47 魔法の眼鏡とイチモツ
高位精神体と呼ばれる神体の世界には、人間が扱うような魔法や魔術も存在しているが、ほとんど使用されることは皆無である。
人間が魔術や魔法で発動させた火炎や氷結はせいぜい、運動場ぐらいの広さに被害を与える程度であり、大規模魔術になれば街を壊滅させる威力もあろう。
だがそれらは惑星上で使用することを前提としたものであり、何万光年の宇宙空間での使用を想定すると、魔法や魔術に見られる呪文という言語を用意いて魔力を活性化させ奇跡を起こす方法では限界があり、威力が小規模となる。
宇宙で呪文を発せられないという環境も問題の一つであるが、言葉自体が宇宙空間の存在感に圧迫され負けてしまうのだ。
また魔力は所詮、惑星に住むものが扱う力であり、よって広大な宇宙空間や銀河規模の広さに対応した上位の力、それこそ創世を行える力――マイトエネルギーが必要不可欠となってくる。
そこで発展したのが、マイトエネルギーを力の源として空間に立方体や多胞体を作成し、思念を強く刻むことで、奇跡を起こす『空間印術』である。己の力を発揮できる場所を無の空間に存在定義させ、その場を基点とし、より強い効果をあげようとする術だ。
よって神体にとっての魔法は『空間印術』だといっていい。人間が使う魔術がマッチ棒の火なら、空間印術が原爆や水爆の威力並みとなる。
空間印術は高位の術になると4次元や5次元の空間印を作成する。
アンリが行使した恒星を並べ圧縮空間で展開する空間印大儀式などと難易度があがってゆき、いくつかの体系がある。
【空間印術―攻撃】は空間の広域に及ぶ攻撃を行使する術。
【空間印術―守護】は防御結界をその空間に発生させる術。
【空間印術―移動】は移動系に関する術。
そして、付与型の支援術である【空間印術―付与】だ。
「魔法の眼鏡。これは視野強化といったところかしら」
マーシャの手には赤い正二十四胞体が浮いている。
空間の穴は対数螺旋とフィボナッチ数列で計算すれば、対になった穴の繋がりを求めることができる。その思念演算プログラムに視野補正を加味した、付与型空間印【演算視野】を、マーシャは【無限なもの】で参考例を検索し、考えに考え、半日かがりで構築完成させた。
「思念を投射する術があったので、それを応用して、私の演算思念を転送。演算思念プログラムが注目した穴の繋がりを計算し、もう一つの繋がった穴を視野に表示してくれるという感じになるわ。実際にやってみましょう」
マーシャは手の平を返し、シュランに向けて空間印【演算視野】を投げつけた。
「おお! きたー!」
シュランの視野が付与の力を受け拡張強化される。
「赤くマーキングして知らせてくれるのだな」
シュランが穴を見ると、演算思念プログラムが作動した。
シュランが意識した穴が赤い丸で囲まれ、次に、別の場所の穴が同じように赤い丸で囲まれる。この二つはループ空間で繋がっているので、この赤くマーキングされた二つを埋めればいいのだ。
これが【演算視野】の効果である。
「もう一つの眼鏡。二つ以上の物を意識することを強化してほしいだったけど、感覚的なことは、私にはまだ難しいみたい。代案で【誘導補正】の印術を!」
マーシャはシュランに向けて青い正十六胞体【誘導補正】を投げつけた。
「よし。効果を試してみる」
シュランはなるべく離れた場所にある穴の二つを意識して見た。
【演算視野】の効果が働き、赤くマーキングされた穴二つ。青くマーキングされた穴二つが視野に展開された。二つの穴に注目したので、【演算視野】は一つ目を赤で、二つ目を青で表示したのだ。
シュランは手に空間の念渦を発生させ、四つに分裂させ、飛ばす。
