第94話 下の兄貴が、強奪に来た!
「グラン! グランはどこだー!!」
あれから数日経った朝、
イレタちゃんとカロリちゃんに挟まれたベッドで目を擦る俺、
あー懐かしい声、って程でもないがこれは近い兄、確か十歳の……
「ここかー!」
バタンッ!
「ロベル兄上、ノックくらいして下さい」
「お前、もう大人に」「七歳ですよ」「だって左右に」
3Pにはまだ早い、5Pにも。
「確かにふたりとも僕の」「で、レアスキル持ちはどっちだ?!」
「ええっと」「槍使いの方だ!」「カロリちゃんはこっちです、赤毛の」
「だれ、ですか」「よしジュディ、連れ出すぞ!」「はいロベル様」「ふぁっ?!」
下の兄上お付きの巨女メイドことジュディさん、
例のアレだ、前世のアニメでいうと近未来(なのに有線)のゴリラ少佐みたいな、
ってそんなこと思い出している場合じゃない、カロリちゃんが米俵みたいに担がれた?!
(カロリちゃん、なんか凄い声を出してたな)
じゃない、さっさと運ばれて出て行っちゃう!
脳と脊髄以外が機械のサイボーグみたいなメイドの足にしがみつく俺!!
「どこへ連れていく気ですか!」「ロベル様のご命令です」
「グラン、聞いたぞ凄いスキルの槍使いが貰われに来たって、ボクが嫁にする!」
「駄目ですよ僕の側室なんですから!」「三男に側室はいらないだろう」「冒険者になるんです!」
あっ、イレタちゃんもベッドから来てくれた!
「あの、これカロリちゃんの眼鏡」「イレタちゃん?!」
「おお気が利くな、ジュディ、貰っておけ」「はいロベル様」
「だーかーらー、僕の冒険者パーティー(メンバー)でもあるんですから」「グランにはもったいない、じゃあな!」
おいおいおいおいおい!!
俺の地味ハーレムが早速これは、
ドナドナどころか強奪じゃないか!!!
(あっ、廊下に我がメイド、ミラさんが!)
「ミラさん、止めて!」
「……ミラが私に勝てるとでも?」
「はいすみませんジュディさん、どうぞお通り下さい」「裏切り者ー!!」
まあ仕方が無い空気はよくわかる、
ていうか俺ってまだジュディさんの足にしがみついたままなんだが。
「兄上、説明を、まずは説明を!」
「仕方が無いな弟よ、王都行きがピンチになった」「えっ」
「このままじゃそのまま、ボクは領都止まりだ、だから」「あー、大体わかりました」
改めて説明しよう!
一番上のジェラル兄さんはこのグラン=フィッツジェラルド家を継ぐ、
次期当主だからね、で、その兄上の身に何もなければ後継順位が二番手の次男、ロベル兄さんは王都の別邸でウチ関係の仕事をする、
(という予定のはずだが……)
ただ、ウチの子爵家が治めるのはあくまで前世でいうところの『アルトリアス市』だ、市町村のね、
その上にはバルバトス伯爵の治める『バルバトス県』がある、県はあくまで比喩ね、ここの領都でロベル兄さんは勉強中、
おそらくそこの学校の成績が悪かったからか、大領主たるバルバトス伯爵側の判断か、十五歳になってもウチ単独の出張所を王都に持たせて貰えなくなる感じか。
「わかったなら貰っておく、じゃあな!」
「駄目です駄目です、自分が駄目駄目の駄目だからって、
スキル付き奥さんを使って王都に潜り込むなんて、そんな」
カロリちゃん、
両手両足をバタバタさせている。
「グランおにーさまー!!」
「今日から『ロベルお兄様』だ、いいな?!」
「やだーグランおにいちゃんがパートナーなのー」「ジュディ、黙らせろ」「はっ」「ちょ、手荒な真似は」
と、ここで前に立ちふさがったのは……!!
「なんですか、朝から騒々しい」「ゲッ! レイム」「メイド長様……」
あっ、黙らされたのはジュディさんの方だ。
「まずはその子を降ろしなさい、可哀相に」「はい、メイド長様」
さすがはメイド長、
冒険者として潜り抜けてきた修羅場が違う、
ジュディさんもすっかり飼いならされたメスゴリラだ。
(うなじに有線差し込むプラグとかは無いよ!)
そして兄上がメイド長の前へ。
「レイム、グランのものはボクのものだ」
「ではロベル様のものは」「ボクのものは、ボクのものだ!」
ジャイアンきたあああ!!!
いやロベル兄さんに前世とか無いよな?!
「では、御当主様の前で決めていただきましょう」
「だそうだグラン、悪いがこのスキル持ちはボク専用なんだ!」
「いや駄目ですよ、そもそもカロリちゃんの意思は」「グランおにいさま……いっしょに、にげよ」「それは、まだ早い」
そして俺の背後からイレタちゃんが。
「あの、これ」「何かな?」
「カロリちゃんの予備の眼鏡、これも」「だーかーらー!」
連れて行かれる前提の行動はやめてー!!
(でもまあ、父上が裁いてくれるなら、なんとかなるだろう)
そう、思っていた時期が僕にもありました、
それが、あんな展開になるなんて……ううう。




