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神卵 ― 神様転生のはじまり ―    作者: 万代 やお
第3律 星々をなおすもの
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36 空間シリーズと胸シリーズ

 座天翔船(ソロネ)は赤色をした円錐形の船である。ピラミッドを横に倒し、その先端部分が船首となり飛ぶ船を想像してもらえるといい。

 座天翔船(ソロネ)の内部には数十の亜空間が点在し、いくつかの世界が存在する。その世界にいる住人達や育つ自然の力が、座天翔船(ソロネ)を飛行させる原動力だ。一種の箱船に近いものであろう。


 座天翔船(ソロネ)の外壁にはマイトエネルギーで焼き付けた複雑な印模様が施されている。

 印模様には【堅牢】、【車輪】、【宝座】など事象の力が込められ、防御性能、速度能力、別の世界に跳躍する性能が付与されているのだ。


 現在、その座天翔船(ソロネ)の外壁はアンリ達の戦闘によって醜く歪み、黒焦げ、穴だらけとなっていた。


 外壁を修復すべく、巨大三色石板のヘカトンケイル巨人達が頭上に念動の渦をつくり、それを千切っては飛ばしぶつけ、黒い次元壁を創っている。外壁は、まだ半分も修理されていない。


「俺達は、この次元壁の上に、空間壁ってヤツを創っていくのか」


 シュランが呟くと、ユミルが頷く。


「そうじゃ。クソ餓鬼よ。【空間創造】の力は掴んだようじゃが、その概念や扱いは大丈夫か」

「まあ、なんとなく。空間の元になるものはだせるようになった」


 シュランはそういうと、左手に念動の渦を発生させた。【空間創造L6】の事象だ。


「うむ。それなら大丈夫そうじゃの」

「大丈夫じゃなーい! 私は全く解らない。そもそも空間ってなに? 私達がいる場所でしょ? 通れなかったり、アンリの術を防ぐ大壁になったり。そうかと思えば、そこの船の材料になっているじゃない。理解がさっぱりさっぱりよ! 空間ってなんなのよ!」


 マーシャがややヒステリー気味に叫んだ。科学者として、空間を理解ができず、屈辱を覚えているようでもあった。


「マーシャは駄目だな。これは角センスだ。大角でありながら、シャープな感性だぜ。なんでも理論的に考えるから悪いんだ。男のアソコすら、そう考えているだろう」


 マーシャはシュランの発言に意表をつかれた顔をした。


「え? 違うの?」


 マーシャは隣にいたゲオルグの股間を見た。ゲオルグが乙女ちっくに、ぽっと顔を赤らめた。


(シュランと付き合いあるだけあって、マーシャもなんかズレているねぇ~。あ! あたいもか……少し鬱)


 ミャウが死んだ魚の目をしてシュランとマーシャを眺めた。


「人の身であったときには、空間など意識せぬ。しかし神体となったからには、重要な概念だ。少し説明しておくかの」


 ユミルは顎髭をさすった。


「まず、空間とはない。しかしある」

「空間はない。しかしある? ないのに、ある。解らない。禿が被ったカツラ? 髪の毛あるのに、本当はない。そうなのね。バイオ育毛技術があるのに、カツラだと解釈すればいいの?」


 マーシャがもきゅもきゅと苦悩しだした。


「空間とは基本、存在を固定するもの。そこに存在を定義するものじゃ」


 ユミルの言葉は続き、マーシャが熟考しすぎで湯気がでて卒倒しそうである。


「あるのにない。存在を固定……定義……?」

「そう深く考えるな。これは概念というものじゃと、わしは思う」


 ゲオルグはマーシャに優しくかみ砕いて説明する。


「昔、わしの星では油絵という技法があってな。その技法で描かれた絵は芸術品として、重宝され、何億の価値がついた。その絵の下地となるものは帆布(キヤンパス)というものじゃったが、それには価値がない。その上に描かれた作品に価値を見いだす。しかしながら、キャンパスがなければその価値はなりたたない。わしらは、そのキャンパスを創る側でありながら、その絵の存在を創るものでもある。その存在を、その価値を、その概念を創るものだと、わしは思う。それこそが神というものではないか?」

「空間が……キャンパス? 絵が私達のような存在になるの? 存在、価値、概念を創るものが神なの?」


 マーシャがうるうるな瞳で頷く。思考が加熱しすぎで、感情が不安定だ。


「うんうん。そうだよ」


 ミャウは豊満な胸の前で腕組みし、完全に解った顔で頷く。


(あの顔するときは解ってない顔だ。俺は知っているぞ。角なしってヤツだ!)