「一つが、ややズレたな……」
シュランは飛ばした念渦の軌道を見極めた。
【誘導補正】が発動し、ズレと思えた念渦の軌道が穴に収まるよう微調整される。
すると空間の穴の四つが同時に埋められた。
シュランは四つの穴全てを確認しに飛び交い、結果を叫ぶ。
「成功だ! 空間の歪みもない。綺麗に埋まった」
【誘導補正】の効果は、弾を飛ばしたとき、注目したものに当たるよう誘導修正してくれるというもの。もちろん、ある程度、直撃するよう飛ばす必要がある。
「やった! 四つ同時なんてすごい。この術をみんなにかければ、効率があがるね」
ミャウが尻尾を喜びでふるわせた。
「問題が一つ。【演算視野】の印術をみんなにかけると、かなりのマイトを消費してしまうの。【誘導補正】の方を自分でしてほしいのだけど」
マーシャが渋い顔をした。
「やってみる……」
ミャウは険しい顔をしながら両手の中で、正十六胞体を生成させようと苦悩した。形ができあがりそうなところで、何度も破裂してしまう。
「むずい。空中分解しちゃう」
「俺もだめだ」
シュランも正十六胞体を実現できなかった。
「なんとか作成できた。ほかの皆の分はワシがかけよう」
ゲオルグが成功し、正十六胞体【誘導補正】を皆にかけることになった。
「遅れた分を取り戻すぞ!」
シュランが皆を促す。
七日目は穴に数列が適用するかどうかの調査や半日かがりでマーシャが【演算視野】の開発していたこともあり、残りの一同で作業だけはしていたが、まだ104個しか穴を埋めていなかった。
「同時四つ!」
シュランが手慣らしと念渦を飛ばし空間の穴四つを一気に修繕する。
「私。同時に二つ埋められるようになりましたでーす! 嬉しいでーす!」
ルオンが飛び跳ねて喜んだ。
「あたいは六つだよ!」
ミャウが颯爽と飛び、六個の穴を修繕した。
「キーっ!」
黒石版アルゲスがくるくると回転して穴を埋めていき、ルオンが声をはりあげた。
「わ! アルちゃんが八個もです!」
「アルめ! 味な真似を! これでどうだ」
シュランも負けじと八個の穴を埋めてみせる。
「だる~い。みんながんばってー」
マーシャはみなに空間印術を多重がけし、マイトを大量に消費したため疲労でテーブル上につっぷし、同じくゲオルグも椅子に座り大事をとって休憩をしていた。
「疲労感がひどい。これだけ術をかけるとマイト消費が激しいな」
そのためこの二人は作業に入らなかったが、七日目は382個の穴を修繕することができた。今まで300個超えはなかったので、【誘導補正】と【演算視野】の効果は覿面である。
八日目はゲオルグとマーシャも正午すぎより参加し、453個の空間の穴を修繕。
九日目は543個。
十日目は550個。
(視野の強化? 誘導補佐? 空間印術ってのは、どでかい爆発とか、火柱やらを発生させるものじゃねぇのか。空間印術をこんな風に使うなんて……ありえないぞ!)
ケンコスは目玉をぐりぐり動かし、穴が修繕されていく様子に度肝を抜かれていた。
シュランが叫ぶ。
「――十六個!」
衝撃が走り、空間の穴の十六個がどんと一気に埋まった。
たとえ高波がきても、対になった穴を効率よく埋めているため、破壊されてやり直しの作業はない。シュラン達は痛快ともいう速さで穴を埋めていくのであった。
(くそー! 穴の埋める数と速さが上がってきてやがる! このバラー様の試練は一族の誰も達成してないんだ。このまま、達成されたら……こいつらが俺達よりエライ立場なるかもしれん……ひえー!)
ケンコスはその可能性を考えて身震いした。
(んんや、大丈夫だ! もうすぐ、アレが始まる。こんな小細工で、乗り切れる訳がないんだ! 大丈夫だ! 早く、こい!)
