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麺
仕事に疲れた帰り道。
うとうとしていたせいか、気づけば知らない道を、足を止めずに進んでいた。
やがて屋台の前立ち止まっていた。
薄明かりのせいでよくは見えないが、四席あるうち二席が埋まっている。
一人は小柄な影。もう一人は長い髪の、背の高い影。
布が垂らされ顔は見えない。
だが、そこから漏れる匂いが空腹を掴んだ。
店主に食べ物を頼む。
出てきたのは見たことのない料理。
「メンだ」と店主が言った気がする。
覚えているのは、塩気と独特の風味を持つ澄んだスープ。
小麦の香りをまとった麺。
味付けされた肉と、シャッキとした野菜。
腹が満ちる。
眠気が差す。
目を閉じ――
気づけば家の前に立っていた。
物の怪に化かされたのかと思った。
だが腹は確かに満たされ、財布は少し軽い。
化かされたのだとしても、
もう一度あれを食べたいと思った。
だが、二度とその屋台には辿り着けなかった。
あぁ――食べたい。




