体を誇示し、両手を広げ、股間を光らせ、その股間からはオーケストラの曲を響かせ、そういった。


「……!」


 仮面の部族達は……並の神経では受けとめることのできないかなり怪しいものに戦慄した。


「見ての通り俺は全裸。武器なんて所持してない。怖がることはない。俺は真っ裸なんだから! 俺は君達とお話がしたいんだ!」


 股間を光らせる男――シュランは白い歯もきらっと光らせ、爽やかな好青年を彷彿させる口調で近づいてくる。


 原住民達はシュランの安心な紳士ぶり、もとい、理解の範疇外にいる異様な全裸ぶりに恐怖した。


「俺と友達になろう!」


 タンターン! タンターン!


 と股間からオーケストラの曲を激しく鳴り響かせ、シュランはゆっくりと歩いてくる。


 二部族の全員は……


(―――これは絶対、友達になっちゃいけないモノだ!)


 そんな一致した見解を心の中で絶叫したのであった。

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