ケンコスは焦りを覚えながら、それが早く訪れることを熱望した。
シュラン達は十一日目、584個の空間の穴を修繕する。
翌日、十二日目は601個の穴を修繕した。
一日に修繕する数が600に到達し、空間を埋めていく作業も慣れてきた。
「あーですよ。シュランさんは色々と知っているですな。自然の中に数値があるなんて、知らなかったですよ。尊敬します」
胸元で両拳を握ったルオンはきらきらした尊敬の眼差しを向けてきた。
「ふふん。もっと褒めていいぞ」
シュランは得意げに答える。
「でも、【こける】や【猿と犬を仲良くさせてしまう】とかの事象を掴んで遊んでいる変態さんなんですよねー。すごく残念なところがあります」
「君はあげて落としたな」
「うふふ、でーす!」
ルオンが人差し指をたて、悪戯っぽく笑った
作業の見通しが開けて、皆に軽い雑談をかわせるほどの余裕が出てきたのであった。
十三日目は空間の穴、648個を修繕。
十四日目は732個であった。
十五日目。
「みなさん。クルミちゃんの頭に、珈琲の苗木を埋める作業を手伝って頂きありがとうございました。穴の方は大丈夫ですか」
ルオンがみなの紅茶を入れお礼をした。
シュラン達は巨神化したウルリクルミのど頭に珈琲畑を開墾し、戻ってきて、休憩をとっているところであった。
「朝から津波が止まらないからなー。穴と穴の間に水が入った状態で塞いでしまったら、空間が水膨れして、別の異常を誘発する可能性もある。どっちみち作業ができない。いい気晴らしになったさ」
シュランが椅子に座り、下を眺めた。ドーナツが半分欠けたような状態で黒い穴が広がって、そこへ丁度、高波が覆い被さったところであった。
「そうだよ。ルオンちゃんが気にすることはない。空間術の効果時間も限られたものだし、かけなおすにも休息が必要さ」
ミャウが紅茶の香りを楽しみいう。
「今日で5300ぐらいか。半分を埋め終わったところかの」
ゲオルグが今まで修復した穴の数を試算した。
「一日で600から700。みんなも処理がうまくなっている。一週間程度で全ての穴を埋めることができそうだわ。期限までかなり時間を残して終わりそうね。あら、美味しい、これ」
マーシャが果実の切れ端を口にいれ感嘆した。
「はい。それなら安心です」
ルオンが嬉しそうに頷いた。
ただケンコスは押し黙っており、津波をじっと見ていた。
それから一同は雑談に興じた。日は午天の時間を示す位置まで上がり、かなり傾きはじめたころ、ミャウがある不可解さに声をあげた。
「あのさ。ちょっと長くない?」
いまだに津波が何度も襲来することが続いていた。
「なにか変な感じね。どうも、あっちこっちから津波が何回もきているみたいじゃない?」
マーシャはいくつもの津波が全方位から押し寄せていることに気づいた
今までの津波は一定の方向から押し寄せ、ある程度の時間がたつと沈静化していた。今までシュラン達はこの津波がこない時間帯に修復作業をしていた。
しかしこの日の津波は止まることなく、作業する時間もとれず、全方位から何時間に及び何十回も押し寄せていたのだ。
「はじまったな……」
今まで沈黙を守っていたケンコスがニヤリとした。
「はじまった?」
ゲオルグがケンコスの呟きを耳にし、同じ方向を何気なく見て驚いた。
「おい! なんか、プリンみたいになっておるぞ。水がプリンみたいな山を作っておる!」
