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ふわぁー…ヽ(´Д`;)ノ

 既に遅刻もいいところ。今日は閉店まで働かないと倍のチップはくれないだろうなぁ…。グレータウンでは、仕事場で働いた時間に値するチップをもらい、すべてバンクに行って、換金する仕組みになっている。篠也は働いている場所が違うから、今日はテノーと一緒に来た。

 

 カランカラン


聞きなれたベルの音でヴィェーチナ内にいた店員は入口に目を向ける。

「いらっしゃいまー…ああ、ツバサ!おはよ!」

元気のいい声で返事をくれたのはヴィェーチナでくるくると笑い、喋り、働く女店員サラ。ツインの似合う可愛らしいルックスと、健康的に焼けた小麦色の肌。客にはかなりの人気があるのだが、テノーとサラは非常に仲が悪い。“そりが合わない”ってやつだ。

「……どうしたの?元気ないわね……。あ、裏に新人の娘、いるから顔合わせしとけってさ!早速今日からシフト入るみたいよ、すごいわねー」

「ああ。」

「おまえさ…」

サラは僕に笑顔を送ると、テノーが話しかけたにも関わらずテノーには目も向けず接客に戻った。

「……っ可愛くねーな…」

テノーは不機嫌そうに言い放った。

「つっ…」

歪んだ顔を見ると、翼は決まって頭が締め付けられるような痛みに駆られた。この痛みは、翼にとってただの痛みであり、人の歪んだ気持ちに敏感というわけではなかったが、原因は翼自身未だに分からず、脳内を苦痛の表情が駆け巡る。

……痛ぁ……。


   ***


働くために着替えるのはおしゃれ好きのテノーくらいなもので、この時間の更衣室に人はおらず、密かにテノーのお気に入りの場所と化していたが、今日は同僚のレイがいた。店が対して広くないから男女別の更衣室じゃないところがテノー的この店のポイントであったりする。(きちんと個室はあるぞ!)

「…あら、テノーじゃない。聞いたわよ~。あんた、ツバサにまた迷惑かけてんだってねぇ?」

「……………あ~くそ。誰だよ、言った奴ーーー。」

ツバサは、あまり人と話さないから、ツバサが話したとは思えない。

言い返したいが、ツバサに悪いことをしたという罪悪感から、なかば文句のように言い放って、伸びをするテノーにフッと笑うと、

「シノヤよ。」

その瞬間テノーはガバッと起き上がり、髪を立たせ、目をつり上げて、風を起こした。テノーは女に優しくすることは絶対のポリシーのように女に優しいから、レイは驚いた。この子…ほんとにシノヤの名前出しただけで怒るのねー…。え…。か…ぜ…!?

「レイ、お前なんでシノヤのこと!?」

「ちょっと…。やめ…て…!あんた、店まで壊すつもり!?」

テノーは口を尖らせたまま、風を沈める。

「……もう。なんであんたはそんなにシノヤが嫌いなのよ。」

俺だってなんでこんなにシノヤが嫌いなのか分からない。

「………わかんねーけど。あのすまし顔とか…とにかくいろいろ…気に食わねーんだよっ。はぁ…。で、なんであの無愛想ヤローとお前に交流があるんだよ?」

シノヤは無愛想で、ツバサに対してしか、笑わない。

同じように、ツバサからはシノヤのような心すら感じられないが、ツバサもシノヤに対して珠にしか笑わない。

 2人に共通するのは、お互い記憶がないのに、心の奥深くでお互い繋がっているだろう、と感じさせるあの…不思議な空気、を持っているということ。友情…。そう友情より重い…家族のような暖かいもの。レイは、ツバサにもシノヤにも共通するなにかに心惹かれ、何年も何年も2人の様子を観察してきた。

………それを、この子は“なんで交流があるのか?”って…。アタシよくシノヤと話してたのに。そんなに彼のこと避けてるのかしら?レイはつい笑ってしまった。

レイはスッと、テノーの首に手をかけると、顎の下に指をかけた。

「な…に?レイ?」

今度はテノーが両手でレイの顔を引き寄せる。

「……ばーか。キスじゃないわ。シノヤが言ってたの。顎に傷つけちまった。おまえ、治しといてくんねぇかな…って。……うわ、痛そ。」

テノーの手を下ろして、クイッとテノーの顎を上げる。

 

 「……あいつ、自分でやってきたくせに…。」

 「…目閉じて。」

テノーは素直に目を閉じて、シノヤを頭に浮かべる。

まぁ、今回のは、俺が悪かったかもしれない…けどな。シノヤを頭に浮かべると、本当に腹が立つ。憂いを帯びた心を不安げに抱えてる。ひとことでいえば、そんなカンジ。その重さを感じ取れば感じ取った分だけ、普通に接すれば接するだけ、腹が立つ。……俺よく分かんねぇあ。ふっと、目を開けると、目をつむったレイがいる。

 レイは傷に手を当てて、治癒を早める魔法を使う。レイも魔道士の一人だ。

「…………。」

レイが目を開ける。

「終わったわ。………ねぇ、あんた気づいてるんじゃない?」

「…なにを?」

「シノヤが抱えてる物の重さ。それ以上にツバサ…」

「レイ、…俺キスしたい。」

テノーはそう言うと、レイに最後まで言わせず、椅子の上に押し倒した。

アタシは魔法を使って治癒するとき、対象の心に触れることができる。この能力はまだ誰も知らない。

レイは、無理に続きを言わず、テノーに身を預けた。

 ねぇ…気づいてるよね。ツバサの心…。どこにあるか知ってるのにツバサは心を求めようとしない。


どうしてだろうね…。


 ねえ、テノー…。


来たれ、修羅場(`・ω・´)!


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