 シュランがミャウを見て、心の中でごちる。


「具体的な数字で例えてみようか。マーシャはそっちの方が理解しやすいだろう。例えば――」


 そこでシュランは何故か、黒石板アルゲスを見ながら解説を始めた。


「空間はゼロだ。このアルの存在値を1としよう」


 みなから注目が集まって、黒石板アルゲスは嬉しさのあまり、キューキューと鳴いて跳びはね回りだした。


「しかし、空間の存在値が1になると、存在値1のアルは……」


 シュランは黒石板アルゲスを人差し指で優しく押さえた。アルゲスはキューと頑張るが先に進めない。


「空間を進めなくなってしまう。しかし存在値が1なので、少し頑張れば進めてしまう」


 キューと、シュランの一本指を突破したアルゲスが自慢げに胸を張った。


「でも――」


 シュランはアールマティの胸元を見た。全員がそちらに振り向く。

 アールマティは何故、私を見たのだろうと不可解な表情をして、シュラン達を眺め返した。


「空間の存在値が2~4となると 存在を定義するものでありながら、存在を否定するものになる」


 シュランはアルゲスを片手で押さえた。ぷぎーと、アルゲスは真っ赤になって頑張るが進めない。

 続けてシュランはマーシャの胸元を見ながらいった。


「さらに空間の存在値が5~8になると、完全に力だけでは進めなくなる。空間のほうの存在が大きくなっているからな。なにか大きな力をあてないと壊せない。この辺はもう、みんな知っているだろう」


 一同の視線がマーシャの胸元に向いて、そこに何かあるのかなと、不思議そうに思った。


「俺が思うに、世界に広がる空間には0から8の存在の力を宿した場所が、ランダムに、意図的に、あるいは自然に存在しているじゃないかと思う」

「その通りじゃ。空間は存在の力を宿せる神の基盤なのじゃ」


 ユミルが相槌をうつ。


「んで、空間のグレードがあがると……」


 シュランはルオンの胸元を凝視して宣言した。


「次元空間になる」


 ぼーんと、ルオンの大きな胸とシュランの発言が重なった。


「あのー。何故、ここだけを見詰めるのですか。もの凄く恥ずかしい気分です。いかんのですよ」


ルオンが頬をそめ、胸元を両手で抱き隠し、こそばゆそうにもじもじした。


「ルオ! グレードがあがるのはいいことだぜ! 角晴れだ!」


 シュランは親指を立て爽やかな笑顔でいう。


「で。次元空間は空間のどの力を持つものなのだろうか?」

「一〇〇倍ぐらいじゃ」


シュランの問いに、ユミルが答えた。


「じゃあ。この次元空間には0~800の存在値があると仮定しよう。次元壁と使えば相当な存在力で、かなり固い壁となる。しかし、次元空間の真の使い方はそうじゃない。付加価値だ」

「付加価値?」


 マーシャが頷く。


「そうだ。宿る存在の力を、圧縮した空間、短縮した回廊を産み出すのに使えるんだ。存在の力を分けて、別の効果を付属させることができるんだ」


 切り取られた一部の空間や亜空間。座天翔船(ソロネ)が跳躍した次元流という短縮回廊。一同は既にそれらを目撃していたので、合点がいった。これらを創れるのが次元空間だ。


「それじゃ。あたいの【空間跳躍(ディメンシヨン・リープ)】は一瞬、短縮した空間を創って移動しているものなんだ」


 ミャウは耳がピンと伸びた。なにかを悟ったようだ。この感覚を得たことにより、ミャウの所持する【空間跳躍(ディメンシヨン・リープ)】のランク1から2にあがったのは云うまでもない。