空間の穴がある地域。中央の巨大水甕を真ん中として、水の小高い丘ができていた。これは、まさに巨大な水プリン。
津波は途切れることなく続き、水プリンはさらに大きくなっていく。
「……はじまったのさ。この周りには確か、水甕が九個あったはずだ。それが同時に点灯することがある。ここの原住民どもは、いがみ合うライバルの部族に少しでも水を渡したくないもんだからよー。自分の陣地に水がくるよう毎日、必死に叩きまくる。そしたら、水甕がいっぱいの水を処理できず、あーなっちまう訳よ」
ケンコスは楽しそうに水の丘を眺めた。
「こーなったら、お前達の腕じゃ、空間の穴を修復するのはむずいぜ。この現象はあの星が14回は登り降りするまで続くぞ。これじゃ、もう、全ての穴を修復するのは無理だな! ぐはははは!」
ケンコスは太陽を指さし、真底、嬉しそうな高笑いをあげた。
「ちょっと、ちょっと。なんでそれを教えてくれないのさ」
ミャウはケンコスに食ってかかった。
「はん。これは試練だ。教えちゃ意味がない。休憩なんぞとって、ちんたら、修復している、お前らが悪い! お前達に残された時間は、もう一日しかないぜ。愉快愉快。ぷふ。ぷふ。ぷふー!」
ケンコスは悪意たっぷりの含み笑いをもらした。
「なにー。その意地悪な顔は! これまでの試練も意地悪してない?」
「うるさい! じじっこに世話になっている癖に、文句をいうのか!」
「そりゃ、そうだけど……」
ミャウは勢いをなくし尻尾を萎らせた。世話になっている点をつかれると弱い。
「お前達はもう大失敗だ! 創造の才なしとじじっこに報告する。ぷひー。このまま、プルシャ様のおうんこ掃除係にしてやるぜ! いい気味だ! ぷぷっぷー」
「なにそれ! 酷い!」
ミャウがケンコスの理不尽な物言いに怒りを感じ、毛を逆立てた。
「お前達みたいなぽっと出のヤツには丁度いいだろう。うんこくさー!」
「なにさ! そこまで言うことないじゃない!」
再びミャウが怒り出したのを、ゲオルガが尻尾を引っ張って制す。
「やめぬか。我々も少しいい技術があるからと浮かれすぎた」
「だけどさー」
ミャウが不服そうにいいかえす。
「ぷぷーぅ。お似合いお似合い。うんこまみれになりやがれ!」
ケンコスはさらに意地悪な笑みを浮かべ、ミャウが鋭く睨みかえす。
「なんだ、文句あるか! 才能ないんだからしょーがないだろう! くひひひひ」
ミャウはいいかえせない。ケンコスはシュラン達が困り、怒り、不機嫌になるのが楽しくって仕方がない。もっともっと、からかい、あざ笑ってやろうと思ったときである。
「……やっぱり、根本的な問題を解決しないとダメか」
シュランがその一言をぽつりと投げかけた。
(くふー。水甕を壊しにいくなー。そうすりゃ、津波がこない。だがそれは浅はかな考えよ。バラー様の水甕を壊したら終わりだぜー。バラー様のものなんだからな。めっちゃめっちゃ、怒られるぞ。楽しみだ)
ケンコスはシュラン達がバラー様に激怒される姿を想像して喜んだ。
(この試験は、な。生まれながらの絶対的強者を選出するための、バラー様が用意した試練よ! 津波がこない短い間に、千の数を意識し、千の数の処理を。いや、万の数を意識し、万の数の一瞬で処理できる強者を求めておられるのだ! お前達みたいな神体あがりが達成できる訳がない! ざまーみろ!)
ケンコスはこの試練をそう理解していた。
だが、ケンコスはそれを目撃して、目を見開き、度肝を抜かれた。
「おい! お前! なんで、服を脱いでやがる!」
シュランは上半身の服を脱ぎながら、吹き出し笑いをかえした。
「ぷふー。解らないのか。これは愉快だぜ! 愉快愉快。ぷぷーぷー!」
シュランの褐色の鍛え抜かれた上半身が露わになって、ルオンは頬をぽっと桜色に染めた。
しかし次の瞬間、ルオンもケンコス同様、目を見開き、声を張り上げることになった。
「わわわわ! シュランさんが下を! 下を脱いでいます!」
ルオンが真っ赤になって、顔を両手で覆い隠し騒いだ。
シュランは脱いだ下半身の服をケンコスに投げ捨てた。
「なにしやがる!」
ケンコスは怒鳴り、ルオンがはしゃいだ。
「きゃあ! いかんです! シュランさんの下に、ぶらぶらしているものがあるです! アレはなんですか! にひー! アレ、なんですか! にひー!」
「見ちゃだめだよ! 目が腐っちまう! 見ちゃだめ! にひー! 」
ミャウはシュランのアレから目を離せずの直視で、純真なルオンだけには見せていけないと、ルオンの顔の方に両手をやった。
もちろん、ルオンは指の隙間からきっちりとアレを凝視しながら喜び騒いだ。
「いかんです! きっと、これは見ちゃいかんことです。いかんことですよ! これは! 何故か、むひーな気分に!」
「ダメだったら、ルオンちゃん! ダメ! みちゃいけないよ! むひー!」
ミャウもシュランのアレに大興奮のむひーである。
ふと、マーシャは隣にいたアールマティを見た。
「耐性なかったみたい」
アールマティは目を点にし、全身硬直していた。
「立派なものである」
ゲオルグが大層、生真面目に頷いた。
「なんで、全裸になったのさ! 服をきて!」
動揺しまくりのミャウはシュランのお尻に声をかける。
シュランはくるりと回って、両手を開き、全裸を見せびらかすと答えた。
「武器を持ってないことを証明するためには、全裸がいいだろう。そーいうことさ。ちょっくら行って――」
シュランが飛び立とうとしとき、拳ほどの大きさになった炎塊スルトが肩に飛び乗った。
「お前もくるか。一緒に行こう!」
シュランは手乗り炎塊スルトの姿に喜んだ。
「こらー! 訳が分からないよ!」
ミャウの制止をふりきり、シュランは飛び立った。
「水がとまったら、作業を再開してくれよ」
そう言うと、シュランは二部族が争っている地点にめがけ、凄まじい――あの時流速というとんでもない速さで一直線に飛んでいった。
水甕を懸命に叩いていた仮面の二部族は上空から襲来してきたもの、突然身に感じた異変、神体が持つ巨大な霊威の圧力を感じて動きを止めた。二部族は不可解な気持ちを抱きながら空を見上げて、茶色なものがくると全員が知った。
「おっと。いかん。こんな勢いで着地したら、衝撃がすごいな」
シュランはぼやき、地面すれすれで、両手両脚を伸ばしてピタッと停止した。
二部族はそれを目撃した。
壮絶ともいえる速さの何かが静止した瞬間を――
さらに、それがぶら~~~~んと動いていたのをきっちりと目撃してしまった。
なにを目撃したのか。
シュランは全裸である。
時流速の勢いを無理矢理とめたのだ。その勢いがある一点に集中してしまったのである。慣性の法則というもの。
これはまさに悲劇であり喜劇といって瞬間であった。
全裸であるが故に、服に束縛されぬ故に、アレは自由気まま。
シュランのアレが超越な力が集まった箇所となってしまったのだ。
ぶら~~~~ん
と動いて、
シュランの圧倒的な力と勢い集めてしまったイチモツが本人の意識とは関係なく大炸裂した。
刹那、天上まで走る大衝撃と激音が走った。数百人に及ぶ二部族の全員が衝撃で一瞬、空に投げ出される。
遅れて地面が蜘蛛の巣目に避けていき、大量の土砂と岩が飛び上がった。轟音と衝撃。もはや大災害といってもよい着地となってしまった。
ああ……なんということでしょうか。
アレの、優しいひとなでだったのに……。
大災害のあとには、深い海溝。街一つ、いや市ひとつの人口と広さを壊滅させんほどの超絶クレーターができあがっていった。
さて、ここである事実をお伝えしなければならない。
ご存じのとおり、人類で初めて『卵』を立て見せ逸話をつくったのは、新大陸までの航海路を発見したコロンブス。いやいや実際の諸説を正しく辿れば、遠近法を見つけた建築家フィリッポの逸話であるが、ともあれ、人類で初めて『卵』に恋をしたのは目尻のほくろがなんとも艶やかな男、シュラン・エアス・アクウィラである。
なおかつ。
シュラン・エアス・アクウィラは人類で初めて、そのイチモツ一本だけで、市ひとつをクレーターと沈めん男であった。