 ミャウはにやりとすると、消えた。

 【空間跳躍(ディメンシヨン・リープL2】の発動。

 全員がそれを見上げる。


「少し使いこなせるようになった! にゃはははははは!」 


 座天翔船(ソロネ)の頂点に、ミャウが胸を張り、高笑いをして出現した。

 丁度、二つ目の太陽が昇ってきたところであり、シュランはここぞとばかりに叫んだ。


「みんな、見ろ! あれが界空間というものだ!」


 ぼよよ~んと、ミャウの巨乳が天に向く。

 朝日の光が神々しく、その姿を照らすのであった。

 乳の夜明けである。


 界空間は次元空間の千倍という圧倒的な存在力を持ち、自己成長するという空間だ。

無限なもの(エン・ソフ)》で検索しても、それ以上は解らない。極秘情報として守られているのだ。


 【界空間創造】の事象を掴むことの難易度は高く、それこそ神の領域というものであり、今まで空間を意識してなかった人の精神で、その感覚を得るのは難しいのは言うまでもない。


 あるいはユミル巨人一族だけがもつ一子相伝の事象ではないか。


 シュランはそう推測をしていた。


「むむむ……」


 アールマティは表情を険しくして、あることを考えていた。


 存在値0は空間。

 存在値1はアルゲス。

 存在値2~4はアールマティこと、私。

 存在値が5~8はマーシャという女。

 存在値100以上があのルオン。シュキナー。

 存在値10000以上が今、瞬間移動したミャウ。


(まさか! これは、胸の存在感を表しているのか!)


 その考えに到達し、アールマティは脳内に稲妻が奔ったかのように衝撃を受けた。

 わなわなと怒りを溜め、鋭く、その悪党の名前を呼ぶ。


「シュラン!」

「なにかな。アールちゃん」

「わ、私の、その……む……」


 騎士一直線で生きてきたアールマティは『胸』という言葉を発することができない。根が真面目なのだ。


「鎧だ。私は固い鎧を着用しているので、その……その、小さく見えるだけだ!」


 アールマティは真っ赤になりながら、その言葉を絞りだした。

 シュランはふーんと気にしてない表情をした。こちらは真剣なのに、女として矜恃を傷つけられた気分になり、激しく睨んだ。


「……アールちゃんは母親似なんだろう?」


 唐突な質問であった。


「わ、私は母上によく似ていると言われるが……」

「なら、大丈夫だぜ! 心を強く持て!」


 こやつは何をいっているのだろうと、アールマティはシュランを見返した。


「アフラ様かな。あの方のおっぱいは封印壁だ! 封印空間だ! 巨乳、爆乳を越えた果てなる乳だった!」


 ど―――――――か――――――ん!


 全裸でふよふよ浮かぶアフラ様の果てなる乳の全景が広がる


「だから心配するな。アールちゃんもその域にいけるさ。今は貧乳だけどな」


 アールマティは俯くと無言となった。肩がぷるぷると震えている。


(貧乳……貧乳……だと!)


 アールマティは円盤内の十字部分を握ると、浄化神具【浄化光神槍(アーマスランス)】を起動させた。


「――殺す!」

「な、なんで! アールちゃんがご乱心した! みんな助けて――」


 と逃げようとしたシュランは殺意の波動を身に受けることになった。


 ぱちぱちと放電するミャウ。

 背筋が凍るような冷気を放出するマーシャ。

 食中植物の森をアホみたいに背後に創造して、胸を隠しながら睨むルオン。


「シュラン。女ってほんと怖いものだぞ!」


 ゲオルグが言うと、ユミルが過去の経験からおおいに頷く。


「うむ。そうじゃ。怖いものじゃ」


 シュランは……あははははと笑うしかなかった。


 女性陣のほんのちょっとしたおしおきが、シュランにしでかされたのは言うまでもない。


 その後。


 僕は勝ったんだ!


 と言わんばかりに、お仕置きを受け気絶したシュランの腹の上で、アルゲスが嬉しそうに飛び跳ねている姿が見かけられた。


 教訓。無乳は巨乳に勝つことがある。


 いや、どちらもいいものだ。

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